ツイノベまとめ
それなりの身分と見た目だが、発情期の香りが強すぎて抑制剤が効かないΩ。不安定な発情が始まってからは、いい相手が見つかるまでといつも部屋に閉じ込められていた。
しかし結局貰い手もおらず、発情期にもがき苦しむΩは家の人間にも持て余されていた。
もう何でもいいから適当な人間にやるかという話が家で出始めた頃、Ωは家に出入りしていた医者から当て馬役をしないかと持ちかけられた。その強い香りでαを発情させ、それに当てられたΩと番わせるのだという。
αとΩだからといって、すんなり上手く番えないこともあるから、だからその強い香りで手助けをしてやらないか。
ずっと閉じ込められ世間知らずだったΩは、売られるくらいなら人の役に立ちたいと思い、家を飛び出し医者の元で、当て馬の役をこなしていくようになった。
Ωはただ香りを振り撒くだけ。番になるのは別のふたり。
万が一噛まれては役に立たなくなるからと、Ωは相手も宛てがわれないまま、それまで以上に発情でもがき苦しむこととなった。それでも人のためになるならと思って耐えていたが――
ある日、Ωを利用して望まない番契約をさせることで、金を貰っていたらしい医者が捕まり、Ωもその共犯者として捕まった。
同じΩとして恥ずかしくないのかと色んな人間に責められたが、何も知らないΩは自分のしてきた事が酷い事のだと初めて知った。
尋問を受けるうちに動揺し弱った上に、Ωは発情期が始まってしまう。しかしその強すぎる発情は薬では治まらない。Ωを捕らえた者達もΩを持て余し、最終的に自分がやってきた事と同じ目に合わせればいいのではと、Ωは病のαに宛てがわれる事となった。
病を患っているαは身分が高く、伝染る病ではないが閨も学べていないらしい。
血を遺せれば御の字とそのαの侍医に連れられ、王都より離れた場所へΩは連れていかれた。
そこで静養していたのは、Ωより若い幼さの残るαの青年。
Ωを見るなり「罪人のΩをやるから好きにしろ」と言われのだたと罵る様子を見るに、かなり荒んでいる。
罪人など誰がと罵られたΩは、その言葉を無理もないと最初は言葉どおりに受け止めていた。しかし同じ建物で暮らすうちに、どうやらそう罵ってΩを遠ざけようとしていることに気づいた。
好きにしろと言われたなら好きにしたらいいと思う。
嫌なら無理に自分に触れる必要もない、ただ世話だけさせてほしい。
Ωはもう望まれない事はしたくなかった。一度医者に騙されているので怖かったが、Ωはαの侍医に頼んで、薬をこれまでにないほど大量に飲んで献身的にαの世話をした。
最初は反発していた二心のないΩに段々心を開いていく。
しかししばらくして、Ωは薬の過剰摂取で当然のごとく体調を崩した。
病気を伝染してしまったのではないかとαは心配し、今度はαがΩの世話をした。優しく献身的でどこか浮世離れしたΩにαは惹かれていた。
今さらだけど、好きにしていいなら、好きにさせてもらってかまわないだろうか。
赤い顔で言うαに体調を戻したΩは頷き、ふたりは仮初の番となった。
元気になったら本当の番になってくれ。
生まれて初めての幸せな日々。そう照れくさそうに願うαを愛おしく思うと同時に、Ωは不安と後悔を抱いていた。αは番を複数持てるが、このαは複数の番を作るような性格はしていない。今まで自分が番わせてきた中にもこんなαがいたかもしれない。
そんな自責の念に駆られていたΩはαに項を噛ませるのをのらりくらりと躱していた。
そんな仮初の番であった2人の間に子ができた。そして子が生まれる頃、αはすっかり完治し、表舞台に出ることになる。
病が治ればαは美しく優秀だった。そうなれば犯罪歴のある強い香り以外凡庸なΩなど、とても釣り合うなんてものではない。いよいよ潮時だと、Ωはこっそりと自らαから離れることを侍医を通じて申し出た。
子は記憶のないうちにと取り上げられた。
αと離される覚悟はあったが、Ωは自分の血を引く子どもを取られる予想はしていなかった。子と離さないでくれと食い下がったが、きちんとした教育を施して育てる、前科者との貧しい生活につきあわせるのかと正論で責められれば何も言う事は出来ない。Ωはまとまった金を渡され、ひとり遠い国へと旅立つことになった。追放である。
しかし追放もそう悪いことばかりではなく、祖国のものとは製法や材料が違う抑制剤がよく効いて、Ωは普通の人のように暮らすことができた。
読み書き計算は出来たので、仕事にも就くことができ、生まれて初めて人としてまともに生きることができるようになった。
そうして心に余裕が出来てくると、浮かぶのは自分のせいで望まぬ番になってしまったであろう者達や、αと自分が産んだ子どものこと。子を産んで空っぽになったのは胎だけではなかった。
叶うなら贖罪と、αと子にいつか一目だけでも会いたいと貯金をしながら細々と暮らしていたある日、お前のせいでとΩを詰る者が現れた。
それはかつてΩに当てられて発情し、望まない番契約をしたΩだった。
Ωを利用していた医者は、何も知らないΩを利用していたのを認めていたし、本意ではなく番となったものも元々政略などで番にならなければならないものがほとんどだったからと、実のところ、αの元に行った時点で実際のΩの罪は清算されていた。
でもそれは偶々で、不幸なΩを産む行為には代わりがなかった。お前も望まない相手と番えと詰る姿に、自分の罪がとうとう姿を現したのだと。Ωはあのα以外に噛まれたくなかったが、あのαでないのなら誰でも同じ。Ωは贖おうと覚悟を決めた。
ところが連れていかれた先に待っていたのは、すっかり健康的に成長したあのαだった。腕の中にはαによく似た、少しだけ自分の面影も持った幼い子ども。
αは子を育てながら消えたΩの行方を探していて、間一髪助けられたのだ。再会は嬉しかったが会うべきではないと、Ωは逃げようとしたがそれは叶わない。
自分はただ、好きにさせてもらっているだけだ、そう言ったのはお前だ。
だから責任をとれとαは言った。贖うつもりならば、自分にも、自分の側で贖えと。
それは許されない。
そう拒否するΩと、絶対に番になるというのを譲らないα、2人の主張は平行線を辿る。
しかし子がΩを親だとすっかり認識していること、αが贖罪を望むならその協力をするからと、時には怒り時には泣き落とし、Ωはとうとう根負けし、ともに暮らすようになった。
Ωはαと子と一緒に暮らしながら、αの手を借りて、少しづつ贖罪をしていくことになる。
しかしそれは自分のせいで番になった、番になる手助けをした者たちがなんだかんだと上手くいっているの顛末を見て行くことでもあり、それを見たΩは、自分も前に進んでいいのかとようやく思えるようになっていった。
Ωはαと番になって、今度はαと子に対し、幸せに罪を贖うことになるのだった。
おしまい
1/4ページ
