2014年3月


部屋割り、発表されました。



失敗した。ほんとに失敗した。

久瀬比奈くぜひなわだちは短くため息を吐き出し、荷物を抱え直して寮の廊下を進む。目指すは二階。

今日は新しい部屋割りが発表される日。独特な色使いの、それでいて目につく上質紙は寮一階の共同掲示板に貼り出されていた。
在校生は入れ替わり立ち替わり、そこに書かれた自分の名前と部屋を確認して去っていく。

独断と偏見で決められるこれでも、一応は生徒の意見を尊重してもらえるらしい。轍は夢路第一に入学して以来、一人部屋の希望を出していた。
しかし今回に限ってはその申請締め切りをとんと忘れていた。

お世辞にも交友関係が幅広いとは言えない。話しかけられれば応えて話す、そんな受け身な人付き合いではいくら最高学年になったとはいえ、顔は見たことがあるが名前を知らない生徒はまだまだ多い。
現に、新しい部屋の扉に貼り出された紙にあるルームメートの名前を見ても自分の名前しか分からない。分かるのは同室であることから二人とも同性だろうということくらいか。むしろ異性だったら困る。

部屋に入れば、まだ誰もいなくて。荷物を下ろし、ぐるりと見渡す。
綺麗に掃除をされた204号室がこれから一年間の彼の住まいとなる。他の二人も新入生でなければもうすぐやってくるだろう。

最後の最後まで詰めが甘いのは直らねぇな。

そんな思いが心の内に込み上げてくる。思考を巡らせているうちに「あっ」と大事なことに思い当たった。

「猫、連れ込んでもいいか聞かなきゃな……」

そうぼやいた言葉は静かな空間に落ちていった。


14/04/19
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