●鉄火のマキちゃんとコマキちゃんと。
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「へいお待ちっ、イキのいいうちに食べとくれ!」
「へ〜いお待ち〜……」
「ナナシちゃん、声が小さい。お客さんの前ではもっとシャキッと!」
「そんなこと言われてもぉ〜……ぜぇ、ぜぇ……」
あれから出前の手伝いに駆り出されたわたしは、あちこちを疾風のごとく飛び回るマキちゃんを必死に追いかけながら、お客さんに鉄火巻きを届けていき──。
「もう限界です〜……ばたっ」
やがて配達を終えた昼下がり。
川の土手に差し掛かると、途端に糸が切れたわたしは、ぐったりとマキちゃんの腰に倒れ込みました。
身体は湿ったのりのようにヘロヘロ。走り疲れて、目の前の景色がぼやけて見えます。
「ご苦労さん、よく頑張ったじゃないか」
燃え尽きたわたしを労うように、マキちゃんがぽんぽんと頭を撫でます。
「うぅ〜、一生分の体力を使い果たした気分です〜……」
「そりゃあアンタ、いくらなんでも軟弱過ぎるよ」
「マキちゃんが丈夫過ぎなんです〜……」
「あははは、アタイはアンタと違って毎日走り回ってるからね。このくらいの運動は朝メシ前さ!」
二人並んで土手に腰を下ろします。川の水気をさらった風が、汗ばんだ肌に涼しく染みました。
しばらくマキちゃんにもたれかかりつつ、ぜえはあと息を整えていると、ぽんっと背中を叩かれます。
「さてと、それじゃあ配達を再開しようか」
「えっ」
耳を疑いました。
「そんなぁ、まだあるんですか〜」
「安心しなよ、届け先はすぐそこだからね」
マキちゃんはすし桶を見せると、座ったまま目の前に差し出しました。
「ほら、最後のお客さん」
「……へ?」
ぱちくりと目を瞬かせるわたしに、マキちゃんはニコッと目を細めます。
「約束通り、アンタの分も用意してあるよ。ちゃんと働いたご褒美だ、好きなだけ食べとくれ」
「──マキちゃん〜〜!」
目の前が光り輝いた瞬間でした。
そういえば、そんな約束をしていましたね。走るのに必死になるうちに頭からすっぽ抜けていたとは、なんという不覚。
だけどご褒美は、不意打ちの方が嬉しさも倍なもの。
「ではいただきま〜すっ」
わたしはひょいと鉄火巻きをつまみ、マキちゃんが「はいよ」と差し出した醤油皿にちょんとつけて口に放り込みました。
「……ん〜、最高です〜〜!」
すし飯のほどよい酸味に、のりのうま味。そして内側からとろけ出すようなマグロが、醤油と絡んで濃厚な甘みを引き出してくれます。
わたしは夢中で口に運び続けました。見違えるように食欲旺盛モードなわたしを見て、マキちゃんは仕方なさそうに笑います。
「さっきまであんなにヘトヘトだったのに、現金な娘だよ」
「だってこんなにおいしいんですも〜ん。疲れなんて一瞬で吹き飛びますよ〜。ぱくぱくもぐもぐ」
「ま、そんなに喜んでくれるならアタイも嬉しいさ。おかわりが欲しければいくらでも作るから、今さら遠慮はいらないよ!」
「はい〜」
空は清々しいほどに晴れ渡っていました。透き通った川の水が、日射しを照り返してキラキラと輝いています。
隣には、わたしの食事をニコニコと見守るマキちゃん。青空の下だから、真っ白な笑顔がいっそう眩しいです。
そんな極上の景色の中で味わう鉄火巻きは、それはもう格別なおいしさで。疲労で澱んだ心は、今やきれいさっぱりと洗われていました。
「へ〜いお待ち〜……」
「ナナシちゃん、声が小さい。お客さんの前ではもっとシャキッと!」
「そんなこと言われてもぉ〜……ぜぇ、ぜぇ……」
あれから出前の手伝いに駆り出されたわたしは、あちこちを疾風のごとく飛び回るマキちゃんを必死に追いかけながら、お客さんに鉄火巻きを届けていき──。
「もう限界です〜……ばたっ」
やがて配達を終えた昼下がり。
川の土手に差し掛かると、途端に糸が切れたわたしは、ぐったりとマキちゃんの腰に倒れ込みました。
身体は湿ったのりのようにヘロヘロ。走り疲れて、目の前の景色がぼやけて見えます。
「ご苦労さん、よく頑張ったじゃないか」
燃え尽きたわたしを労うように、マキちゃんがぽんぽんと頭を撫でます。
「うぅ〜、一生分の体力を使い果たした気分です〜……」
「そりゃあアンタ、いくらなんでも軟弱過ぎるよ」
「マキちゃんが丈夫過ぎなんです〜……」
「あははは、アタイはアンタと違って毎日走り回ってるからね。このくらいの運動は朝メシ前さ!」
二人並んで土手に腰を下ろします。川の水気をさらった風が、汗ばんだ肌に涼しく染みました。
しばらくマキちゃんにもたれかかりつつ、ぜえはあと息を整えていると、ぽんっと背中を叩かれます。
「さてと、それじゃあ配達を再開しようか」
「えっ」
耳を疑いました。
「そんなぁ、まだあるんですか〜」
「安心しなよ、届け先はすぐそこだからね」
マキちゃんはすし桶を見せると、座ったまま目の前に差し出しました。
「ほら、最後のお客さん」
「……へ?」
ぱちくりと目を瞬かせるわたしに、マキちゃんはニコッと目を細めます。
「約束通り、アンタの分も用意してあるよ。ちゃんと働いたご褒美だ、好きなだけ食べとくれ」
「──マキちゃん〜〜!」
目の前が光り輝いた瞬間でした。
そういえば、そんな約束をしていましたね。走るのに必死になるうちに頭からすっぽ抜けていたとは、なんという不覚。
だけどご褒美は、不意打ちの方が嬉しさも倍なもの。
「ではいただきま〜すっ」
わたしはひょいと鉄火巻きをつまみ、マキちゃんが「はいよ」と差し出した醤油皿にちょんとつけて口に放り込みました。
「……ん〜、最高です〜〜!」
すし飯のほどよい酸味に、のりのうま味。そして内側からとろけ出すようなマグロが、醤油と絡んで濃厚な甘みを引き出してくれます。
わたしは夢中で口に運び続けました。見違えるように食欲旺盛モードなわたしを見て、マキちゃんは仕方なさそうに笑います。
「さっきまであんなにヘトヘトだったのに、現金な娘だよ」
「だってこんなにおいしいんですも〜ん。疲れなんて一瞬で吹き飛びますよ〜。ぱくぱくもぐもぐ」
「ま、そんなに喜んでくれるならアタイも嬉しいさ。おかわりが欲しければいくらでも作るから、今さら遠慮はいらないよ!」
「はい〜」
空は清々しいほどに晴れ渡っていました。透き通った川の水が、日射しを照り返してキラキラと輝いています。
隣には、わたしの食事をニコニコと見守るマキちゃん。青空の下だから、真っ白な笑顔がいっそう眩しいです。
そんな極上の景色の中で味わう鉄火巻きは、それはもう格別なおいしさで。疲労で澱んだ心は、今やきれいさっぱりと洗われていました。