グリムとグリム。
生と死の超越
魔法使いの集う島、レグスカルト。
とある精霊殿から出てきた少年はエメラルドグリーンの瞳に濁った光を湛えて路地に入る。
「ついに、ついに成し遂げました……」
「待ち望んだこの瞬間を、あぁ、ようやく願いが、叶うんですね……」
笑いが止まりません。
路地に響く、くつくつと漏れ出す笑い声。寒気に身を震えるほどの冷たく陰湿な笑い声。
「触媒は必要でしょうか?いやでも今なら何でも出来る気がしちゃいますね?」
開けた場所で両手を広げ、首を傾げる様は年相応。しかし浮かべる表情はどこまでも大人びて。
「さて、物は試しに……『我は願う』」
「『幾重にも紡がれた運命より我が同胞を呼び起こさん』」
辺りに沸き上がる魔法陣が重々しいオーラに包まれ、少年は笑みを深める。
『×××、×××××』
独特な口上に魔力が込められ、魔法陣に吸い込まれる。
「さぁ、早く出てきてくださいよ。また『愛して』あげますから」
ごぽり。ごぽり。と魔力が波打つ。
黒から白へ、白から赤へ。赤は熱を帯びて紅蓮へと変わり。
「あはっ、火柱ですか!」
「そう、ずっと!これを待っていたんです!」
少年は躊躇なく呑み込まれた。
大火は空気を巻き込み燃え上がり。ぱんっ!と弾けると少年がもう一人、いや、少女がもう一人。
「……どうして」
「何でしょう?」
「わたしはここにいる?」
「ぼくが呼び戻したからですよ?」
「どうして」
「あなたに会いたかったから。これでは理由になりませんか?」
「ならない」
断言した彼女の周りには火の玉が揺れる。
「もしかして怒っています?」
「違う、呆れている」
ざわりざわり。嫌な風が吹く。
「わたしは消えた、あなたの目の前で」
「あなたは消えた、ぼくの目の前で」
「存在は許されない」
「輪廻は許されない」
互いの魔力が交錯する。空気が重く淀み、感情が入り乱れる。
「「許されるのならもう一度」」
声が、重なった。
「死んでみせる」
「生かしてみせる」
17/01/07
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