三途の川の渡し賃。


「真紅に染まる刃」



ちゃんちゃんばらばらと金属がぶつかり合う。極限状態での命のやり取りほど高揚するものはない。
剣道は崩してしまえばこちらのもの。当てれば勝ち、当たれば負けの至極簡単なルールのチャンバラは形無し上等。

冴は口角が上がるのを抑えられない、腕に力が籠るのを抑えない。
相手の余裕綽々な表情に暗色が見えたその瞬間、一番の興奮を覚えるのは彼女だけだろうか。いや、剣を握る者、武器を構える者は少なからずこの喜びを肌で感じるだろう。

「なぁ」と声をかける、それは普段の素振りと何ら変わらない。変わるとすれば。

「テメェさまは今、サイコーに楽しんでるかい?」

冴の眼光が鋭く、ターコイズブルーの輝きが一層増し。彼女の一閃に磨きがかかっていることくらい。

彼女の打刀、砕地さいちが唸る。文字通り地を砕き獲物に襲いかかり血肉を啜るのも、もはや時間の問題。


18/07/21
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