Song bird (長編連載)
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「じゃあ、また来年だね。歌謡祭、頑張ろうね。
…………よいお年を」
寮の前で車を止める。
今年はもうひなちゃんと会う予定はこれで最後だった。
名残惜しい気持ちがあったけど、どうしてだか、いつもみたいに調子の良い言葉が出てこなくて、ありきたりな年末の締めの挨拶をしてしまった。
「……また、来年も宜しくお願いします。
嶺二さんも、よいお年をお迎えくださいね」
まだ少し赤い目をして彼女は微笑んで、何度か振り返って手を振って帰っていった。
すこし恥ずかしそうに小さく手を振る姿に自然と口元が綻んだ。
その後ろ姿が見えなくなって、はぁ、と、大きくため息を吐いて、ハンドルに突っ伏す。
本当はもっと楽しい気分で別れたかった。
帰り道の車内はお互いに何となく気まずくて、ほとんど喋っていない。
はらりと、音もなくこぼれた大粒の涙を思い出す。
その透明なきれいな涙は、愛音と自分のために流してくれた涙だった。
『愛音くんはそんなこと思う人じゃないですよね!』
あの子の言ったことは本当だ。
愛音は、誰かのせいにしたり、誰かを恨むような人間ではなかった。だからこそ、自分で全てを抱え込んでダメになってしまったのだ。
それを知っていたからこそ、ぼくは自分で自分を赦せなかった。
『だって、愛音くん、嶺二くんの話をする時はいつも優しい顔してた…。ひとつひとつを宝物みたいに大事に話をしてくれてたんです……』
あの子から聞く、愛音の話は、いつだって自分達のことを話している姿だ。一体いつもどんなことを話していたのだろう。
一緒に居る時はそれが当たり前すぎて、そんなに大事に想ってくれていたことなんて分からなかった。
その事をもっと早く知っていたら、なにか違ったのだろうか。
『……だから…だから、誰も、なにも、悪くなんてない、です……ぜったいに』
本当に?本当に、そう思ってもいいのだろうか。
あの子が精一杯自分のことを慰めようとしてくれて言ってくれてるだけじゃないか。
でも、それでも、
ほんのすこしだけでも、赦しても、いいのだろうか。
ほんの短い距離で繋いだ手の温もりを思い出す。
握った小さな手が、きゅっと握り返してくれた時に、この手をずっと離したくないと思ってしまった。
もしも、本当に、すこしだけでも赦されるとしたら、
この気持ちに、名前をつけることをどうか許して欲しい。