第五話『猛れクソナード』
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モニタールームへ戻り講評を聞く。
それなりに良い評価ではあったが、途中で俺が個性を解いた所が皆気になった様だった。
「…俺の刀は、誰かを傷付ける為のものではなく、誰かを護る為の刀故…個性を知らない生徒に刃を向ける事が出来なかった。」
「お、男らしすぎる…!!!」
何やら視界の向こうで切島殿が感動している。
他の生徒達も納得している様子だった。
「西椋少年の個性は確かに対人戦闘に難しい部分はあるかもしれないが、ちゃんと分別出来るようだしこのまま訓練を怠らずにね!」
オールマイト先生にそう言われて俺は一礼をして、他の生徒の講評へと移った。
「大和は甘いとこあるよな。」
「……そんな事は」
「ある。…もし仲間だった奴が敵になったら、絶対斬るか迷うだろお前。」
講評から戻ってきてから焦凍が放った言葉に、俺は痛い所を突かれた顔をする。
確かに、そういう状況になった時俺は迷ってしまう気がする。
不意に頭に軽い重みを感じた。
「だから、そんな奴が出てきたら…俺が先に凍らせとく。」
その後もぽんぽんと好きな様にしている焦凍に、いい加減止めろとその手を掴み恨めしそうに焦凍を見ると何やらしてやったり顔をされた。
解せぬ。
その後も特に問題なく訓練は進んでいき、授業は終了した。
「お疲れさん!!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!
しかし真摯に取り組んだ!!
初めての訓練にしちゃ、皆上出来だったぜ!」
梅雨殿が相澤先生の後にこんな真っ当な授業を…と呟き、オールマイト先生はそれに対してそれもまた教師の自由と説き解散となった。
…凄い速さで保健室へと向かって行った先生の背中を見ながら、俺達も更衣室へ戻る事になった。
放課後、焦凍は早く帰る用事があるらしく俺と別に帰る事になった。
俺が何故残る事になったのかと言えば、端的に言うと切島殿に捕まったからだ。
「西椋!!これから訓練の反省会すんだ!
西椋は強制参加だかんな!!」
「何故だ……。」
そして生徒の半数くらいが残り俺を取り囲む形になる。
…その協力体制は何なんだ。
各々が自己紹介やら今回の訓練で活かせなかった所やら良かった所を上げていく。
今はいない生徒の名も、この反省会で耳にする事が出来た。
「いやほんと、西椋の個性ヤバいよな。いや、個性がヤバいっていうか西椋自体のポテンシャルがマジあげヤバい。」
若者言葉が八割な上鳴殿の評価を、何と捉えていいか分からず首を傾げるばかり。
「西椋っていつもどんな感じで鍛えてんだ?」
切島殿に聞かれて、俺はつらつらと普段の訓練内容を伝える。
「まず朝は準備体操、走り込み二時間から始まり、腕立て伏せと上体起こしとスクワット三百回を三セット、素振りと打ち込みを五千回…その後は三十分間の瞑想と写経や写仏を少々…。」
「え」
「帰ってからは…」
「待て待て待て!!!」
会話を中断され何だ?と思いつつ生徒達を見ると次元が違い過ぎるだの、鍛錬馬鹿だの言われ少し眉間に皺が寄った。
「休みの日はこれが三倍程になる。」
「3倍!!??」
更に驚く生徒達を尻目に教室の時計を見遣ると、そろそろ遅くなってしまいそうだった。
「…電車もあるので、俺はこれで失礼する。」
「お、おー!残ってくれてあんがとな!!」
「また明日なー!」
その言葉に軽く手を挙げ応えると、俺は荷物を持ち教室を出た。
丁度、それに少し遅れて爆豪殿が反対の扉から出てくる。
俯きながらも早々に歩く彼を、俺は少し追った。
五歩くらい離れた状態でお互いが同じ昇降口へ向かう。
焦凍の時もそうだったが、こう落ち込んでいる者に俺は何て話し掛ければいいか迷う。
しかし、敢えて余り刺激しない方が良い事もある。
爆豪殿は決して頭が悪い人物では無い。
今回の訓練の事も、他人以上に色々と気付いているだろう。
昇降口に着くと、いきなり爆豪殿は此方を振り向いた。
「……俺はァ、」
「…。」
「クソ…!!いけ好かねぇテメェら全員!…ブッ殺して!頂点目指すって決めてんだ…!!」
「…あぁ。」
俺の冷静な態度に苛立ったのか、爆豪殿は俺の肩を片手で掴み、勢いのまま靴入れのロッカーに張り付けバンッと俺の顔の両側にそれぞれの手を付いた。
腕と爆豪殿の体に阻まれ、俺は身動きが取れず、しかし別に恐怖等は無く距離の近くなった爆豪殿の顔を見る。
少し、その赤い瞳が潤んでいる様に見えた。
「……西椋、てめェもぜってえ捩じ伏せるからな…!!首洗って待ってろ!!!」
「…爆豪殿の成長、俺は楽しみにしている。」
「そういう事じゃねェ!!!」
唸る爆豪殿が腕を振り上げた瞬間に、俺はすり抜け上履きと靴を履き替える。
そして俺は不機嫌そうに掌を爆発させる爆豪殿にまた明日なと挨拶をして、雄英高校を後にした。