Song bird (長編連載)
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※10話のヒロイン視点
何とか楽屋に戻って来て、倒れ込むようにソファに座る。
現場の喧騒から離れたおかげで、だいぶ動悸は治まってきた。持って来ていた水のペットボトルをバッグから出そうとして、自分の手が震えていることにその時初めて気付く。未開封の蓋を震える手で開けることができない。
こんなこともできないなんて。
あまりの情けなさに泣きたいような笑いたいような気分だ。
蓋を開けることを諦めて、震える手でまだほんの少し冷たさが残るペットボトルを握る。
指先も足先もやけに冷たいのに、額からは妙な汗がポトリと落ちた。
目を閉じると、思い出す。
突然襲いかかってきた黒くて大きな影。それが何かも分からないまま、大きな金属音と共に全身に走った衝撃。燃えるように痛む右足。薄れていく意識の中で(生放送、出れるかな…)なんて思っていたこと。
「ひなちゃん?」
暗いところに意識が持って行かれそうになったその時に、自分の名前を呼ぶその声にハッとした。
楽屋にそっと入って来たその顔を見て、安心する気持ちと、こんな情けない姿を見られたくないという気持ちで、どんな顔をすればいいのか分からない。
「…………れいじ、さん」
その名前を呼べば、何とも情けない途方に暮れた子供みたいな声が出てきた。
7年経って、子供だった自分が大人になって、やっと嶺二の隣に並べるんじゃないかと思っていたのに、これじゃあ昔のほうがまだ精神的に大人だった気がする。
明るくて元気で自信に満ちた天使ことりは自分の中にはもう居ない。あの日に、消えてしまったのだ。
少し戸惑いながらも、嶺二の背中を撫でる手つきは子供をあやすみたいに優しくて、泣いて縋りつきたくなってしまう気持ちを、ささやかなプライドで何とか抑える。
包み込む大きな手の温かさで、だんだんと指先の冷たさが消えていく。いつの間にか動悸も完全に収まっていた。
(……また、嶺二くんに助けられた)
最初に共演した日を思い出す。あの時もガチガチに緊張した自分を助けてくれたのは嶺二だった。
何とかその恩に報いたい。今の頼りない自分が彼にできることはたったひとつだけ。曲を作ることだ。
(この人を、もっと輝かせる曲を……)
決意をぎゅっと胸にしまい込む。
泣きたいような気持ちはもう晴れていた。
何とか楽屋に戻って来て、倒れ込むようにソファに座る。
現場の喧騒から離れたおかげで、だいぶ動悸は治まってきた。持って来ていた水のペットボトルをバッグから出そうとして、自分の手が震えていることにその時初めて気付く。未開封の蓋を震える手で開けることができない。
こんなこともできないなんて。
あまりの情けなさに泣きたいような笑いたいような気分だ。
蓋を開けることを諦めて、震える手でまだほんの少し冷たさが残るペットボトルを握る。
指先も足先もやけに冷たいのに、額からは妙な汗がポトリと落ちた。
目を閉じると、思い出す。
突然襲いかかってきた黒くて大きな影。それが何かも分からないまま、大きな金属音と共に全身に走った衝撃。燃えるように痛む右足。薄れていく意識の中で(生放送、出れるかな…)なんて思っていたこと。
「ひなちゃん?」
暗いところに意識が持って行かれそうになったその時に、自分の名前を呼ぶその声にハッとした。
楽屋にそっと入って来たその顔を見て、安心する気持ちと、こんな情けない姿を見られたくないという気持ちで、どんな顔をすればいいのか分からない。
「…………れいじ、さん」
その名前を呼べば、何とも情けない途方に暮れた子供みたいな声が出てきた。
7年経って、子供だった自分が大人になって、やっと嶺二の隣に並べるんじゃないかと思っていたのに、これじゃあ昔のほうがまだ精神的に大人だった気がする。
明るくて元気で自信に満ちた天使ことりは自分の中にはもう居ない。あの日に、消えてしまったのだ。
少し戸惑いながらも、嶺二の背中を撫でる手つきは子供をあやすみたいに優しくて、泣いて縋りつきたくなってしまう気持ちを、ささやかなプライドで何とか抑える。
包み込む大きな手の温かさで、だんだんと指先の冷たさが消えていく。いつの間にか動悸も完全に収まっていた。
(……また、嶺二くんに助けられた)
最初に共演した日を思い出す。あの時もガチガチに緊張した自分を助けてくれたのは嶺二だった。
何とかその恩に報いたい。今の頼りない自分が彼にできることはたったひとつだけ。曲を作ることだ。
(この人を、もっと輝かせる曲を……)
決意をぎゅっと胸にしまい込む。
泣きたいような気持ちはもう晴れていた。