第四話『今、僕に出来ることを』
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「まだ……動けます。」
歯を食いしばり涙目で言う緑谷殿に、ポケットに忍ばせていた物を取り出す。
しかし、俺が動く前に爆豪殿が動いた。
「どーいうことだ こら ワケを言えデクてめぇ!!」
「うわああ!!!」
まるで掴みかかろうとしている爆豪殿の迫力を感じて、思わず"縮地"で緑谷殿の間に入り、刀で防ごうとした。
「んぐぇ!! ぐっ…んだ、この布、固っ…!!」
だが、爆豪殿は個性を消された上で先生が巻いていた布に捕まった。
「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ「捕縛武器」だ。
ったく、何度も"個性"使わすなよ…。
俺はドライアイなんだ。」
爆豪殿を睨み付けながら言う先生の言葉に生徒の心が一つになる。
"個性"凄いのにもったいない!!
……まぁ、体質というか、仕方の無い部分は有るだろう。
先生も先程目薬を差していたしな。
さて、と緑谷殿に向き直る。
いきなり現れた俺に目を白黒させていたが、今は落ち着いたようだ。
その緑谷殿の怪我している手を取る。
「え、え、西椋君…!?」
「簡単に処置させて貰おう。こういった応急手当は慣れているのでな。」
先程ポケットから出した医療用テープを、緑谷殿の指に巻いていく。
剣道という手や足の指を怪我しやすい競技において、こういった処置は初歩に教わる。
テーピング等は後輩や門下生に何度もしてきた。
それにしても、この指は酷いな。
まるで内部で爆発したみたいに筋繊維がぼろぼろになっている。
もしかしたら骨の方も異常があるかもしれないな…。
手早くテーピングを済ませると少しは痛みが引いたようで、緑谷殿の緊張が解れたように見えた。
「あ、ありがとう…西椋君…。」
「いや、気にしないでくれ。俺はこういった競う場で誰か一人がハンデを背負っている、というのが気になるだけだ。…名前を知っている様なので手短に挨拶だけしよう。」
緑谷殿の肩にぽんと手を置く。
「先程の機転、素晴らしいと思った。
誰かに個性を貰ったかのような鎮具破具さが気になるが、精進すれば使いこなせる様になるだろう。
これから宜しく、緑谷殿。」
その言葉に何故かビクッと大袈裟に肩を揺らし動揺した緑谷殿だったが、一度テーピングされた指を見てそして俺を真正面から見つめた。
「よ、宜しくね…西椋君…!」
緑谷殿と別れて次の種目へ移動し、それ以降は特に問題も無く全過程を終わらせた。
長座体前屈の時に焦凍が「…意外と大和軟らかいな。これなら…」と言っていたのは気になるが、思いの外自分が柔軟な事に気付けた。
再びグラウンドに集合し、先生が機械を取り出す。
「んじゃ、パパっと結果発表。」
一瞬空中に映し出されるが、直ぐに消えた。
「ちなみに、除籍はウソな。」
!?
サラッと言われたその発言に生徒の目が丸くなる。
「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽。」
「はーーーーー!!!!??」
「な、何と…!?」
鼻で嗤う相澤先生と、俺を含め騙された生徒達の吠える声が上がる。
飯田殿は眼鏡が割れ、緑谷殿は怨霊の様になっていた。
隣にいた八百万殿の冷静な一言に、思わず素直に騙された己の頭を抱えた。
「これにて終わりだ。教室に、カリキュラム等の書類があるから目ぇ通しとけ。」
踵を返す相澤先生と呆然とする生徒達。
しかし、先生は緑谷殿に声を掛け何やら紙を渡していた。
「
西椋のテーピングは、飽くまで応急手当だからな。
明日から、もっと過酷な試練の目白押しだ。」
そう言って立ち去っていく先生を、眺めつつも教室へ戻る事にした。
一瞬でしか見えなかったが、俺は何位だったのだろうか。
歩いていると焦凍が「怠かったな。」とか言いながら隣に来たので、俺はそれに「有意義な時間だったよ。」と応えたのだった。
『個性把握テスト 第2位 西椋 大和』