短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※実の兄妹設定です。
お父様は、とても恐い人。
数えるほどしかお会いしたことはないけれど、その鋭い眼光と目が合うたびに、私の足元は微かに震えその場から逃げ出したくなる衝動に駆られた。
お母様は、私になんて興味がない。
私がその場に居るのに、居ないように振舞うのはよくあること。下手に声を掛ければ、冷たい視線が降り注いでくる。
たまに会話をすれば、一言目には「あなたが男の子だったら…」二言目には「お兄様を見習いなさい」
母親が違うきょうだいは沢山居る。
その中でも、歳の近いきょうだいとはよく遊んでいたけれど、時々、私だけどこか遠い世界にいるような気がしていた。
血の繋がった、実のきょうだいは一人だけ。
シュナイゼルお兄様、ただ一人。
その人が、私の全てだった。
***
嫌な夢を見た。
どんな夢だったのかは、起きた瞬間に忘れてしまったようで思い出せない。でも、確かにそれは嫌な夢だった。
その証拠に、アリアの心臓は今でもどくどくと激しく波打ち、触れた額には汗ばんでしっとりとした前髪が張り付いていた。
ちらりと時計を見ると、深夜1時を過ぎている。
もう一度眠る気にもなれず、アリアはベッドからそっと抜け出して、窓へ近づく。
窓ガラスに額と右手をくっつけると、ひやりと冷たい。そこから徐々に冷たさが体全体に伝わり、火照った体をゆるやかに冷やしていった。
「もうすぐで、エリア11、か……」
窓から下を覗けば、どこまでも続く雲。昼間はふわふわして綿菓子のようだと思った雲も、今は闇に覆われ すべてを飲み込んでしまいそうな
不気味な恐ろしさがあった。
「ルルーシュ…、ナナリー…、クロヴィス兄様…」
あの地で散った三人のきょうだいの事を想うと、今でも胸が痛む。
歳の近いルルーシュとナナリーとは小さい頃によく遊んだし、クロヴィスは引っ込み思案なアリアにもいつも優しく話しかけてくれた。
みんなが笑っていたあの頃は、アリアはまだ何も知らない子供で、世界のすべてがまるで宝石のようにキラキラと輝いて見えていた。
それなのに、いつからだっただろうか。その世界に影が差し始めたのは。成長するにつれて、嫌でも知らされる。世界は決して美しいものではないことに。
周りの人々のやさしい笑顔は心の底から笑ってはいなかった。唇から紡ぎ出される美しい言葉は毒を持っていた。幼い頃、キラキラ輝いていると思っていたものはすべてガラス玉(ニセモノ)だった。
嫌なことを一つ思い出せば、そこから堰を切ったように嫌な思い出が次々と溢れ出して、息苦しくなる。
「どうして、お前なんか生んでしまったんだろうね」
「シュナイゼル様は完璧な方なのに、アリア様の方は……」
「アリア、ルルーシュとナナリーは日本で……」
「先程、クロヴィス殿下が……」
嫌な汗が、つうっ、と背筋を流れた。
鉛色の雲が、今にも手を伸ばして自分を飲み込んでしまいそうな気がした。
(やだ、怖い、こわい)
(……おにいさま!)
***
そして、アリアはシュナイゼルの私室の前に立っていた。
居ても立ってもいられなくなり、部屋から飛び出してここに来てしまったが、ふと冷静になって、その扉をノックするのをためらっていた。
(お兄様、眠っているかしら…。そうでなくても、こんな時間に…ご迷惑、よね)
ノックをしようか、するまいか、迷っている右手を左手でぎゅっと握る。
どうしよう。兄に嫌われるようなことはしたくない。でも、このままでは心が押し潰されてしまいそうだ。
(一度だけ……)
一度だけノックをして、反応が無かったら素直に部屋に戻ろう。そう決めて、コンコンと控えめに扉を叩いた。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、…反応はない。
やっぱり帰ろうと、扉に背を向けた瞬間、ガチャ…と扉が開く音がした。
振り向くと、そのアメジスト色の瞳と目が合った。
「やっぱり、お前だと思ったよ。私の可愛いアリア」
その、優しく細められた目と、優しく響く声に、堪らない気持ちになって、シュナイゼルに思いきり抱きついた。
シュナイゼルは飛び込んできたアリアの細い体をいとも簡単に受け止め、ぎゅうっと抱きついてくる妹の背をあやすように撫でる。
「怖い夢でも見たのかい?」
こくり、と小さく頷く。
「……一緒に、寝ては、だめ?」
恐る恐る顔を上げて聞いてみると、そこには少しだけ呆れたような微笑みがあった。
「仕様のない子だね、お前は」
そう言いつつも、その声は優しい。
シュナイゼルはアリアを軽々と抱き上げてベッドに運ぶ。そして、ふわふわの白いシーツの上に横たえて、胸の辺りまでブランケットを掛けて、自分もその横に腰掛ける。
不安そうに揺れる瞳と目が合ったので、その頭を優しく撫でてやる。
「…お兄様は、ずっと、アリアの傍に、居てくれる?」
「ああ。アリアがそう望むなら、私はずっとお前の傍に居るよ。だから、安心しておやすみ」
アリアのおでこにそっと唇を落として、シュナイゼルは綺麗に微笑んだ。
そのいつもと変わらない微笑みに安心する、そして、先程まで考えていた嫌なことを放り投げて、甘い声と優しい指先にすべてを委ねて、そっと目を閉じた。
(あなたさえいれば、他にはなにも要らない)
***
穏やかな寝息を立てて眠る妹に、シュナイゼルはそっと目を細めて微笑む。
愛おしい、と思う。でも、それは、コーネリアがユーフェミアに、ルルーシュがナナリーに向けるような純粋な愛情では無い。執着にも似たその歪んだ感情は、何と名をつければいいのだろう。
そのやわらかな蜂蜜色の髪に指を絡めて、唇をを落とす。
「お前はただ、私の傍に居ればいいんだよ、アリア」
初稿2009.11.4
お父様は、とても恐い人。
数えるほどしかお会いしたことはないけれど、その鋭い眼光と目が合うたびに、私の足元は微かに震えその場から逃げ出したくなる衝動に駆られた。
お母様は、私になんて興味がない。
私がその場に居るのに、居ないように振舞うのはよくあること。下手に声を掛ければ、冷たい視線が降り注いでくる。
たまに会話をすれば、一言目には「あなたが男の子だったら…」二言目には「お兄様を見習いなさい」
母親が違うきょうだいは沢山居る。
その中でも、歳の近いきょうだいとはよく遊んでいたけれど、時々、私だけどこか遠い世界にいるような気がしていた。
血の繋がった、実のきょうだいは一人だけ。
シュナイゼルお兄様、ただ一人。
その人が、私の全てだった。
***
嫌な夢を見た。
どんな夢だったのかは、起きた瞬間に忘れてしまったようで思い出せない。でも、確かにそれは嫌な夢だった。
その証拠に、アリアの心臓は今でもどくどくと激しく波打ち、触れた額には汗ばんでしっとりとした前髪が張り付いていた。
ちらりと時計を見ると、深夜1時を過ぎている。
もう一度眠る気にもなれず、アリアはベッドからそっと抜け出して、窓へ近づく。
窓ガラスに額と右手をくっつけると、ひやりと冷たい。そこから徐々に冷たさが体全体に伝わり、火照った体をゆるやかに冷やしていった。
「もうすぐで、エリア11、か……」
窓から下を覗けば、どこまでも続く雲。昼間はふわふわして綿菓子のようだと思った雲も、今は闇に覆われ すべてを飲み込んでしまいそうな
不気味な恐ろしさがあった。
「ルルーシュ…、ナナリー…、クロヴィス兄様…」
あの地で散った三人のきょうだいの事を想うと、今でも胸が痛む。
歳の近いルルーシュとナナリーとは小さい頃によく遊んだし、クロヴィスは引っ込み思案なアリアにもいつも優しく話しかけてくれた。
みんなが笑っていたあの頃は、アリアはまだ何も知らない子供で、世界のすべてがまるで宝石のようにキラキラと輝いて見えていた。
それなのに、いつからだっただろうか。その世界に影が差し始めたのは。成長するにつれて、嫌でも知らされる。世界は決して美しいものではないことに。
周りの人々のやさしい笑顔は心の底から笑ってはいなかった。唇から紡ぎ出される美しい言葉は毒を持っていた。幼い頃、キラキラ輝いていると思っていたものはすべてガラス玉(ニセモノ)だった。
嫌なことを一つ思い出せば、そこから堰を切ったように嫌な思い出が次々と溢れ出して、息苦しくなる。
「どうして、お前なんか生んでしまったんだろうね」
「シュナイゼル様は完璧な方なのに、アリア様の方は……」
「アリア、ルルーシュとナナリーは日本で……」
「先程、クロヴィス殿下が……」
嫌な汗が、つうっ、と背筋を流れた。
鉛色の雲が、今にも手を伸ばして自分を飲み込んでしまいそうな気がした。
(やだ、怖い、こわい)
(……おにいさま!)
***
そして、アリアはシュナイゼルの私室の前に立っていた。
居ても立ってもいられなくなり、部屋から飛び出してここに来てしまったが、ふと冷静になって、その扉をノックするのをためらっていた。
(お兄様、眠っているかしら…。そうでなくても、こんな時間に…ご迷惑、よね)
ノックをしようか、するまいか、迷っている右手を左手でぎゅっと握る。
どうしよう。兄に嫌われるようなことはしたくない。でも、このままでは心が押し潰されてしまいそうだ。
(一度だけ……)
一度だけノックをして、反応が無かったら素直に部屋に戻ろう。そう決めて、コンコンと控えめに扉を叩いた。
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、…反応はない。
やっぱり帰ろうと、扉に背を向けた瞬間、ガチャ…と扉が開く音がした。
振り向くと、そのアメジスト色の瞳と目が合った。
「やっぱり、お前だと思ったよ。私の可愛いアリア」
その、優しく細められた目と、優しく響く声に、堪らない気持ちになって、シュナイゼルに思いきり抱きついた。
シュナイゼルは飛び込んできたアリアの細い体をいとも簡単に受け止め、ぎゅうっと抱きついてくる妹の背をあやすように撫でる。
「怖い夢でも見たのかい?」
こくり、と小さく頷く。
「……一緒に、寝ては、だめ?」
恐る恐る顔を上げて聞いてみると、そこには少しだけ呆れたような微笑みがあった。
「仕様のない子だね、お前は」
そう言いつつも、その声は優しい。
シュナイゼルはアリアを軽々と抱き上げてベッドに運ぶ。そして、ふわふわの白いシーツの上に横たえて、胸の辺りまでブランケットを掛けて、自分もその横に腰掛ける。
不安そうに揺れる瞳と目が合ったので、その頭を優しく撫でてやる。
「…お兄様は、ずっと、アリアの傍に、居てくれる?」
「ああ。アリアがそう望むなら、私はずっとお前の傍に居るよ。だから、安心しておやすみ」
アリアのおでこにそっと唇を落として、シュナイゼルは綺麗に微笑んだ。
そのいつもと変わらない微笑みに安心する、そして、先程まで考えていた嫌なことを放り投げて、甘い声と優しい指先にすべてを委ねて、そっと目を閉じた。
(あなたさえいれば、他にはなにも要らない)
***
穏やかな寝息を立てて眠る妹に、シュナイゼルはそっと目を細めて微笑む。
愛おしい、と思う。でも、それは、コーネリアがユーフェミアに、ルルーシュがナナリーに向けるような純粋な愛情では無い。執着にも似たその歪んだ感情は、何と名をつければいいのだろう。
そのやわらかな蜂蜜色の髪に指を絡めて、唇をを落とす。
「お前はただ、私の傍に居ればいいんだよ、アリア」
初稿2009.11.4