第四話『今、僕に出来ることを』
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「最下位除籍って…!
入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても…
理不尽すぎる!!」
そう憤る女子に、相澤先生は淡々と伝える。
自然災害や大事故、敵の襲撃…。
いつ何処で来るかわからない厄災に、理不尽に立ち向かい覆していく。
それが"ヒーロー"だと。
「放課後マックで談笑したかったならお生憎様。
これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。
全力で、乗り越えて来い。」
挑発を混じえて此方を嘲笑う相澤先生に、生徒は本気度を読み取ったのか表情には先程の和やかさが消えた。
さて、場所を少し移してまずは50m走。
ゴールには何やらロボットが設置されており、あれで記録を付ける様だ。
2つのレーンをそれぞれ出席番号順に走る事になるのだが、俺は相澤先生に許可を取りに行く。
「…相澤先生。」
「何だ?…西椋か。」
「すみませんが、俺は一番最後に走っても良いでしょうか?」
「あ?」
21人という事は、最後は必ず一人で走る事になる。
普通だったら五十音順の最後…八百万殿が走るのだろうが、俺のこれからの走り方は隣に誰かいる場合、巻き込む可能性があるのだ。
「個性の関係上、隣にいると少し危険を伴うので。」
「…分かった。」
何かを察したのか相澤先生は目を閉じ、列の最後尾を指差す。
戻れと言う事らしい。
先生に一礼をしてから八百万殿の後ろ、最後尾に並ぶ。
距離が近くなった焦凍が、少し驚いた顔で此方を見た。
「大和、何で後ろに並んでんだ?」
「先生に許可を貰ったからな。一番最後に一人で走る為だ。」
間に挟まれている八百万殿が、不思議そうな顔をしている。
序に自己紹介をしておこう。
「西椋 大和だ。焦凍とは幼馴染でな。推薦入試の方か?」
「そうですわ。通りで仲が宜しいのですね…。八百万 百と申します。宜しくお願いしますわ。」
お嬢様の様な雰囲気と口調に品の良さを感じる。
推薦入試とあって、中々の個性を持ち合わせていそうだ。
そうこうしている内に、最初の二人が走り始めた。
車のエンジンの様な音を響かせ、颯爽と走り去るのは飯田殿。
脹脛から煙を出しつつもゴールに着く。
記録は3秒04ととてつもない好記録だ。
飯田殿のエンジンから考察するが距離が長ければ長い程ギアが上がるのだろう。
彼の個性は速さに特化したもののようだ。
一緒に走っていた女子は蛙の様に跳ねていたが、中々速い。
「飯田殿の個性は走る種目では独壇場だな。」
次のレーンで準備していた組が走り出す。
先程先生に物申していた女子と、尻尾の生えた男子だ。
思ったよりは普通の速さだが、個性は使われた状態なのだろうか?
ただ、走り終えた後は何だか嬉しそうにしていた。
さて、飯田殿が走ったレーンで準備していた組が走り出す。
金髪の不思議なベルトを付けた男子は、スタートと同時に後ろを向き真っ直ぐに跳躍。
そして、腹の辺りから光線を出しながら宙を舞った。
………凄い光景だ。
べしゃぁっ!
あ、墜落した…。
しかしまた光線を出しゴールする。
中々の機転だったが、最後の方はもたついたな。
一緒に走っていた桃色髪の女子は、液体を足元に出しながら走っていた。
あれも何かの個性だろう。
「ふむ…。」
思い思いに個性を使い記録を出していくのを見ていると、矢張り個性によって得意不得意がある。
それをどう補助するかで変わってはくるが、"個性把握テスト"とは言えて妙であった。
「爆速!!」
「…どあ!!」
爆発音と共に隣を巻き込んだ爆豪殿を見て、少し頭を抱えながらもそろそろかと用意を始める。
辺りを見渡し、最初に走り終えた飯田殿に声を掛ける。
「飯田殿。」
「西椋君!どうした?」
「すまないが、これを持っていてくれるか?」
渡したのは中身を抜いた竹刀袋。
母上達が丹精込めて作った物だ。
余り地べたに置いておきたくはなく、信頼ある者に預けることにした。
「うお!何だそれ?木刀!?」
赤髪の男子が此方へ食いつくが、順番が迫っている為俺はそれには答えずにレーンへと向かう。
飯田殿は二つ返事で竹刀袋を持ってくれた。
「次、西椋。」
「はい。」
先生に呼ばれ、レーンに立つ。
精神統一を行い愛刀に個性を送り込む。
よーいの合図に合わせて、身を低くし抜刀の構えを取る。
ドン!と音と共に数歩駆け、大きく踏み込んだ。
その瞬間、俺の姿は消える。
ざわめくクラスメイトと目を見開いた先生。
一歩、更に踏み込み消えて二歩、最後に踏み込み三歩。
その踏み込みで巻上がる多量の土煙。
そして踏み込んだ所が足の形に抉れる。
ゴールに居た俺は突きの姿勢で抜刀しており、空を穿いていた。
「ピピッ…2秒50」
出された記録を確認して、刀を鞘に収める。
平坦な場所ではこれくらいのタイムが妥当か。
「うおおおぉお!!?何だ何だ!!?めっちゃかっけェーー!!!」
男子陣が興奮している様に見える。
焦凍も驚いているのか、目線でどういう事だと聞いてきている気がする。
飯田殿から竹刀袋を回収し、生徒達に向き直る。
「…先程のは"縮地"と呼ばれる移動術で、抜刀する際に相手の懐へ瞬時に飛び込む技だ。
強く踏み込み跳ぶ事で更に速度を上げる事が出来るが、凡そ三歩か四歩で仕留めるのが基本だ。
…本来は狭い室内や、壁がある所で不意打ちを付くのに使う。
故に、長距離や平坦な場所ではあまり向かない。」
余りに期待を込めた眼差しに、少し気恥しさを感じながら手の内を明かした。
「俺の個性は『侍』。
棒状の物を刀とし、鍛え抜かれた精神力と身体能力によっては達人級の剣術を扱える。
……、縮地も練習して得たものだ。」
生徒の殆どが何やら奇声を上げている。
何だ一体…俺は何かやらかしたのか?