とあるアイセ。
迷子の迷子の
獣人の島、ヴィキ・ディキ。
王の名を冠する者が治める自治領が一つ。
健全な肉体には健全な精神が宿る。それを信念に、島民は文武両道に勤しむ。
アイセ・クラカディールもその一人。しかしなかなかにアンバランスな彼は誇りよりも日光浴をこよなく愛する。
王政、政策、難しいことはよく分からない。
それよりも日がな一日、太陽の光をのんびり浴びているほうがぽかぽかしてしあわせだと思う。
自由奔放、悠々自適な彼はそんなことを考えているのかいないのか。お気に入りの入り江を泳いでから昼寝をするのが日課だった。
だが、その日だけは違った。
「……あれ?」
その日はいつもより泳ぎたい気分だった。
「ここ、って」
その日はいつもより海が近く感じられた。
「一体……」
その日はいつもより波が高く荒れていた気がした。
「どこ、なんだ?」
その日はいつもより、些か刺激的な風景が目の前に広がっていた。
16/10/14
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