Song bird (長編連載)
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※過去の話
※ヒロインしか出ません
そのミュージカルはバレエの才能を持った少女がプリマドンナを目指すことから始まる話だった。
少女は天才的な才能があったが、努力も惜しまなかった。
毎日毎日人よりも沢山練習を重ねて、ある日とうとうソリストとして舞台に上がることが決まった。
だが、前日の練習中に怪我をしてしまう。怪我は数ヶ月で治ったがもう以前のようには踊れなくなってしまう。
少女は絶望の中、強く強く願う。以前のように軽やかに優雅に自由に踊れるようにと。
そんな少女の前に悪魔が現れる。
お前の魂と引き換えに願いを叶えてやろう。と。
数年後、少女は美しい女性に成長し、プリマドンナとして初めて舞台に立ち大成功を収めた。
そして、幕が下りた舞台の上で女性は静かに息を引き取っていた。だが、その顔は何とも幸せそうな顔をしていた。
その役の難しさに、雛子はずっと悩みながら芝居していたが、今ならその気持ちが容易に分かる。
ほの暗い病室のベッドの上。
前日に医者から“もう以前のように動くことはできない”と言われた。ダンスはおろか、日常生活も難しいかもしれないとの事だった。事故から1年近く、何度か手術をしてリハビリを重ねてどうにか自力で歩けるようになった時だった。今のこの状態ですら充分奇跡的らしい。
多分、母親も祖父母も医者も最初から分かっていたのだ。でも、雛子が復帰を目指して、何度も手術の痛みに耐え、リハビリも必死に頑張る姿を見て言えなかったのだろう。
(今ならあの子の気持ちすごく分かる)
ずっと、理解できなかった。その役の気持ちが。
命を捨ててまで夢を掴もうとするその執着が。
いつもはその役に“共感”して芝居に入り込むのだが、この役には共感できなくて随分と悩んだのだ。
でも、今ここで悪魔が出てきて命と引き換えに足を戻してやると言われたら迷わず“はい”と言うだろう。
足が治って、この気持ちを抱えたまま、あの少女の役を演じたらどれだけ素晴らしい舞台になることか。
それこそ、舞台の上で死ねるなら本望だ。
「悪魔でもなんでもいいから出てきてよ……」
ここは現実で、悪魔も神も出てくることはない。
雛子の言葉は静かな病室にむなしく消えて行った。
※ヒロインしか出ません
そのミュージカルはバレエの才能を持った少女がプリマドンナを目指すことから始まる話だった。
少女は天才的な才能があったが、努力も惜しまなかった。
毎日毎日人よりも沢山練習を重ねて、ある日とうとうソリストとして舞台に上がることが決まった。
だが、前日の練習中に怪我をしてしまう。怪我は数ヶ月で治ったがもう以前のようには踊れなくなってしまう。
少女は絶望の中、強く強く願う。以前のように軽やかに優雅に自由に踊れるようにと。
そんな少女の前に悪魔が現れる。
お前の魂と引き換えに願いを叶えてやろう。と。
数年後、少女は美しい女性に成長し、プリマドンナとして初めて舞台に立ち大成功を収めた。
そして、幕が下りた舞台の上で女性は静かに息を引き取っていた。だが、その顔は何とも幸せそうな顔をしていた。
その役の難しさに、雛子はずっと悩みながら芝居していたが、今ならその気持ちが容易に分かる。
ほの暗い病室のベッドの上。
前日に医者から“もう以前のように動くことはできない”と言われた。ダンスはおろか、日常生活も難しいかもしれないとの事だった。事故から1年近く、何度か手術をしてリハビリを重ねてどうにか自力で歩けるようになった時だった。今のこの状態ですら充分奇跡的らしい。
多分、母親も祖父母も医者も最初から分かっていたのだ。でも、雛子が復帰を目指して、何度も手術の痛みに耐え、リハビリも必死に頑張る姿を見て言えなかったのだろう。
(今ならあの子の気持ちすごく分かる)
ずっと、理解できなかった。その役の気持ちが。
命を捨ててまで夢を掴もうとするその執着が。
いつもはその役に“共感”して芝居に入り込むのだが、この役には共感できなくて随分と悩んだのだ。
でも、今ここで悪魔が出てきて命と引き換えに足を戻してやると言われたら迷わず“はい”と言うだろう。
足が治って、この気持ちを抱えたまま、あの少女の役を演じたらどれだけ素晴らしい舞台になることか。
それこそ、舞台の上で死ねるなら本望だ。
「悪魔でもなんでもいいから出てきてよ……」
ここは現実で、悪魔も神も出てくることはない。
雛子の言葉は静かな病室にむなしく消えて行った。