第三話『スタートライン』
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「また会ったな、爆発少年。」
「うっせェ!!爆豪だッ!!変な名前で呼んだら殺スぞ武士野郎…!!」
「人の事言えないではないか。」
相変わらず産後の親猫の様に毛を逆立て威嚇してくる爆豪殿に、少しだけ反抗して真っ直ぐに目を見つめる。
「西椋 大和だ。…武士なのは否定しないが、自身の姓に誇りがあるのでな。呼ばれなければ返事はせん。」
「はぁアッ!??」
「宜しく頼むな、爆豪殿。」
にっと口角を上げて笑えば、爆豪殿は盛大に舌打ちをして葉隠殿の後ろへ座った。
足を机に投げ出しており、葉隠殿は小さくひえぇと零している。
そこへ指導しに行くのは飯田殿だ。
彼は本当に真面目である。
「西椋は……意外と豪胆なんだな。」
「そうでも無いさ。」
障子殿に評価されながらも、後ろの方で気温が下がっているのを少しだけ確認出来て、何故か焦凍が怒っているのが分かった。
焦凍、頼むから初日に教室を凍らせないでくれ。
そう後ろのを方見て念を送ると、気温変化が止まった気がした。
入口の方にいる髪が乱雑な男子(……なんと、あの男子も合格していたのか。)と、丸い形の印象を受ける女子で最後だろう。
全21名が教室に集まる。
……と、同時に何やらもぞもぞと寝袋が姿を現した。
思わず皆がざわざわとする中、寝袋を脱いで教卓へ行くその者。
櫛が通されていなさそうな伸び切った頭髪に、手入れせずそのままの無精髭。
教卓についても猫背のままの背筋。
一体何なんだ、この男は…。
「ハイ。静かになるまで8秒かかりました。
時間は有限。君たちは合理性に欠くね。」
この物言い…ま、まさかの先生…?!
「担任の相澤 消太だ。よろしくね。」
淡々と虚空を見つめながら紹介をする相澤先生に、思わず体がわなわなと震える。
これが……これが教師……。
今まで聖職と思っていた教師のイメージにひびが入る。
世の中にはこのような教師もいるのか…。
む?そう言えば、雄英の教師はプロヒーローが勤めると聞いていた。
もしかしなくとも、あの相澤先生もプロヒーローという事である。
………否、否!!例えプロヒーローと言えど人前に立ち指導するにあたり相応の格好があるだろう!
実家できびきびと門下生を指導している父上に思いを馳せていると、相澤先生は寝袋から体操服を出した。
「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ。」
突然の指示と意図の読めない表情に、皆が動揺しながらも体操服を出す。
これ以上時間の無駄は許さないとばかりに、更衣室の場所を伝えてから締め出されてしまった。
……折角焦凍に結んでもらったネクタイを、早々に外す事になるとは…。
入学式等もあるだろうし、また結んでもらう他無いだろうか…。
しかし、体操服に着替えるという事は動くという事。
咄嗟に判断して竹刀袋を背負ったが、何が始まるのか全く予想出来ない事態に各々が戦々恐々としていた。
「個性把握…テストォ!?」
皆が着替えグラウンドに赴くと、相澤先生が立っていた。
先生から伝えられた言葉に、それぞれが反応している。
入学式やガイダンス等は、相澤先生の独断により免除されたらしい。
「雄英は"自由"な校風が売り文句。
そしてそれは、"先生側"もまた然り。」
そう宣う相澤先生に疑問符を浮かべる生徒。
……何だか話が読めて来た。
要は中学の時に行った"個性"禁止の体力テスト、あれの個性使用版である。
先生から呼ばれた爆豪殿が、手本としてソフトボール投げをする事になる。
球威に爆風をのせ、思いっ切り振り投げた。
「死ねえ!!!」
…………。掛け声が物騒だ。
立ち込める土煙と爆風に、目を細める。
暫くして測定器が地面に落ちた。
「まずは自分の『最大限』を知る。
それがヒーローの素地を形成する合理的手段。」
爆豪殿が叩き出した数値は705.2m。
素晴らしいに数値周りは湧き、おぉ…!と俺も声が出る。
しかし、面白そうという単語に相澤先生が更に続けた。
「ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」
雰囲気が重くなった先生に周りは何事かと注目する。
暗く怪しく睨む先生は、とんでもない事を言い出した。
「よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し…除籍処分としよう。」
生徒の殆どから驚愕の声が聞こえる。
そんな中俺はこの個性把握テストをどう乗り切るか、それに頭を使っていた。
俺の個性、何処まで通用するのか……。
「生徒の如何は先生の"自由"。
ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ。」
髪をかきあげ怪しく笑う相澤先生に、俺は竹刀袋を握り脳内をフル回転させた。
さぁ、個性把握テスト八科目。
俺はこの受難にどう立ち向かおうか。