Song bird (長編連載)
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「さーーーて!皆サンお揃いましたネ!!!」
バーン!と大きな音を鳴らして、シャイニング早乙女が登場する。あまりの強さで開けたせいか、ドアが廊下に吹っ飛んでしまっているが、もはや誰も驚かなかった。
そして、ズカズカと大股で部屋に入り、会議用のホワイトボードに何やらデカデカとボードいっぱいに書き込んでいく。
『QUARTET NIGHT』
「ハイ!Miss桜井〜!読んでみんしゃい!」
急に学校の授業のように当てられて、一瞬ビクっとなったが、「かるてっと、ないと?」と冷静に答える。
「ハイ!大正解〜!!YOUにはご褒美をあげちゃいマス!」
バサッとファイルが雛子の元に飛んできて、慌ててそれを受け取ると、そのA4ファイルの表紙にも、これまたデカデカと『QUARTET NIGHT』と太字のマジックペンで書いてあった。
「これが、YOU達4人が結成するユニットの名前デース!!」
「「「「はぁ???!!!」」」」
見事にピッタリと4人の声が重なった。
「今年はYOU達4人がユニットを組んで、クリスマスライブのオープニングを飾っちゃってくだサーイ!」
「そして、そのユニット曲を制作するのはYOUでーす!Miss桜井!!」
「えっ!えっ、えっ…??」
戸惑ってオロオロしている雛子に他の4人の視線が集中して、思わずこの場から逃げ去りたい衝動に駆られる。
「Miss桜井!そのファイルの1ページ目を読んでみんしゃい!」
また雛子が当てられる。
これが授業だったらだいぶ運が悪い日だろう。
「えっと…。
ステップ1、
ユニット曲を作ってクリスマスライブに出場。
ステップ2、
歌謡祭に出場してトップを狙っちゃいなよぅ……?」
「はい!OK!
YOU、ユニット曲を作って、そいでー、歌謡祭に出場して優勝狙っちゃいなYOー!!」
あまりに突然の話で雛子の頭はついて行けない。
ただ、コクコクと頷くだけだ。
「それにはー、まず、YOUはこの4人からパートナーを1人決めてもらいマース!」
「そいでー、そのパートナーの指導を受けながらユニット曲を作ってくだサーイ!クリスマスライブ成功後はそのパートナーと協力して歌謡祭の曲を作り優勝を目指してくだサーイ!」
「歌謡祭の優勝曲は即CD化される決まりなので、優勝が決まればYOUのデビューはその場で決定デース!」
「これはミーのうっかりうっかりでMiss桜井に迷惑を掛けた、せめてもの罪滅しデース!」
確かにこの方法なら、早乙女の言った通りの流れで行けば、半年という短期間でデビューが掴めることにはなる。
(でも、これって……)
「シャイニーさん、上手いこと言ってるけど、これってトントン拍子に進めばって事だよね?ちょっとでも躓いたらタイムアップになる可能性もあるんじゃない?」
雛子の不安に思っていた事を嶺二が言い当てる。
「その通りデース!どこかで失敗すれば、そこから挽回することはほぼ不可能!なーので、Miss桜井は死ぬ気で頑張ってくだサーイ!!!」
ハッハッハーー!!と、早乙女は高らかに笑いながら自分で壊した部屋の出入口から走り去って行った。
シン、と静寂が部屋を包み込む。
嵐が去った後の静けさだった。
情報量が多すぎて、雛子が頭の中で先程の早乙女の話を反覆してまとめていると、
「それで?ヒナコはどうするの?パートナー」
冷静な藍の言葉が部屋に響く。
「ちなみに、ボクは遠慮しておくよ。ヒナコの事が嫌いなわけじゃないけど、作曲家としての実績はほぼ0の君と組んでも勝率は無いに近いからね」
さっくりとなかなかの事をハッキリと言われる。
「俺も、ちびっこと組むのはごめんだ。お前のギターの腕は悪くねえと思ってるが、作曲に関しては信用してねぇ」
蘭丸にしては言葉を選んでいるようだが、こちらもバッサリだ。
「もちろん、俺もだ。ユニットも不本意だがもう決まった事は致し方ない。だが、パートナーだけは断る」
こちらは言葉を選ばずにざっくりだ。
「ねぇねぇ!ちょっとー!みんなして酷くない?!ぼくちんはこーんな可愛い女の子がパートナーになってくれるなんて嬉しいけどなー!」
嶺二だけはニコニコでそう答えたが、雛子にはそれがただの慰めで言ってくれているようにしか思えなかった。
「もーう!シャイニーったら、一番肝心な所を放っといて帰るんだからー!」
「まったく、あのオッサン、騒ぐだけ騒いで扉壊して帰りやがって……」
何となく気まずい雰囲気の中、だいぶ見晴らしの良くなった出入口から、林檎と龍也がひょこっと入って来る。
「実は、ひなちゃんがパートナー選びに困るだろうと思って、こんなの用意してました〜!」
先程、早乙女がでかでか書いていたホワイトボードを反対側にくるりと回すと、そこには迷路のような線が沢山書かれていた。
「これって……あみだくじ??」
「れいちゃん大正解〜!最初っからシャイニーが用意してたのよ〜!なのに、さっさと帰っちゃうんだからぁ」
「とりあえず、4人共、さっさと下に名前書け」
「え〜!書く書く〜!」
「ったく、めんどくせぇ」
「ハイハイ、書けばいいんでしょ」
「まったく、バカバカしい」
それぞれ口にしながら、名前を書いていく。
「はい!じゃあ、ひなちゃん選んでね〜♪」
これって普通は下の結果の所は隠すんじゃ…。と思いつつ、ホワイトボードを見ると線がありすぎて、ぱっと見ただけではどこがどう繋がっているのか解読できない。
もうこれは運を天に委ねるしかない。そもそも誰がパートナーになっても、とにかく頑張るという選択肢しか雛子にはない。
「じゃあ、ここで……」
雛子が名前を書くと、龍也が赤ペンでその線を辿っていくが、あまりの複雑な線に何度か早乙女にキレて、結局結果に辿り着くまでに10分ほどかかった。
「お、なんだ、嶺二か」
「えっ?やった〜!よろしくね!ひなちゃん☆」
嶺二から差し出された手を、雛子は戸惑いながら握る。
あみだは簡単ではなかったが、果たしてこんなにあっさりと簡単にパートナーが決まっていいのだろうか。
「だったら、最初からレイジでよかったよね」
藍がやや白けた声で言うと、蘭丸もカミュも呆れたように同意した。
「とーにかく!これで決定ってことでね!
あっ、そうだ!言い忘れてたけど、あと2時間後に〇〇ホテルでユニット結成の記者会見だからね〜!控室に衣装も用意してあるから早く行って準備してね♪」
「「「「はぁ?2時間後??!!」」」」
これが一番重要なことじゃないのか!各々口を揃えて言う。移動して着替えてヘアメイクもしたら2時間だとギリギリである。
慌てて4人が部屋から出ていく、最後に嶺二だけ振り返って「パートナーの件はまた話そうね!ひなちゃん!」ウインクをひとつ飛ばして走り去って行った。
4人が出て行った静かな部屋で、雛子はふぅっと小さく溜め息をついた。ポンポンと龍也が軽く雛子の肩を叩く。
「まあ、大変だとは思うが、桜井ならできると思ってるぞ。……嶺二もな、うん、まあ、悪いやつじゃないしな……」
と言いつつも、少し歯切れの悪い言い方だ。
「ワタシも応援してるからね!ひなちゃん!」
林檎もポンポンと雛子の背中を叩き、明るく笑った。
「ありがとうございます……頑張ります」
学園を卒業しても、こうやって力になってくれる先生達を心底ありがたいと雛子は思った。
◆◇◆
その夜、今日1日で起こった様々な出来事に疲れ果てて雛子はベッドに潜り込んだ。
あの後、テレビでQUARTET NIGHT結成の記者会見を見た。
ライトに照らされキラキラと輝く彼らの曲を自分が作るなんて、いまだに信じられない気持ちだ。
『いつかまた嶺二くんと一緒にお仕事したいです!』
幼い日の自分が言った言葉を今でも覚えている。
もう、二度と叶うことはないと諦めた夢。
まさか、こんな形で叶うなんて思いもよらなかった。
でも、夢が叶った高揚感とは程遠い。不安感と少しの嬉しさが入り混じった不思議な感覚だった。
キラキラと輝く宝石のような思い出達を噛みしめて、そっと目を閉じて眠りについた。