短編
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休暇中の私とアレルヤは経済特区・日本の大きな公園に来ていた。
ぽかぽかと陽の当たるベンチに座り、私はぼんやりと道行く人を眺め、隣のアレルヤは本を読んでいる。
会話は少ないが、流れる空気は決して気まずいものではなく、心地のよいものだった。
休日の公園は、家族連れ、カップル、ジョギングや散歩を楽しむ人々で溢れていた。その誰もが幸せそうに満たされた顔をしていた。
普段の任務からは考えられないような、平和で幸せな空間。私はそんな光景を飽きることなく眺めていた。
ふと気づくと、数メートル先に老夫婦と頭に赤いリボンをつけた白い小さな犬が歩いていた。
あの犬は確か、アレルヤが好きな犬だったような……。と考えて、アレルヤの方を見ると、読書中だったはずの彼もその犬の存在に気づいたらしく
「あ、マルチーズ」
と嬉しそうに言った。
そのいつもより弾んだ声や綻んだ口元が本当に嬉しそうで、私まで何だか嬉しくなってしまう。
そして、思わず「かわいい」と口に出したら、アレルヤはこちらを向いて「うん、可愛いよね。マルチーズって」とにっこりと笑った。
本当は私が可愛いと言ったのはアレルヤのことだったのだが、そう言ったらきっとアレルヤは顔を真っ赤にして狼狽えるだろうから、そのことは口にせず「だよね」と笑った。
老夫婦は何やら楽しそうに話しながらゆっくりと歩いている。そしてその足下には飼い主を見つめながら、寄り添うようにチョコチョコと歩く犬。
その微笑ましい光景に、心が少しあたたかくなる。それは隣にいるアレルヤも同じだったようで、
「何だか、いいよね、ああいうのって」
「うん。素敵だよね」
そう言って、微笑んで見つめ合う。何気ない、たったそれだけのことで、どうしようもなく心が満たされるのを感じる。
なんて平和で幸せな瞬間なんだろう。今もどこかで戦争やテロが起きてるだなんて思えない。そして、それらに自分たちが関与していることすら忘れてしまいそうだった。
ふと、思い出す。ソレスタルビーイングに入る前のことを。平和が当たり前だと思ってぬくぬくと生きていた毎日。将来など漠然としていたけれど、それでも小さな夢があった。
それは当たり前のように訪れるだろうと思っていた、夢。
「私ね、ああいうのが、夢だったんだぁ」
「恋愛結婚して、子供は2人くらい生んで、子供が手を離れたら小さな犬を飼って、旦那さんと毎日一緒に散歩に行って……」
こんな取り留めのない話をしてアレルヤは呆れているんじゃないかと、ちらりとアレルヤの方を見ると、アレルヤは目を細めて聞いてくれていたので、私はそのまま続けた。
「縁側に座って、ぽかぽか日に当たりながら、お茶を飲んで……”ああ、何だかしあわせだなぁ”なんて思いながら過ごすの」
幸せな話をしているのに、何でこんなに胸が苦しいのだろう。何でこんなに泣きたくなってしまうんだろう。
戦火に身を置き、いつ死んでもおかしくない状況で、そんな歳まで生きられるとは到底思えないし、今まで沢山の命を奪ってきた自分たちにそんな幸せな未来が許される
はずもない。そんなことはよく分かっている。
でも、この一瞬の平和な時間で、叶うことのないしあわせな夢を語ることくらいは許して欲しい。
「それでね、その時は……アレルヤが隣で笑ってくれてたら、いいな」
私がそう言うと、アレルヤは一瞬驚いたような顔をして、そしてその後ほんの少し頬を赤く染めて、やさしく笑った。
初稿2009.11.4
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