ep.01
02
「…はい?」
「聞こえなかったの?君は誰かって聞いたんだけど」
「い、いえ、聞こえてますけど…。本当に覚えてないですか?」
「うん」
あんなに衝撃的なことがあったのに、綺麗さっぱり忘れちゃうなんて…。
私が何も言えずに立っていると、難波先輩は何かを思い出したかのように言った。
「君、勘違いしてる」
「へ?」
そういって、いきなりぶっきらぼうに手を握られて、教室を出ていく。
「ちょ、ちょっと、あの!どこへ…!」
…って、あれ?先輩の手、ひんやりしていて、いかにも男の人って感じ…。昨日の手とは違うような…。
「…晴希呼んでもらっていい?」
難波先輩に連れてこられたのは、難波先輩の教室から二つ先の教室。
「晴くん、瑞希くんが呼んでるよー」
「あ、了解っ!」
難波先輩に呼び出された晴希と呼ばれるその男は、女子の輪の中心にいた人物だった。そしてその人の顔立ちがはっきりしてくるにつれて、私は目を丸くした。
「なーに、…って、君は昨日の!!」
「な、難波先輩が…二人?!」
あまりに似すぎてて、どっちがどっちだか…!
「あほか、双子だ、双子。これで分かったろ。お前が昨日助けられて、お礼言いたいのはこっち」
そういって難波先輩は、もう一人の難波先輩の方へ私を突き出した。
「え、わざわざお礼言いに来てくれたの?嬉しいなー!」
「えっと、えっと…」
私は突然の出来事に頭がついていかず、ゆっくり整理していると、
「…難波瑞希、こいつの兄」
「俺は、難波晴希、弟!昨日助けたほうだよ!俺のことは晴希先輩って呼んで♪」
と、ご丁寧に自己紹介をしてくれた。
「あ、ありがとうございます…!」
と、言っても本当に似すぎてて、名前は覚えられたけど顔が一致しない…。
「顔が一致しない、みたいな顔してるね(笑)見分け方としては、俺のが優しいよ、なんてね♪あとはー、うーん…手かなあ?」
「手、ですか…?」
「俺の手、いっつもあったかいんだー!まぁ、心もあったかいしね?握ってみる?」
「やめろ、晴希。セクハラだぞ」
そういって、私の手を掴む晴希先輩の手を難波先輩は払いのける。温かくて柔らかい手と、冷たくて華奢な手。
あの時私が二人の手に違和感を覚えたのは間違いじゃなかったんだ…。
「あ、あの…私は、若槻菜々って言います!改めまして、晴希先輩!昨日は助けていただきありがとうございました!」
「んー!いいねぇ、その先輩って響き!菜々ちゃん、これからよろしくね!」
「はい!よろしくおねがいします!難波先輩も!」
「…ん」
「それでは私、そろそろ自分の教室戻るので!失礼します」
昨日のように手を振る晴希先輩を背に、私は自分の教室へ戻った。
教室へ戻ると、昼休み終了ぎりぎりだったらしく、大方の人は席についていた。
「戻ってくるの、遅かったね」
突然席に着くなり隣の人に話しかけられた。今日一日、難波先輩のことで頭がいっぱいになっていたが、お隣さんは男の子のようだった。
「あ、…うん。ちょっと先輩のところに用事があって…」
「え?!もう先輩に知り合いいんの?すげえ…」
「いや、あの、ほら私昨日遅刻してきたでしょ?その時に助けられたというか…」
って、初対面相手になんでここまで話してるんだろう、私。
「あ、俺は成田賢人、よろしく!」
「えっと、私は若槻菜々です」
私は成田くんと挨拶を交わしていると、次の教科の先生が入ってきて授業が始まった。
高校での初の授業を無事に終え、私は帰り支度を整えていると、教室の出口の方から誰かに呼ばれた。
「若槻さーん!二年の先輩が呼んでるよー!」
晴希先輩だった。…正直遠くだし、顔が似ていてわからないけど、多分そう。私は急いで荷物を持ち、先輩のもとへ走った。
「えと…、晴希先輩…ですよね?どうかしましたか?」
「せいかーい!さすが、菜々ちゃん!いやね、どうってか、一緒に帰らない?」
「い、い、一緒にですか?!」
まさかこんなすぐに先輩と交流が深められるチャンスがくるとは思ってなかったので、つい大声を出してしまった。
「あら、都合悪かった?」
「いえいえ、そんな!!!本当に私なんかでいいんですか?!」
「もっちろんだよー!俺、菜々ちゃんともっと仲良くなりたいんだよ」
そういって無邪気に笑う先輩はとても可愛らしかった。…先輩に失礼かな?
「ただね…」
「?」
先輩は一歩出口から横にずれると今まで晴希先輩で隠れて見えていなかった、難波先輩の姿があった。
「瑞希もいるんだけど…いい?」
「も、もちろんです!」
正直、難波先輩は晴希先輩と違って口数が少ないから、ちょっと怖いイメージがある。でも、この機会に仲良くなれたらいいな。
「…はい?」
「聞こえなかったの?君は誰かって聞いたんだけど」
「い、いえ、聞こえてますけど…。本当に覚えてないですか?」
「うん」
あんなに衝撃的なことがあったのに、綺麗さっぱり忘れちゃうなんて…。
私が何も言えずに立っていると、難波先輩は何かを思い出したかのように言った。
「君、勘違いしてる」
「へ?」
そういって、いきなりぶっきらぼうに手を握られて、教室を出ていく。
「ちょ、ちょっと、あの!どこへ…!」
…って、あれ?先輩の手、ひんやりしていて、いかにも男の人って感じ…。昨日の手とは違うような…。
「…晴希呼んでもらっていい?」
難波先輩に連れてこられたのは、難波先輩の教室から二つ先の教室。
「晴くん、瑞希くんが呼んでるよー」
「あ、了解っ!」
難波先輩に呼び出された晴希と呼ばれるその男は、女子の輪の中心にいた人物だった。そしてその人の顔立ちがはっきりしてくるにつれて、私は目を丸くした。
「なーに、…って、君は昨日の!!」
「な、難波先輩が…二人?!」
あまりに似すぎてて、どっちがどっちだか…!
「あほか、双子だ、双子。これで分かったろ。お前が昨日助けられて、お礼言いたいのはこっち」
そういって難波先輩は、もう一人の難波先輩の方へ私を突き出した。
「え、わざわざお礼言いに来てくれたの?嬉しいなー!」
「えっと、えっと…」
私は突然の出来事に頭がついていかず、ゆっくり整理していると、
「…難波瑞希、こいつの兄」
「俺は、難波晴希、弟!昨日助けたほうだよ!俺のことは晴希先輩って呼んで♪」
と、ご丁寧に自己紹介をしてくれた。
「あ、ありがとうございます…!」
と、言っても本当に似すぎてて、名前は覚えられたけど顔が一致しない…。
「顔が一致しない、みたいな顔してるね(笑)見分け方としては、俺のが優しいよ、なんてね♪あとはー、うーん…手かなあ?」
「手、ですか…?」
「俺の手、いっつもあったかいんだー!まぁ、心もあったかいしね?握ってみる?」
「やめろ、晴希。セクハラだぞ」
そういって、私の手を掴む晴希先輩の手を難波先輩は払いのける。温かくて柔らかい手と、冷たくて華奢な手。
あの時私が二人の手に違和感を覚えたのは間違いじゃなかったんだ…。
「あ、あの…私は、若槻菜々って言います!改めまして、晴希先輩!昨日は助けていただきありがとうございました!」
「んー!いいねぇ、その先輩って響き!菜々ちゃん、これからよろしくね!」
「はい!よろしくおねがいします!難波先輩も!」
「…ん」
「それでは私、そろそろ自分の教室戻るので!失礼します」
昨日のように手を振る晴希先輩を背に、私は自分の教室へ戻った。
教室へ戻ると、昼休み終了ぎりぎりだったらしく、大方の人は席についていた。
「戻ってくるの、遅かったね」
突然席に着くなり隣の人に話しかけられた。今日一日、難波先輩のことで頭がいっぱいになっていたが、お隣さんは男の子のようだった。
「あ、…うん。ちょっと先輩のところに用事があって…」
「え?!もう先輩に知り合いいんの?すげえ…」
「いや、あの、ほら私昨日遅刻してきたでしょ?その時に助けられたというか…」
って、初対面相手になんでここまで話してるんだろう、私。
「あ、俺は成田賢人、よろしく!」
「えっと、私は若槻菜々です」
私は成田くんと挨拶を交わしていると、次の教科の先生が入ってきて授業が始まった。
高校での初の授業を無事に終え、私は帰り支度を整えていると、教室の出口の方から誰かに呼ばれた。
「若槻さーん!二年の先輩が呼んでるよー!」
晴希先輩だった。…正直遠くだし、顔が似ていてわからないけど、多分そう。私は急いで荷物を持ち、先輩のもとへ走った。
「えと…、晴希先輩…ですよね?どうかしましたか?」
「せいかーい!さすが、菜々ちゃん!いやね、どうってか、一緒に帰らない?」
「い、い、一緒にですか?!」
まさかこんなすぐに先輩と交流が深められるチャンスがくるとは思ってなかったので、つい大声を出してしまった。
「あら、都合悪かった?」
「いえいえ、そんな!!!本当に私なんかでいいんですか?!」
「もっちろんだよー!俺、菜々ちゃんともっと仲良くなりたいんだよ」
そういって無邪気に笑う先輩はとても可愛らしかった。…先輩に失礼かな?
「ただね…」
「?」
先輩は一歩出口から横にずれると今まで晴希先輩で隠れて見えていなかった、難波先輩の姿があった。
「瑞希もいるんだけど…いい?」
「も、もちろんです!」
正直、難波先輩は晴希先輩と違って口数が少ないから、ちょっと怖いイメージがある。でも、この機会に仲良くなれたらいいな。