●鉄火のマキちゃんとコマキちゃんと。
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『まさかナナシちゃんがこんなにできる子だったなんてね。見直したよ』
脳裏に住むマキちゃんが、わたしに微笑みかけます。
『可愛くて、一緒にいると癒されて、おまけにおいしい鉄火巻きまで作れるなんて……ナナシちゃん、アンタはまさに、アタイの求めていた最高の妹だ』
白磁のような腕 が、わたしを優しく、しかし決して離さないように包みこみ。
『これからもずっとアタイのそばにいてくれ。アタイも一生アンタにこの身を捧げるって誓うから……』
母性に満ち溢れる笑みで妹を抱く姿は、さながら女神のよう。
まばゆい黄金色の光が天から降り注ぎ、祝福の鐘の音が鳴り響く中。
わたしは女神の腕に抱かれながら、陶然と頬を染めて誓うのです。
『はい、マキお姉さま。わたしもあなたの妹として、お姉さまに全てを尽くすことを誓います……』
『お姉さまはよしとくれよ。アタイはそういう柄じゃないって』
『ふふ、照れているお姉さまも可愛らしいですわ』
『なに言ってんだい。アンタの方がずっと可愛いだろう』
『ふふふふふ』
『あはははは』
………………
…………
……
「──おーい、ナナシちゃん?」
「ふふふ、ふふふふふ……」
「ナナシちゃんってばーっ!」
「……ハッ!」
我に返って見ると、マキちゃんが目の前でひらひら手を振り、コマキちゃんがわたしの腕をぐいぐい引っ張っていました。
二人とも、ものすごく怪訝そうな目でわたしを見ています。
「すみません、ちょっと未来にトリップしていたもので〜」
「頭でも打ったかと思ったよ。いきなり上の空になったと思ったら、変な寝言をつぶやくから」
ホッと胸を撫で下ろすマキちゃん。
「いいから早く巻いてくれよー! あたいもう待ちきれないんだー!」
「そうですね、では巻きましょう〜」
コマキちゃんに急かされ、わたしはいよいよ仕上げに取りかかりました。
まきすに手をかけ、のりを巻いていきます。
ていねいに、ていねいに。
シャリの内側に収まっていくマグロ。
ある種の象徴めいた光景を目にした瞬間、ぶわっと感慨の波が押し寄せました。
銀シャリぴかぴか玉の肌
赤いマグロを抱きしめて
巻いてつくった鉄火巻──
いつかの日に耳にした歌の一節。
頭に流れる詞のイメージに、彼女の姿が重なります。
ぴかぴかな玉の肌。まさに彼女を意味する言葉。
その銀シャリのような腕に抱きしめてもらえるなら……わたしは赤いマグロになります。
「わたしはマグロ、わたしはマグロ〜」
「また妙な寝言を言いだしたよ」
マキちゃんの奇異の視線を受けつつ、のりをくるくると巻いて細巻きを作り。
最後に包丁で6等分して、すしゲタに盛りつけたら──
「できあがり〜」
パンパカパーン。
ナナシちゃん特製の鉄火巻きが、ついに完成です〜。
「やーっとできたぁ〜……」
コマキちゃんがぐったりとわたしの背中にへたりこみました。
とっくに作り終えてヒマを持て余していた彼女は、わたしのていねいな工程にさんざん焦らされまくったみたいです。
「すみません。ずいぶんお待たせしちゃいましたね〜」
わたしはコマキちゃんを労わりつつ、完成した一品に向き直ります。
すしゲタに並ぶ小さなおすし達を、ためつすがめつ眺め回して……ほう、と熱いため息をこぼしました。
なんて、すばらしい出来なんでしょう。
シャリのツヤといい、のりの巻き加減といい、切り口の美しさといい、その出来栄えは玄人にも劣らぬレベル。
これが、わたしの作った鉄火巻き。
爽やかな達成感が、胸をスーッと通り抜けていきます。
(……と、浮かれるのはまだ早いです)
わたしは顔を上げてマキちゃんに目を向けました。
どんな料理も、いちばん大事なのは味。
それを判定役の彼女に確かめてもらわないことには、決着はつきません。
(でも、優勝はもう決まりですよね〜♪)
ニンマリと口角を上げて確信します。
これだけのクオリティなら味も絶品級にちがいありません。きっとマキちゃんも一口食べた途端に感銘を受けるでしょう。瞳を黒曜石のように輝かせて舌鼓を打つ姿が目に浮かびます。
コマキちゃんには申し訳ないですが……絶対神ならぬ〝絶対妹〟の栄冠は、このナナシちゃんがいただいちゃいますね。
ふふふふふふ──
「二人とも、失格」
脳裏に住むマキちゃんが、わたしに微笑みかけます。
『可愛くて、一緒にいると癒されて、おまけにおいしい鉄火巻きまで作れるなんて……ナナシちゃん、アンタはまさに、アタイの求めていた最高の妹だ』
白磁のような
『これからもずっとアタイのそばにいてくれ。アタイも一生アンタにこの身を捧げるって誓うから……』
母性に満ち溢れる笑みで妹を抱く姿は、さながら女神のよう。
まばゆい黄金色の光が天から降り注ぎ、祝福の鐘の音が鳴り響く中。
わたしは女神の腕に抱かれながら、陶然と頬を染めて誓うのです。
『はい、マキお姉さま。わたしもあなたの妹として、お姉さまに全てを尽くすことを誓います……』
『お姉さまはよしとくれよ。アタイはそういう柄じゃないって』
『ふふ、照れているお姉さまも可愛らしいですわ』
『なに言ってんだい。アンタの方がずっと可愛いだろう』
『ふふふふふ』
『あはははは』
………………
…………
……
「──おーい、ナナシちゃん?」
「ふふふ、ふふふふふ……」
「ナナシちゃんってばーっ!」
「……ハッ!」
我に返って見ると、マキちゃんが目の前でひらひら手を振り、コマキちゃんがわたしの腕をぐいぐい引っ張っていました。
二人とも、ものすごく怪訝そうな目でわたしを見ています。
「すみません、ちょっと未来にトリップしていたもので〜」
「頭でも打ったかと思ったよ。いきなり上の空になったと思ったら、変な寝言をつぶやくから」
ホッと胸を撫で下ろすマキちゃん。
「いいから早く巻いてくれよー! あたいもう待ちきれないんだー!」
「そうですね、では巻きましょう〜」
コマキちゃんに急かされ、わたしはいよいよ仕上げに取りかかりました。
まきすに手をかけ、のりを巻いていきます。
ていねいに、ていねいに。
シャリの内側に収まっていくマグロ。
ある種の象徴めいた光景を目にした瞬間、ぶわっと感慨の波が押し寄せました。
銀シャリぴかぴか玉の肌
赤いマグロを抱きしめて
巻いてつくった鉄火巻──
いつかの日に耳にした歌の一節。
頭に流れる詞のイメージに、彼女の姿が重なります。
ぴかぴかな玉の肌。まさに彼女を意味する言葉。
その銀シャリのような腕に抱きしめてもらえるなら……わたしは赤いマグロになります。
「わたしはマグロ、わたしはマグロ〜」
「また妙な寝言を言いだしたよ」
マキちゃんの奇異の視線を受けつつ、のりをくるくると巻いて細巻きを作り。
最後に包丁で6等分して、すしゲタに盛りつけたら──
「できあがり〜」
パンパカパーン。
ナナシちゃん特製の鉄火巻きが、ついに完成です〜。
「やーっとできたぁ〜……」
コマキちゃんがぐったりとわたしの背中にへたりこみました。
とっくに作り終えてヒマを持て余していた彼女は、わたしのていねいな工程にさんざん焦らされまくったみたいです。
「すみません。ずいぶんお待たせしちゃいましたね〜」
わたしはコマキちゃんを労わりつつ、完成した一品に向き直ります。
すしゲタに並ぶ小さなおすし達を、ためつすがめつ眺め回して……ほう、と熱いため息をこぼしました。
なんて、すばらしい出来なんでしょう。
シャリのツヤといい、のりの巻き加減といい、切り口の美しさといい、その出来栄えは玄人にも劣らぬレベル。
これが、わたしの作った鉄火巻き。
爽やかな達成感が、胸をスーッと通り抜けていきます。
(……と、浮かれるのはまだ早いです)
わたしは顔を上げてマキちゃんに目を向けました。
どんな料理も、いちばん大事なのは味。
それを判定役の彼女に確かめてもらわないことには、決着はつきません。
(でも、優勝はもう決まりですよね〜♪)
ニンマリと口角を上げて確信します。
これだけのクオリティなら味も絶品級にちがいありません。きっとマキちゃんも一口食べた途端に感銘を受けるでしょう。瞳を黒曜石のように輝かせて舌鼓を打つ姿が目に浮かびます。
コマキちゃんには申し訳ないですが……絶対神ならぬ〝絶対妹〟の栄冠は、このナナシちゃんがいただいちゃいますね。
ふふふふふふ──
「二人とも、失格」
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