柳葉凪いで龍はなく。



貴方は墨廼江柳吾で『「とりあえず殴っておく?」』をお題にして140文字SSを書いてください。
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墨廼江の刺青が気に入らないとけちをつける者がいないとは限らない。だが態々ご足労いただき、店先で怒鳴りつける輩がいるとは思わなかった。
女たちは縮こまり、男衆は舌打ちをする。
「ちぃと黙られんか?」
そろそろ、寛容に見えていた五代目の堪忍袋の緒さえも切れる頃合いだ。




貴方は墨廼江柳吾で『御不満ですか?』をお題にして140文字SSを書いてください。
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墨廼江は、決して五代目の柳吾のみで栄えたのではない。初代である彼の祖父から脈々と受け継がれた腕前が、今日にようやっと花開いただけ。
職人の魂にケチをつけるなら、それ相応のお覚悟を。彼らはいつでも聞き入れてはくれるだろう。何をもって返してくるかはその時次第。




貴方は墨廼江柳吾で『「新手の誘い文句ですか?」』をお題にして140文字SSを書いてください。
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綺麗なものを見つけたんだ。
そう告げた申の御仁、高遠はゆったりと墨廼江の暖簾を押し上げる。
「行ってみるかい?今なら案内するよ」
暇だからね、とこちらの心を読んだかのような言葉に柳吾は草履を引っ張り出す。
久方ぶりのお天道様の下だ。目当てが期待外れなら存分に文句を言ってやろう。

*Thanks*
高遠 敬久さん




貴方は墨廼江柳吾で『愛が歪んだ』をお題にして140文字SSを書いてください。
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己が人生において、刺青とは切っても切れない存在。
生き甲斐であり、生きた証でもあり。
清らかな自然を優美に切り取り、柔肌にしかと刻む。
綺麗で美しいものを求めるが故に、いろんなものを見聞きした。
その結果が、今の苛烈な作風に繋がったなど、誰が予想しただろうか。



☆5
貴方は墨廼江柳吾で『待て、は得意じゃない』をお題にして140文字SSを書いてください。
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ちょっと待ってて、そう言われたのは数分前。自分が短気だとは思っていなかったが、キャンバスを前にして筆の一本も走らせることが出来ないのがこんなにもつらいとは思わなかった。
まだか、まだか。ちょっととはどれくらいか。この時間でどこまで描けたか。考えると何だか落ち着かなくなってきた。



☆6
貴方は墨廼江柳吾で『グラスにうつった真実』をお題にして140文字SSを書いてください。
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グラスの曲面で世界が歪む。注がれた液体に作用されて光も屈折する。
こくり、流れ込んだアルコールで喉を潤す。冷蔵庫から出てだいぶ経っていたので冷たさは逃げていた。あるのは歪な世界と、注いだ一境の愉快そうな声。
そうか、音だけはいつでもクリアに届くのか。と、鼓膜が捉える事実に気付く。

*Thanks*
一境さん



☆7
貴方は墨廼江柳吾で『花言葉で愛を告ぐ』をお題にして140文字SSを書いてください。
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人は何事にも意味を持たせたがる。色はもちろん、花にも。
道端に咲く花、温室で育てられた花。生まれ育った場所は違えど、同じ花ならば同じ意味を持つ。
これを贈ればきっと思いは届く、と淡い期待を抱き人々は花を吟味して選ぶ。本当に届くかどうか分からないのに。柳吾には理解が及ばなかった。
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