幼馴染シリーズ(HE★VENS夢)
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「花音、そろそろ自分の家に帰ったらどうだ」
「うーん、もうちょっとー」
そう言って、私は、瑛一の部屋の、瑛一のベッドで、瑛一がコレクションしている小難しい音楽の本をゴロゴロしながら読んでいた。
瑛一は今は基本的にはHE★VENSの寮で暮らしているが、たまに一人で作業したい時は自宅に戻って来ることがある。
私はそれを分かっていながらも、あえて、瑛一が戻って来る時にこの部屋に来るのだ。
まあ、ここに来ても、ベッドでゴロゴロしながら静かに本を読んでいるだけなので、ほぼ空気のようなものだから、瑛一の邪魔など一切していない、はず。
先程から瑛一はパソコンとにらめっこしていて、何やらずっと考え込んでいるようだ。おおかたHE★VENSのメンバーのスケジュール管理だろう。瑛一は昔からスケジューリング大好き人間なのだ。
私はというと、文字ばかりの小難しい本を読んだせいか、だんだんと眠くなってきた。
分厚い本をそっと閉じて、フカフカの枕に顔を埋める。
瑛一がいつも使っている、お高いシャンプーとお高い香水の匂いが入り混じった、何だかとってもいい香りがする。
(なーんか、落ち着くんだよねぇ)
この部屋に瑛一が居て、程よい距離感で二人とも別々のことをしている感じが好きなのだ。
だから私は、瑛一がここに戻って来る時を狙って、わざわざ本を読みに来るという口実を作るのだ。別に、本を読むだけなら、私だってこの部屋の合鍵を持っていて、自由に出入りできるというのに。
私がこうやって安心して落ち着ける理由なんて、本当は自分でもうとっくに分かっている。
絶対に、本人には口が裂けても言う気はないが、瑛一は私が人類で最も信頼している人間だからだ。
以前はその融通の利かない実直さを疎ましく思う時もあったけど、でも、その、嘘のない真っ直ぐさに、今までどれだけ救われてきたことか。
瑛一が傍に居てくれるだけで、私はひどく安心して、子供みたいになってしまう。
「花音、寝るなよ」
私がうとうとしている気配を察したのか、瑛一が声をかけてくる。
「……うん。……ねない、よ」
そう呟いたそばから、私はもう半分以上眠りに落ちていた。
うつらうつら、夢と現実の狭間で、ひとが近づく気配がした。
「……まったく、 」
すこし呆れた声。でも、そこにはやさしい温度が感じられる。
大きな手で髪の毛を梳くように撫でられる。私の好きなそのいつもの香りが色濃くなって、しあわせな気持ちで眠りに落ちた。
★☆★
目を開けて、あっ!という声が出そうになった口を、自分の手で塞ぐ。目の前で瑛一が寝息も立てずに、静かに眠っていたからだ。
(なんで、隣りで寝てるの)
いや、よく考えたら、そもそも、このベッドの持ち主は瑛一なので、私が寝ている方がおかしいのだが。
そして、瑛一が私を抱え込むようにして眠っているため、ベッドから抜け出そうにも抜け出せなかった。
諦めて、目の前のその顔を見つめる。
眼鏡を掛けていてもイケメンだけど、掛けていない方がさらにイケメンだ。彫りが深くて、鼻筋がしゅっと通った端正な顔立ちはまるでどこかの彫刻のようだ。
(相変わらず、お顔がよろしいですこと)
もはや見飽きたぐらい見なれた顔だけど、何だか、ちょっと面白くなくて、その鼻筋をつうっと指先で撫でた。
ぴくりと長い睫毛が震えて、うっすらと目が開くと、焦点の定まっていない瞳で見つめられる。
「瑛一?」
「……どうした、花音。怖い夢でも見たのか?」
「……えっ?」
私が、きょとんとしていると、瑛一が撫でるように私の前髪をかき分けて、その丸出しになったおでこに、そっと柔らかくキスをした。
そして、そのまま私の頭を抱え込んだかと思ったら、静かな寝息が聞こえてきて、私はなんだか脱力してしまう。
(なに、寝ぼけてるのよ……)
瑛一こそ、一体どんな夢を見ていたのだろう。
それは、小さい頃にしてくれたおまじないじゃないか。
小さい頃、たまに鳳家に預けられていて、瑛一と瑛二と一緒に寝ていたのだが、私は自分の家じゃないせいか、怖い夢をよく見ていた。
起きてグズグズ泣く私に、瑛一は、
『こわい夢を見なくなるおまじないだ』
そう言って、おでこに小さくキスをしてくれて、その後は本当にぐっすりとよく眠れたのを覚えている。
(あの頃はまだ瑛一も可愛かったのにねぇ……)
骨張った大きな手。がっしりとした肩幅。ぶ厚い胸板。可愛い要素なんていっそ無い。
でも、その男らしさを意識したら、急にキスされたおでこが熱を帯びてきた。
もう二十歳も超えた大人の男女ふたりが一体何をしているのだろうか。幼い子供の戯れではない。かといって、恋人同士の戯れでもなくて。
瑛一が、私のことをどう思っているかなんて、もうとっくに気付いている。
私だって、自分の感情の変化には気付いている。
でも、私は、この居心地のいい幼馴染という関係が壊れてしまうのが、どうしても怖いのだ。
きっと瑛一は、私のその気持ちすら全部見透かしていて、受け入れてくれている。この人は、いつだって私には甘いのだ。昔っから。
(……ごめんね、ありがとう)
自分を抱え込むそのやさしい体温に、すこし胸がきゅっと痛くなってしまって、もう二度寝してしまおうと、私はもう一度目をつぶると、いつもの香りがやさしく眠りへと誘ってくれた。
★☆★
「……ただいま戻った」
「あっ、おはようさん。えーちゃんが朝帰りなんて珍しいなぁ。どないしたん?」
「花音と一緒に寝ていた」
「ぶっっっ!!!……はっ?!えっ?!なんやて?!!」
「あいつが俺のベッドで寝たまま起きなくてな……。花音の家まで運ぶのはさすがに面倒だったから、諦めてそのまま一緒に寝た」
「……へーー、そかそか。うん、なんや、ワイ、安心したわあ。
(えーちゃん、フビンやなぁ……) 」