旋律はいつでも真っ直ぐに


お題「明日」
縛り「出だしをセリフにする」「同じ文末表現を続けて使わない(〜だ。〜だ。など×)」



明日



「あっ、ゆき」

任務からの帰り道、相棒、かなでが自分の名と同じ単語を発した。イントネーションが違ったために違和感を覚えたが、目をやれば容易に解決する。
奏は目元を覆う布をずらして視線を空へ。倣うと見えたのは風に舞う粉雪だった。

由貴、ではなく雪。少々心に霞がかかったのは気のせいではない。
気象にまで妬いてしまうとは、これを知られたらどう思われるだろうか。
しかしこちらの心情を知る由もない奏は何やらもじもじしながら吐く息白く言葉にする。

「あのさ、雪花せっかはクリスマス、って予定あるのか?」
「こっちは何も決めてなくてフリー、でさ……」

思わず目を見張り、先日の姉との会話が思い出される。
同じか、とぼやいた音を拾い首を傾げる奏を前に咳払いを一つ。

「俺も予定は……だから、誘ったらどうだって、姉さんが」

よもや言うとは思っていなかった台詞を口にしたためきちんと届いたか不安になった。だが返ってきた「お姉さんに先越されてたか」と苦笑いで互いに胸の内を知る。

イルミネーションが彩るのは街並みだけではない、人々の心までも華やかにしてくれるらしい。
クリスマスまであと数日、明日からやること尽くしで忙しくなるがそれすら楽しみに思えてしまった。


18/12/26
*Thanks*
雪花さん/如月 由貴さん
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