紅葉の錦 神のまにまに
【もみじへの書き出し&文末一文お題】
〔書き出し〕
廻り廻って、結局戻ってきてしまったらしい。
〔文末〕
「これも追加しておいてください」
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時が経てば
廻り廻って、結局戻ってきてしまったらしい。
大社跡。教官に連れられハンターとしてのいろはを学んだ場所。
今はオトモのサクラとキク、それから偵察のスイセンを連れて一人でやってきている。
テントを出てぐるりと歩くはずが、やはり広大な地を勘で進んではいけないらしい。簡単に言えば、迷った。
スイセンが上空を旋回しながら飛ぶ。辺りに大型モンスターは見られないようだ。
「もみじ、どうするニャ。戻る方法はいくらでもあるニャよ」
探索ツアーゆえに採集をしながらキクが問う。
両手いっぱいの特産キノコは多くのカムラポイントを生むことだろう。
タイプ度外視のサポート力で何でもこなす彼女は本当に心強い味方だ。オトモとしての適正は別にあったが、ヒーラーを選んでくれたのは新米ハンターである自分のため、といつも口にする。いつかは見返さないと。
「まずは迷子にならないのが鉄則ニャ。話はそれからニャ」
オトモは読心術まで会得できるのか。サクラまで慰めるように頭を擦り寄せてきた。
「とりあえずは……川を下っていきます。下流に出ればメインキャンプはすぐそこだから」
「正論ニャね」
荷物の整理をしてキクがサクラに乗り、ぽんぽんと自分の後ろを叩いて催促をする。厚意に甘えて同伴搭乗させてもらった。
遠慮しないで、とサクラも言ってくれたようで思わず心が和んだ。
彼女の歩調はとても軽やかで。キクの身体が跳ねるほどだった。
脚もとで弾ける水音も涼やかで。つま先が濡れると頭も冷やしてくれた。
「落ち込むことないニャ。土地勘なんてものは自然とついてくる、誰かが言ってたニャ」
「……ありがとう、頑張るよ」
「気張りすぎずに、ニャ」
キクからの励ましで元気をもらい、サクラの帰巣本能のおかげで、無事にキャンプ地まで戻ることができた。
安堵と不甲斐なさに心が揺れるが、顔には出さないよう努めた、つもりだった。
ポイントになるものは納品し、祠に一礼して、カムラの里までは三人で歩いた。いつも隣にいてくれる二人の存在にありがとう、と呟きながら。
日が暮れる前に自宅へ着くと、キクとサクラはさっさと装備を外して水浴びに。
もみじは里長に報告、素材の整理と、ルームサービスの彼に夕餉のお願いを。内緒でお願いします、とこっそりと二人の好物を渡していたのをキクは見ない振りをしてサクラにまた飛び乗った。
空腹を満たす前にまずはさっぱりしないと。
「これも追加しておいてください」
23/08/12
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