Song bird (長編連載)
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クリスマスライブの後に、若干の気まずさを残したまま嶺二と別れたが、その数日後に相変わらず絵文字多めのメールで初詣のお誘いが来たので、雛子はホッとしていた。
音也とトキヤと春歌も誘っているという事だったので、速攻で春歌の住む隣の部屋に突撃して「はるちゃんも行くよね?!ねっ?」と確認をした。
もし、他の3人が来られなかった場合、嶺二と2人きりということになるのが、何となく気恥ずかしかったのだ。
そして、当日。
「ねぇ、はるちゃん、変じゃないかな?」
「ひなちゃん、とっても可愛いですよ!」
春歌が実家で振袖を着てくるという事だったので、雛子もスタイリストである叔父に頼み込んで、衣装の中から振袖を貸してもらい、着付けとヘアメイクまでしてもらった。
春歌はパステルピンクを基調とした振袖で、髪の毛は片側だけ耳に掛けて花飾りを挿している。いつも通りの可愛らしい雰囲気だ。
そして、雛子は深緑色の振袖で、長い髪の毛は編み下ろしにしてパールの髪飾りを散りばめている。いつもよりも大人っぽい雰囲気になっていた。
雛子は先程から「この色似合わないかな?」とか「はるちゃんみたいな可愛い系の方がよかったかなぁ」とか、ずっとソワソワしていて、春歌はその微笑ましさにニコニコしていた。
「大丈夫ですよ!すごく似合ってます!寿先輩も喜ぶと思いますよ」
嶺二の名前を出すと、雛子の頬がぽわんとピンク色に染まって「……そう、かな」と照れたように俯いた。
(ひなちゃん、可愛すぎます……!!)
◆◇◆
「おっまたせ〜!………ってぇ!!着物!!どうしたの?!二人とも、そんな素敵な格好しちゃってさ!」
待ち合わせ場所に来た嶺二は、2人の華やかな姿を見るなり、明らかにテンションが上がった。
「二人ともすっごく似合ってる!可愛いよ〜!
新年早々ありがたいもの見せてもらっちゃったよ〜!」
「……寿さん、新年早々にうるさいですよ」
「あっちの方までれいちゃんの声響いてたよ〜!」
テンションMAXの嶺二の後ろからトキヤと音也が続けてやって来る。
「だって、この二人の姿を見てよ?!可愛いすぎると思わない?!」
「うんっ!すっごく似合ってて可愛いよ!」
「……二人とも、よくお似合いです」
「だよねー!だよねー!……あっ、肝心な事言い忘れてた…。
明けましておめでとうございます!!」
嶺二のはしゃぎっぷりに、新年の挨拶をすっかり忘れていたことに、あとの4人もはっと気付いた。
「「明けましておめでとうございます!」」
4人の声がピッタリ重なり、「仲良しだねぇ〜!」嶺二が笑い、4人もまた顔を見合わせて笑った。
◆◇◆
神社の鳥居をくぐると、長い石段の階段が続いていた。
音也は元気いっぱいに階段を駆け上がって、一度上まで到着してまた戻って来た。
「音也、はしゃぎすぎですよ」
トキヤが軽くたしなめる。
「え〜!何か、長い階段見るとテンション上がらない?」
そう音也が言うと、春歌がくすくすと楽しそうに笑った。
(これは、なかなか……かも)
楽しそうに階段を上っていく3人を目で追いながら、雛子は、よし!と心の中で気合を入れる。
足が悪い雛子にとって安定感のない石段は苦手だった。しかも、足元はブーツにしたが、慣れない着物姿でいつもより歩きづらい。
幸いにも階段の真ん中に手すりがあったので、雛子はそっと手を掛けて足を踏み出そうすると、反対側から手が差し出された。
「お手をどうぞ?マイガール」
「あ……、ありがとうございます」
普段だったら躊躇していたかもしれないが、さすがにこの石段を前にして、素直に嶺二の手を取った。
「ひなちゃん、階段きつくない?大丈夫?」
「ゆっくりだったら大丈夫です」
「そっかそっか。じゃあ、ぼくと一緒にゆっくり上ろうね」
だいぶ階段を上って行った3人に、嶺二は大きな声で「みんな〜!ぼく、ひなちゃんとのんびり行くから、先に行って屋台でも見てて〜!」と声を掛ける。
トキヤがはっとして階段を下りかけたが、音也がそれを止めて両手で大きく丸を作り「分かった〜!」と元気に返事をした。
「嶺二さん、すみません。気を使わせてしまって……」
「なんでー?全っ然だよ!ぼく、ひなちゃんと2人っきりになれた方が嬉しいし♪」
「……え?」
思わず嶺二の方を見ると、いつも通りニコニコと笑っている。
その言葉に、そこまでの意味はないはずだ。自分が過敏に受け取りすぎなだけなのだと、しっかりと自分に言い聞かせる。ここで変に勘違いをしてしまってはいけない。
一段一段、嶺二に手を取られて、ゆっくりと階段を上る。
「ひなちゃん、着物すっごく似合ってるよ。いつもと雰囲気違って大人っぽくて、ぼくちんドキドキしちゃった!」
「本当ですか……?変、じゃないですか?」
「なんで?ひなちゃん、いつもは可愛い感じだけど、今日はすごく綺麗だよ。
…………ねぇ、なんで、その色にしたの?」
いたずらっぽく、からかうように囁かれて、雛子の頬はじわりと赤く染まる。嶺二の手を握る自分の手が、やけに熱を帯びているように感じて恥ずかしくなる。
数ある振袖の中から、真っ先にその色が目に留まった。
普段だったら選ばないその緑色は嶺二のメンバーカラーだ。
髪の毛もメイクも少し大人っぽくしてもらったのは、嶺二の隣りに並んだ時に、それに見合うようになりたかったからだ。
今まではそんな風に思ったことなかったのに、どうしてあの時に、そんな事を思ってしまったか、自分でも不思議だった。
「……ぼく色に染まってくれてるって、思っていいのかな?」
耳元で甘い声で囁かれて、雛子はビクリと肩を揺らす。
「もうっ、嶺二さん!からかわないで下さい……」
「あまりされると階段から落ちてしまいそうです……」そう小声で付け加えると、嶺二は「だいじょーぶ!だいじょーぶ!その時はぼくが下敷きになるから!」と、カラカラと楽しそうに笑った。
◆◇◆
「何かさ〜、あの2人、いい感じじゃない?」
階段を上りきって下を見ると、嶺二が雛子の手を取ってゆっくりと2人で階段を上っている。
会話の内容は聞こえないが、その様子は仲睦まじいように見える。
ですよね!と、春歌は声を大にして言おうとしたら、トキヤのこめかみがピクリと不服そうに動いたのを見て、その言葉を引っ込めた。
そういえば、トキヤは雛子と子役時代に親交があり、どうやらその時に淡い恋心を抱いていたようなのだ。今はどうなのか分からないが、少なくとも学生時代から何かと雛子のことを気に掛けているのは確かだ。
「音也、アイドルは恋愛禁止ですよ」
「えー?でも、れいちゃんと桜井、お似合いだと思うんだけどな〜!」
うんうんうん。と声には出さず、春歌は大きく頷いた。
雛子本人はまだ気付いてなさそうなので、春歌からも言っていないが、クリスマスライブの後から少し変化があったように思う。
何気に嶺二のことを聞くと、ぽわっと頬が紅潮したり、少しうろたえたり、今まではそんな反応をしていなかった。
恋愛に疎い春歌でも、親友の心境の変化ならよく分かる。
(私はひなちゃんを応援してますからね……!)
嶺二の横で嬉しそうに笑う親友に、心の中でエールを送った。