いいなの私はあちらにいない。
不香の花は熱に弱い
「雪!雪なの!」
綿のように白い結晶体に、ひよ=まめは興奮を隠さずぴょんぴょん跳ねる。
追いかけて地面に落ちる前に手のひらに乗せる。一瞬で溶けてしまうその儚さよりも、積もったあとに何をして遊ぼうかと考えるので忙しいようだ。
「雪だるま、かまくら、他には……くちゅん!」
むずむずする鼻をこすり、ひよ=まめは辺りを見渡す。
「誰かひよのこと、噂でもしてるの?」
呑気に呟きながら廃墟の陰へ。そこにはすでにこんもりと雪が積もっていた。
「こんなにたくさんなの!」
真っ白の絨毯に飛び込もうとした瞬間、鋭い殺気に【
案の定、先ほどまで立っていた場所に長く太い腕が伸びて、何かを掴もうとする仕草。
「も、もしかして、怪異なの!?」
情報収集はほとんどしないので、怪異情報もとんと知らず。雪から浮かび上がる怪異、雪男に捕まるまいと翼をはためかせ飛ぶ。
この姿は目立ちすぎる。それをよく分かっているため、近くの廃墟へと飛び込む。発動を解き、割れたガラス窓から外を窺う。突然の怪異の出現により慌てふためく住民のおかげで上手く逃れられた。
「よかった、の……」
ひと息を吐き、額に浮かんだ冷や汗を拭う。
落ち着いて気がついたのは身体の異変。節々が痛み、ふわふわとした浮遊感。
「何なの、これ……くちゅん!」
また、くしゃみ。口を覆った手のひらは触れた頬の熱さを感じ取り、頭は空気との温度差に混乱する。
「何で、こんな熱い……?もしかして……風邪?」
病は気から、とはよく言ったもので。自覚したとたんに足から力が抜けてその場に座り込む。かたかたと震える肩を抱き、寒さにかちかちと鳴る歯の震動が頭に響く。
朦朧とする意識の中、都合よく落ちていた布を引き寄せてくるりと丸まり暖を取る。
動かないと、そう言い聞かせるのに身体は言うことを聞かず。廃墟の中で誰かの声。住民がいるようだが、ひよ=まめは助けを求めることは出来ず。
うずくまり、ただ荒い呼吸を繰り返すだけだった。
15/12/13
