Song bird (長編連載)
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※春歌ちゃん友情夢です
「鼻血、とまった?」
そう言って、鼻血を出している本人よりも不安そうな顔で覗き込むその子の瞳に、なぜか春歌は既視感を覚えた。
今日は早乙女学園に入学して初めてのクラス合同のレクリエーションだった。
女子は体育館でバレーで、運動が苦手なりに春歌も頑張っていたのだが、相手のボールを受けようとして手が滑って顔面でボールを受けてしまったのである。
そこまで痛いとは思わなかったのだが、当たりどころが悪かったのか、鼻からつうっと血が出てきて、春歌本人よりも周りが大慌てで、見学していた子が付き添って保健室に連れて来てくれたのである。
(この子、前にどこかで見たことあるような……)
もちろん、入学してから何度か見たことはある。
体育の授業はSクラスとAクラスの合同で、いつも隅っこでちょこんと座って見学しているその子がSクラスの作曲家コースの子だということは周りの話から知った。
でも、なぜか、それよりももっと前に見たことがあるような気がするのだ。
「鼻、折れたりしてないよね……?」
ソファの背に頭を預けるようにして上を向いて、鼻にガーゼを当てている春歌の顔に、その子の顔が近付いてきて、鼻をそっと触られた。
「あっ!えっと、だ、大丈夫です!くっついてます!」
妙にドギマギしてしまって慌ててそう言うと、その子は一瞬きょとんとして、「よかった」と、安心したように笑った。
(か、可愛いらしいです……!)
今までは遠くからしかその子を見たことがなくて、眼鏡の子だという印象しかなかったが、こうやって近くで見ると、アイドルコースにいてもおかしくはないような容姿だった。
そして、その至近距離で、ふと気付いた。眉毛の少し上によく見ないと分からないくらいの小さなホクロがあることに。
『ことりちゃんって、こんな所にホクロがあるんだ!』
幼い日の自分の言葉が、瞬間的に蘇る。
それは、何度も何度も大好きなそのシーンを巻き戻しては再生して見ていて気付いた。自分だけの発見だと、その時は思っていた。
(えっ、…………ことり、ちゃん?!)
そう思って、改めて見ると、もう天使ことりにしか見えなかった。
HAYATOのファンになるよりも、もっと幼い頃。たまたま見ていた教育番組でピアノで弾き語りをする姿に惹き込まれて大好きになった、自分と同じくらいの年の子役の女の子。
その頃は田舎の祖母の家で暮らしていたため、ミュージカルの舞台に行くことができなくて、雑誌やテレビの特集で幼いなりに情報をかき集めた。
2年ほど経って、またテレビで見かけるようになって、とにかく嬉しかったことを覚えている。
食い入るように見つめる春歌の視線を訝しげに思ったのか、首を少し傾げてこちらを見るその子を目が合って、ドキリと心臓が跳ねる。
(やっぱり、ことりちゃんだ!!)
確信してしまうと、ますますドキドキが止まらなくて、だんだん顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。
「えっ、大丈夫……?熱でもあるのかな?」
赤くなっていく春歌を心配したのか、そっと春歌のおでこに手を当てて顔を覗き込む。
「……ひゃあっ!」
思わず変な悲鳴をあげてしまって、その手が慌てたように離れる。
「あっ、ごめんね!触られるのイヤだったよね……」
「いえ!!そんなことは、断じてありませんっっ!
……むしろ、嬉しすぎるというか、なんというか……。
あっ、ごめんなさい!変なことを言ってしまって……」
もはや、ちょっとしたパニック状態で、自分でなにを言っているのか分からなくなってきた。
目の前に、憧れの天使ことりがいて、自分の心配をしてくれていて、鼻やおでこに触れた手の温度があたたかくて、やさしくて、
急に、ことりが事故にあったというニュースを見た時のことを思い出した。
テレビを見ても、雑誌を読んでも、どれだけの怪我なのかも分からなくて、そしていつしか静かにその話題は消えていった。その後、所属していた劇団からことりの引退の発表だけがされて、幼い春歌はおおいに泣いたのだった。
「……っ!ことりちゃんが、元気でいてくれてよかったですっ……」
そのことを思い出すと、胸が詰まって、じんわりと涙が滲んできて、春歌は思わずそう口に出していた。
「えっ、……気付いて、たの?」
「ついさっき気付きました…。あっ!でも、もちろん!誰にも言いません!!」
「……あ、…ありがとう」
もう完全に鼻血は止まっていたので、鼻に当てていたガーゼで涙を拭おうとしたら、慌てたようにティッシュを差し出されてそれを使う。
すん、と小さく鼻をすすると、少しだけ鉄の味がした。
「あの、……名前、聞いてもいいかな?私、本名は桜井雛子って言うの」
「本名も可愛いお名前なんですね!私は七海春歌と申します!」
「……今さら、なんか、ちょっとおかしいんだけど、仲良くしてもらえたら嬉しいな……」
「……!!そんな!こっちからお願いしたいです!宜しくお願いします!」
「……うん。よろしくね」
そう言って、雛子は、はにかんだように微笑んで、右手を差し出してきた。春歌はその手を自分の両手でぎゅっと握って、満面の笑顔で返事をした。
そして、その後、体育館に戻った二人を、バレーの白熱した試合ですっかり意気投合した、春歌のルームメイトの友千香と雛子のパートナーが仲良く肩を組みながら出迎えてくれたのだった。
「鼻血、とまった?」
そう言って、鼻血を出している本人よりも不安そうな顔で覗き込むその子の瞳に、なぜか春歌は既視感を覚えた。
今日は早乙女学園に入学して初めてのクラス合同のレクリエーションだった。
女子は体育館でバレーで、運動が苦手なりに春歌も頑張っていたのだが、相手のボールを受けようとして手が滑って顔面でボールを受けてしまったのである。
そこまで痛いとは思わなかったのだが、当たりどころが悪かったのか、鼻からつうっと血が出てきて、春歌本人よりも周りが大慌てで、見学していた子が付き添って保健室に連れて来てくれたのである。
(この子、前にどこかで見たことあるような……)
もちろん、入学してから何度か見たことはある。
体育の授業はSクラスとAクラスの合同で、いつも隅っこでちょこんと座って見学しているその子がSクラスの作曲家コースの子だということは周りの話から知った。
でも、なぜか、それよりももっと前に見たことがあるような気がするのだ。
「鼻、折れたりしてないよね……?」
ソファの背に頭を預けるようにして上を向いて、鼻にガーゼを当てている春歌の顔に、その子の顔が近付いてきて、鼻をそっと触られた。
「あっ!えっと、だ、大丈夫です!くっついてます!」
妙にドギマギしてしまって慌ててそう言うと、その子は一瞬きょとんとして、「よかった」と、安心したように笑った。
(か、可愛いらしいです……!)
今までは遠くからしかその子を見たことがなくて、眼鏡の子だという印象しかなかったが、こうやって近くで見ると、アイドルコースにいてもおかしくはないような容姿だった。
そして、その至近距離で、ふと気付いた。眉毛の少し上によく見ないと分からないくらいの小さなホクロがあることに。
『ことりちゃんって、こんな所にホクロがあるんだ!』
幼い日の自分の言葉が、瞬間的に蘇る。
それは、何度も何度も大好きなそのシーンを巻き戻しては再生して見ていて気付いた。自分だけの発見だと、その時は思っていた。
(えっ、…………ことり、ちゃん?!)
そう思って、改めて見ると、もう天使ことりにしか見えなかった。
HAYATOのファンになるよりも、もっと幼い頃。たまたま見ていた教育番組でピアノで弾き語りをする姿に惹き込まれて大好きになった、自分と同じくらいの年の子役の女の子。
その頃は田舎の祖母の家で暮らしていたため、ミュージカルの舞台に行くことができなくて、雑誌やテレビの特集で幼いなりに情報をかき集めた。
2年ほど経って、またテレビで見かけるようになって、とにかく嬉しかったことを覚えている。
食い入るように見つめる春歌の視線を訝しげに思ったのか、首を少し傾げてこちらを見るその子を目が合って、ドキリと心臓が跳ねる。
(やっぱり、ことりちゃんだ!!)
確信してしまうと、ますますドキドキが止まらなくて、だんだん顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。
「えっ、大丈夫……?熱でもあるのかな?」
赤くなっていく春歌を心配したのか、そっと春歌のおでこに手を当てて顔を覗き込む。
「……ひゃあっ!」
思わず変な悲鳴をあげてしまって、その手が慌てたように離れる。
「あっ、ごめんね!触られるのイヤだったよね……」
「いえ!!そんなことは、断じてありませんっっ!
……むしろ、嬉しすぎるというか、なんというか……。
あっ、ごめんなさい!変なことを言ってしまって……」
もはや、ちょっとしたパニック状態で、自分でなにを言っているのか分からなくなってきた。
目の前に、憧れの天使ことりがいて、自分の心配をしてくれていて、鼻やおでこに触れた手の温度があたたかくて、やさしくて、
急に、ことりが事故にあったというニュースを見た時のことを思い出した。
テレビを見ても、雑誌を読んでも、どれだけの怪我なのかも分からなくて、そしていつしか静かにその話題は消えていった。その後、所属していた劇団からことりの引退の発表だけがされて、幼い春歌はおおいに泣いたのだった。
「……っ!ことりちゃんが、元気でいてくれてよかったですっ……」
そのことを思い出すと、胸が詰まって、じんわりと涙が滲んできて、春歌は思わずそう口に出していた。
「えっ、……気付いて、たの?」
「ついさっき気付きました…。あっ!でも、もちろん!誰にも言いません!!」
「……あ、…ありがとう」
もう完全に鼻血は止まっていたので、鼻に当てていたガーゼで涙を拭おうとしたら、慌てたようにティッシュを差し出されてそれを使う。
すん、と小さく鼻をすすると、少しだけ鉄の味がした。
「あの、……名前、聞いてもいいかな?私、本名は桜井雛子って言うの」
「本名も可愛いお名前なんですね!私は七海春歌と申します!」
「……今さら、なんか、ちょっとおかしいんだけど、仲良くしてもらえたら嬉しいな……」
「……!!そんな!こっちからお願いしたいです!宜しくお願いします!」
「……うん。よろしくね」
そう言って、雛子は、はにかんだように微笑んで、右手を差し出してきた。春歌はその手を自分の両手でぎゅっと握って、満面の笑顔で返事をした。
そして、その後、体育館に戻った二人を、バレーの白熱した試合ですっかり意気投合した、春歌のルームメイトの友千香と雛子のパートナーが仲良く肩を組みながら出迎えてくれたのだった。