裏僕小説その5
(新しいゲーム機買っちゃった~。私の好きなアニメ「裏切りは僕の名前を知っているかもしれない」の、スピンオフ推理ゲームかあ…。推理とか苦手なんだけど、まあ一回やってみようかな!)
ディスクをセットして、と…。
ジャジャジャーン♪
俺は藤原彌涼。祇王家専属の主治医で、悪魔についての研究も行っている…とまあ、誰もが知っている自己紹介は省こう。
実は先日、この黄昏館である事件が起きた。
今日はきみの為に、あの事件の全容を振り返り、語っていきたいと思う。
俺が(自称)名探偵、藤原彌涼として活躍した、あの悪夢の出来事を…。
(ほうほう、藤原先生が主人公なのか。えーなになに、「この物語は、あなたが藤原彌涼となって事件を解決していきます。途中、選択肢がいくつか出てきますが、あなたの選んだ選択肢によって物語が変化、進んでいきます。最終評価『S』を目指して、事件を解決に導いてください」…なるほどねー)
AM:9:00
その日、館長の祇王橘は外出帰りにコンビニでアイスを買い、黄昏館に帰宅した。
これが一連の事件の始まり、恐怖と戦慄に支配された、休日の出来事である。
橘「皆、揃ってる~?コンビニでアイスを買って来たヨ!好きなの選んでネ」
焔椎真「おっ、気が利くじゃねえか橘!」
黄昏館に居た全員を談話室に集め、橘はコンビニのレジ袋からアイスを取り出してテーブルに並べた。
焔椎真「じゃあ俺は―」
斎悧「待て焔椎真。レディーファーストだ。女性が先に選びな」
さすが、斎悧は女の扱いも徹底しているな。まあ、こんなことでレディーファーストを気取るのもどうかと思うが。
リア「じゃあね~、私は「あいすの芽」にする!十瑚ちゃんは?」
九十九「十瑚ちゃんは「白見だいふく」にしなよ。俺とひとつずつにしよ?」
十瑚「そうね、おもちの中のミルクアイスがおいしいのよ。あたし達はこれね」
リア「綾ちゃんにはコレ、「ダンディーボーデンチョコレート味」。遠慮しないの!」
綾「まあ、私などにも…。ありがとうございます」
遠慮がちに皆を眺めていた綾も、斎悧にアイスを手渡され、嬉しそうに微笑んだ。
斎悧「よし、レディーは全員取ったな。じゃあ俺は「パーゲンダッツ」と」
焔椎真「おめーが一番かよ!しかも高級アイスを選びやがって!」
斎悧「お前に高級品はもったいない」
焔椎真「なんだと!じゃあ俺は、「暗治ラッセルハイパーカップ」にする!バニラ味!愁生は何にするんだ?」
愁生「俺は遠慮…」
焔椎真「んなこと言うなよ、愁生にはこれな!「ザリザリ君カレーシチュー味」!」
愁生「…焔椎真。交換しろ」
なんだ、カレーシチュー味って…。
愁生は焔椎真からハイパーカップを奪い、ザリザリ君を押しつける。
千紫郎「黒刀の好きな「志村屋のアズキバー」があるよ」
黒刀「じゃあ僕はこれにする」
千紫郎「俺は…「牧場すぼり」にしようかな」
橘「かっちゃんには「チョコモナカサンボ」ネ!」
遠間「わ~い!橘さんがようやく僕にまともなお土産を!ありがとうございます~」
ふむ。残ったのは「pepiko」「ジェイアントコーン」「黒くま」か…。
夕月「ルカは何にする?」
ルカ「俺はなんでもいい」
ソドム「マスター、ぼくね、ペピコがいいの。マスターと半分こ」
橘「あ、ソドム~。ペピコはルカくんに譲ってあげたら?ルカくんは夕月くんとペピコをちゅーちゅーしたいみたい―げふっ!!」
ルカ「死ね」
おお、見事なボディブローだ。
彌涼「坊主、お前にはジェイアントコーンがいいんじゃないか」
ソドム「じゃあぼくはこれー」
橘「んじゃボクは黒くまにしよっと」
彌涼「おい橘、俺の分は?」
橘「あ、ごめん。ドクターの分ないわ!」
彌涼「こらー!」
夕月「あの、僕はいいので彌涼先生に…」
彌涼「夕月は優しいな~。でもいいんだよ、俺は大人だから我慢する!」
橘「あはは、ドクター、こんなことで大人ぶられてもネ~」
彌涼「じゃあ橘、お前の黒くま寄越せ」
橘「いやヨ。限定イカ墨練乳かき氷味なんだから」
夕月「えーっと…じゃあルカ、ふたつあるから半分こしようか」
ルカ「ああ」
夕月がペピコを割ってルカに渡そうとした時、焔椎真が突然待ったをかけた。
焔椎真「ちょっと待て。なんかずるくね」
夕月「えっ、何がですか?」
焔椎真が夕月の両手に持っているペピコをしげしげと見つめ、不満そうに唇を尖らせる。
彌涼「なんだお前ら。なんでツヴァイルトの奴らは夕月のペピコを見ているんだ?」
十瑚「よくよく考えれば…ずるいわよね。夕月ちゃんとアイスを半分こなんて…羨ましいわ、ルカ」
こいつらは…。また始まったか。
十瑚と焔椎真の唐突なやり取りに、ほかの面々も揃って同調し出す。
九十九「ルカばっかり…いっつも夕月と一緒だよね」
十瑚「ねえ、もう一回アイスを選び直さない?誰が夕月ちゃんとペピコを半分こするか」
黒刀「そうだな。皆、夕月のアイスを狙っているだろうから、ここは勝負といくか」
夕月「ええっ!?あの、そんなことをしていたらアイスが溶けちゃいますよ?あっ、僕が違うアイスを選びますから…」
夕月は両手にペピコを持ったまま、おろおろと困っている。
まったく、なんでこいつらは夕月のことになると独占欲をむき出しにするんだか。
橘「ちょっときみ達~、仲良くしなさいよ、夕月くん困ってるでしょ。あっそうだ、間を取ってボクが夕月くんのペピコをいただこ…ぐふぁっ!!」
橘が夕月のペピコに手を伸ばすと、誰かの対悪魔武器が直撃した。
馬鹿だなこいつ。床に潰れた橘に心の中で手を合わせる。触らぬ神に祟りなし。
離れた所からツヴァイルトの激戦を眺めていると、困り果てた夕月が俺に助けを求めてきた。
夕月「彌涼先生、どうしましょう。どうして皆さんはアイスひとつでこんなにムキに…」
仕方ない。俺は夕月を…。
→助ける
助けない
(さっそく選択肢だけど…どっちでもいいのかな。じゃあここは「助ける」でしょう)
彌涼「おいお前ら。たかがアイスで喧嘩をするな。中を取って俺が夕月とペピコを半分こに…ぐはぁっ!!」
(えっ?なに?なにが起きたの?なんで画面が真っ赤に…)
GAMEOVER
チャラララーン♪(BADEND曲)
(えええーっ!?ちょっ、どういうこと!?まだ始まったばかりなんだけど!選択肢間違えると主人公死んじゃうの!?)
(…はあ。仕方ない。セーブしてなかったし、もう一回初めからか…)
夕月「彌涼先生、どうしましょう。どうして皆さんはアイスひとつでこんなにムキに…」
仕方ない。俺は夕月を…。
→助ける
助けない
(助けない、が正解だったのね。マメにセーブしとこ)
彌涼「まあ、あいつらは夕月のことが大好きだからな。夕月とペピコを分け合うというのは、王が臣下に授ける忠誠の盃のようなものだ。それだけ、あいつらにとって夕月のペピコはものすごく重要なものなんだよ」
夕月「はあ…。盃というか、ただのアイスなんですけど」
結局、いつまで経っても勝敗はつかず、アイスが溶けるという理由で一時休戦となった。
夕月はアイスを食べられなくて可哀想だったが、ペピコは一旦厨房の冷凍庫に入れられ、改めて決着をつけるまでは抜け駆け禁止というルールが作られたのだった。
そして、その日…事件は起きた。
AM:10:00
「うわあああ~っ!!」
医務室で雑務をしていた俺は、館内に響き渡る絶叫を聞き、厨房に駆け付けた。
彌涼「一体なにごとだ!?」
厨房には、既に悲鳴を聞きつけた皆が集まっていた。
十瑚「彌涼先生、大変なの!遠間さんが…遠間さんがっ!」
彌涼「コックがどうした…こ、これはっ!」
ジャジャーン!(効果音)
彌涼「と、遠間が死んでる…」
俺は見てしまった。
黄昏館の常勤コック、遠間克己が冷凍庫付近の床で、仰向けに倒れていたのだ。
(遠間さん死んじゃったの!?これってこういうアニメだったっけ…随分シリアスな展開だな)
リア「ひどい…一体誰がこんなことを…」
斎悧「大丈夫だ二人とも。落ち着いて」
怯えて震えている十瑚とリアの肩を、斎悧が支えている。
彌涼「とりあえず、皆厨房から出るんだ」
俺は皆を外に出し、現場の状況を把握することにした。
※現場検証に入ります。気になるポイントをタッチしてください。重要だと思われる場所は赤く光るので、重点的に探してみましょう。
彌涼「まず俺がやるべきことは…」
→遺体の状況を確認する
遺体の周囲を調べる
第一発見者の聞き込み
(どれから…うーん、遺体の状況かなあ)
(ほうほう、画面をタッチすればいいのか。遠間さんがすごいリアルに倒れてるんだけど…口から黒い血を流してるし…。えっと、遠間さんの手が赤く光っているから、ここを調べればいのかな)
彌涼「…ん?コックの右手中指に黒い染みが付着している。そして引きずるように床に書かれた文字のようなものは…?」
(ダイイングメッセージというやつですな。画面をズームしてみると…カタカナで…ト…かな?)
彌涼「これは犯人を示す記号なのだろうか…」
(冷凍庫が赤く光っているから、ここも重要ポイントなのかな。初心者には親切設計だよね)
彌涼「遠間は冷凍庫を開けた直後に、襲われたのか…?中には何が入っているのだろう」
(ペピコと、ラップが掛けられたステンレスのボールと、フリーザーパックに入った食材かな。なにが重要なんだろう)
彌涼「…そうか。解ったぞ。よし、皆を集めよう」
(えっ?なにが解ったの?さっぱりなんだけど)
AM10:30 談話室
彌涼「皆、突然のことで動揺したとは思うが、俺が調べたことを聞いて欲しい。まずコックの死因だが、急性毒物中毒と断定した。何者かがコックに、経口か接触かはこれから調べるが、第三者に毒物を盛られたのだろう。つまり他殺だ」
焔椎真「ちょ、ちょっと待て。それって、この館の中に犯人がいるってことか!?」
夕月「遠間さんを襲うなんて、そんな人は誰もいません!」
彌涼「言いにくいが、外部からの侵入者は館の構造上考えられない。おそらく、俺達が悲鳴を聞きつけた時に、遠間は既に毒物を盛られていたのだろう」
リア「どうしてそんなひどいことを…」
千紫郎「犯人の目的はなんですか。一体なんの目的で遠間さんを…」
彌涼「…これは推測だが、犯人の目的はおそらく夕月のペピコだろう」
愁生「夕月のアイス?一体どういうことですか」
彌涼「先刻きみ達は、誰がペピコを食べるかと争っていたな。遠間はコックである自分の立場を利用して、ペピコをこっそり独り占めしようとした。コックならば、冷凍庫に近付いても不自然に思われることもない。…そして遠間は、犯人に見つかり、毒殺された」
夕月「それって、ツヴァイルトの皆さんが犯人だと言っているように聞こえます…」
黒刀「犯人の目星など、もうついているだろう。焔椎真、おまえだな」
焔椎真「はあ!?俺じゃねえよ!」
愁生「焔椎真は俺とずっと一緒にいた。遠間さんを襲うのは不可能だ」
遠間は夕月のペピコを食べたいばかりに犯人の逆鱗に触れてしまった。
犯人捜しはこれからだが、被害者はこれからも増えるのだろうか…。なにか嫌な予感がする。
夕月「そんなっ…遠間さんっ…僕のせいだ…僕があの時、違うアイスを選んでいたら、遠間さんはあんなことには…ううっ…」
ルカ「ユキ…お前のせいじゃない。悪いのはあのコックだ。自分を責めるな」
悲しみに暮れ、涙を流す夕月の肩を、ルカがそっと支える。
黄昏館は、重苦しい空気に包まれた。
この一件が、事件の幕開けに過ぎなかったことを、誰が予想していただろう。
AM:10:00
「うわあああ~っ!!」
医務室で雑務をしていた俺は、館内に響き渡る絶叫を聞き、厨房に駆け付けた。
彌涼「一体なにごとだ!?」
厨房には、既に悲鳴を聞きつけた皆が集まっていた。
十瑚「彌涼先生、大変なの!遠間さんが…遠間さんがっ!」
彌涼「コックがどうした…こ、これはっ!」
ジャジャーン!(効果音)
彌涼「と、遠間が死んでる…」
俺は見てしまった。
黄昏館の常勤コック、遠間克己が冷凍庫付近の床で、仰向けに倒れていたのだ。
(遠間さん死んじゃったの!?これってこういうアニメだったっけ…随分シリアスな展開だな)
リア「ひどい…一体誰がこんなことを…」
斎悧「大丈夫だ二人とも。落ち着いて」
怯えて震えている十瑚とリアの肩を、斎悧が支えている。
彌涼「とりあえず、皆厨房から出るんだ」
俺は皆を外に出し、現場の状況を把握することにした。
※現場検証に入ります。気になるポイントをタッチしてください。重要だと思われる場所は赤く光るので、重点的に探してみましょう。
彌涼「まず俺がやるべきことは…」
→遺体の状況を確認する
遺体の周囲を調べる
第一発見者の聞き込み
(どれから…うーん、遺体の状況かなあ)
(ほうほう、画面をタッチすればいいのか。遠間さんがすごいリアルに倒れてるんだけど…口から黒い血を流してるし…。えっと、遠間さんの手が赤く光っているから、ここを調べればいのかな)
彌涼「…ん?コックの右手中指に黒い染みが付着している。そして引きずるように床に書かれた文字のようなものは…?」
(ダイイングメッセージというやつですな。画面をズームしてみると…カタカナで…ト…かな?)
彌涼「これは犯人を示す記号なのだろうか…」
(冷凍庫が赤く光っているから、ここも重要ポイントなのかな。初心者には親切設計だよね)
彌涼「遠間は冷凍庫を開けた直後に、襲われたのか…?中には何が入っているのだろう」
(ペピコと、ラップが掛けられたステンレスのボールと、フリーザーパックに入った食材かな。なにが重要なんだろう)
彌涼「…そうか。解ったぞ。よし、皆を集めよう」
(えっ?なにが解ったの?さっぱりなんだけど)
AM10:30 談話室
彌涼「皆、突然のことで動揺したとは思うが、俺が調べたことを聞いて欲しい。まずコックの死因だが、急性毒物中毒と断定した。何者かがコックに、経口か接触かはこれから調べるが、第三者に毒物を盛られたのだろう。つまり他殺だ」
焔椎真「ちょ、ちょっと待て。それって、この館の中に犯人がいるってことか!?」
夕月「遠間さんを襲うなんて、そんな人は誰もいません!」
彌涼「言いにくいが、外部からの侵入者は館の構造上考えられない。おそらく、俺達が悲鳴を聞きつけた時に、遠間は既に毒物を盛られていたのだろう」
リア「どうしてそんなひどいことを…」
千紫郎「犯人の目的はなんですか。一体なんの目的で遠間さんを…」
彌涼「…これは推測だが、犯人の目的はおそらく夕月のペピコだろう」
愁生「夕月のアイス?一体どういうことですか」
彌涼「先刻きみ達は、誰がペピコを食べるかと争っていたな。遠間はコックである自分の立場を利用して、ペピコをこっそり独り占めしようとした。コックならば、冷凍庫に近付いても不自然に思われることもない。…そして遠間は、犯人に見つかり、毒殺された」
夕月「それって、ツヴァイルトの皆さんが犯人だと言っているように聞こえます…」
黒刀「犯人の目星など、もうついているだろう。焔椎真、おまえだな」
焔椎真「はあ!?俺じゃねえよ!」
愁生「焔椎真は俺とずっと一緒にいた。遠間さんを襲うのは不可能だ」
遠間は夕月のペピコを食べたいばかりに犯人の逆鱗に触れてしまった。
犯人捜しはこれからだが、被害者はこれからも増えるのだろうか…。なにか嫌な予感がする。
夕月「そんなっ…遠間さんっ…僕のせいだ…僕があの時、違うアイスを選んでいたら、遠間さんはあんなことには…ううっ…」
ルカ「ユキ…お前のせいじゃない。悪いのはあのコックだ。自分を責めるな」
悲しみに暮れ、涙を流す夕月の肩を、ルカがそっと支える。
黄昏館は、重苦しい空気に包まれた。
この一件が、事件の幕開けに過ぎなかったことを、誰が予想していただろう。
PM:1:00
俺の胸騒ぎは現実のものになってしまった。
第二の犠牲者が出てしまったのだ。
夕月「そんな!黒刀くんと焔椎真くんまで、どうしてっ!」
昼食時、厨房の冷凍庫付近、遠間が倒れていたその場所に、黒刀と焔椎真の遺体が発見されたのだ。
斎悧「どういうことだ。この事件は遠間の一件で片付いたんじゃなかったのか」
二人をいっぺんに襲える人物など、並の人間ではない。
犯人は外部の人間だと、視野に入れるべきか…。
千紫郎「黒刀…きみまで…俺はこれからどうやって生きて行けばいいんだ…!」
愁生「なんて馬鹿なやつだ…焔椎真」
彌涼「皆、ここは俺に任せて、外に出るんだ。現場を検証する」
…さて、俺がすることは―。
→遺体の状況を確認する
遺体の周辺を調べる
第一発見者の聞き込み
(さっきは聞き込みをしなかったから、これにしよう)
彌涼「まずは第一発見者の聞き込みだ。最初に現場に駆け付けたのは、千紫郎だったな」
PM:1:30 食堂
千紫郎「俺が倒れている二人を見つけたのは、午後の一時ごろでした。遠間さんがあんなことになってしまったので、俺と綾で昼食の準備をしようと厨房に行ったんです。そうしたら二人の悲鳴が聞こえて…駆け付けたら、黒刀と焔椎真があ、あんなことにっ」
(普通は第一発見者を疑うのが鉄則なんだけど、千紫郎さん取り乱してるなあ)
無理もない。大切なパートナーを失ったんだ。
この動揺ぶりでは、二人を襲うなど考えられないか…。
彌涼「念のために訊いておくが、その時刻にアリバイはあるか。誰か証明できる者は?」
千紫郎「俺を疑っているんですか?自分の命よりも大切な相棒を、あんな目に遭わすとでも?」
綾「千紫郎様は、ずっと私と共にいらっしゃいましたわ」
千紫郎「綾…」
綾「千紫郎様にお二人を襲うことなど不可能です。私と千紫郎様が悲鳴を聞いて駆け付けるまで、ずっと私と掃除や洗濯をしておりました」
僅かな時間では、犯行は不可能。となると犯人は二人を襲った後、どうやって厨房を抜け出したのか…。
→聞き込みを続ける
厨房に戻る
(うーん…他の人のアリバイも聞いておこう)
PM:1:40 愁生の部屋
愁生「俺は二人の悲鳴を聞いて厨房に行くまで、ずっと部屋にいましたよ。証明できる者はいません」
彌涼「ひとりで部屋にいたのか?」
愁生「十二時半ごろまでは焔椎真が居ましたが、いつのまにかいなくなりました」
彌涼「誰かに呼び出されたとか、おかしな様子はなかったのか?」
愁生「さあ、分りません。ずっと一緒にいるわけではありませんし、興味もないですから」
彌涼「きみはパートナーを失ったというのに、随分冷静だな」
愁生「俺は厨房には近づくなと忠告しました。危険を冒してまでペピコを食べたかったのかなんだか知りませんが、隙を突かれて犯人に襲われるなど、自業自得です」
愁生の冷静な態度は引っかかるが、アリバイがないからといって決め付けるのは早計過ぎるか…。
PM:1:50 中庭
夕月「僕はソドムとルカと一緒に、庭でキャッチボールをしていました。三人ともずっと一緒だったので、アリバイはあります」
ソドム「あっ、でも、マスターが少しだけお部屋に戻ったの」
彌涼「それは何時頃だ?」
ソドム「んーとね、12と30に針がきてたの」
彌涼「十二時半か。ルカはどこへ行っていたんだ?」
ルカ「倉庫にミットというものを取りに行っていた」
夕月「でも、ルカが離れていたのはほんの数分です。ルカを疑わないでください」
彌涼「疑っているわけじゃないよ。一応聞き込みをしているだけだから」
ルカ「ふん、お前が犯人なんじゃないのか。自首するなら今のうちだ」
彌涼「ひでーな。俺は皆の為に、これ以上被害者を増やしたくないだけだ」
(なーんかルカも怪しいな。私、推理小説はほとんど読まないし、読んでも推理しないで読む派だからな~。ぜんっぜん分かりません)
PM2:00 リアの部屋
十瑚「あたしと九十九とリアは、一緒にこの部屋にいたわ。ひとりになるのは危ないからって、三人でゲームをしていたの」
九十九「それぞれがトイレに行った以外は、ずっと一緒だったよ」
リア「ねえ先生、早く犯人を捕まえてね。安心して館内を歩けないじゃない」
PM2:10 大浴場
斎悧「俺は夕方から仕事だから、風呂に入っていた。十三時頃に浴室から廊下に出たら、ばったり橘と会ったから、アリバイはあるんじゃないのか」
PM2:20 医務室
橘「ボクは館内パトロールをしていたヨ。でも悲鳴を聞いた十三時ごろはりーくんといたし、犯行は不可能でしょ」
ふーむ。怪しいやつは何人かいるが、決定的な疑いがあるわけじゃない。
次はどうするか…。
→聞き込みの整理
現場に戻る
(整理とかめんどくさいから後回し。現場に戻ろう)
PM2:30 厨房
(えーっと、どこから調べればいいのかな。画面を見ると…遺体が赤く光っているな)
彌涼「二人は仰向けに倒れ、額には紅い痣、口からは黒い血のようなものを流している。これは遠間の時と同じか。そして床に書かれたダイイングメッセージ…カタカナのツとマに見えなくもない」
(ツとマ?九十九くんとま…マはいないな。人の名前じゃないのかな?)
彌涼「二人が危険を冒してまで厨房に来た理由…それは…」
→夕月のペピコを狙っていた
犯人を捕まえようとした
(どっちかなあ。ペピコを狙って犯人に襲われた、とかかな。この二人が、「よっしゃあ黒刀!二人で力を合わせて犯人を捕まえようぜ!」っていう感じでもないしね。ここは勘だ!)
彌涼「どうも、この事件は一筋縄ではいかない気がする。厨房は立ち入り禁止にして、皆には一人にならないようにと注意しておこう」
橘「ドクター、ちょっといいかな?」
彌涼「なんだ橘」
橘「イイ考えを思いついたんだ。ボクが囮になって、犯人を捕まえるのはどう?ボクも夕月くんのペピコを狙っていると思わせて、襲ってきた犯人を返り討ちにしてやるのサ!」
自信満々に胸を叩く橘…。激しく不安だ。
だが、これで一気に解決できるかもしれないし、橘ひとりいなくなったところで、誰も困らないか。
(おいおい、何気にひどいこと言ってますけど)
→橘を信じる
駄目だ、危険だ
(ここは橘さんに囮になってもらおうっと)
PM3:00
夕月のペピコを狙った下劣な犯人を、決して許すわけにはいかない。
そう思い、橘を信じたわけだが…やはり嫌な予感は的中してしまった。
今度は囮作戦に出た橘が、犯人の餌食になってしまったのだ。
彌涼「橘…まさかお前まで。俺達は大事な館長をこんな形で失ってしまったのか」
(さっき、いなくなってもどうでもいい。みたいなこと言ってなかったっけ)
九十九「どうするんですか、先生。これじゃあ犠牲者が増えていくだけです」
斎悧「下手をしたら、犯人以外は全滅か…」
リア「やだ、怖いこと言わないでよ斎悧」
うつ伏せに倒れた橘は、必死の形相で我々に何かを伝えようとしたのだろう。
やはり床に黒い文字で、カタカナの「ア」と書かれている。
…解らない。一体これらの文字はなにを意味しているのか。
被害者が伝えようとしたことは…?
夕月「彌涼先生。天白さんに応援を頼みましょう。僕達だけではとても解決できそうにありません」
→天白を呼ぶ
俺が犯人を捕まえる
もう諦めよう
(もう諦めようって、しっかりしてよ先生!これ選んだらBADENDまっしぐらだよね。ここで天白さんを呼んだら展開に影響があるのか…うーん…気になるけども、最後まで先生に頑張ってもらおう)
彌涼「いや、俺を信じてくれ夕月。必ず犯人を捕まえてみせる」
夕月「彌涼先生…」
そうだ、館長亡き今、ここの住人をまとめられるのは俺しかいない。
必ず事件を解決して、平和な日常を取り戻さなければ!
(結構被害者出ちゃってますけどね~…)
俺は皆を一旦部屋に戻し、事件を解決することにした。
まず、俺がやるべきことは…。
→住人の聞き込み
遺体の確認
情報の整理
(うーん。聞き込みから行くか)
(まずは館内マップを見て…十瑚ちゃんの部屋から行こう)
PM3:20 十瑚の部屋
十瑚の部屋に着いた。…ん?中にリアもいるのか。
こそこそと話しているようだが…扉が少し開いている。
よし、聞き耳を立ててみよう。
(おじさんが女性の部屋に聞き耳はまずいんじゃないかな…)
十瑚「…どうしよう、リア。あたし…取り返しのつかないことを…」
リア「大丈夫だよ…今…回収しておけば…ばれない…」
ひそひそ声でよく聴こえないが、二人はなにを話しているんだ?
十瑚「だって…中…アイスが…」
リア「わかった…私が…」
(これは怪しいな。アイスがキーワードだね)
彌涼「…そうか!分かったぞ、この事件の全容が!」
(えっ?私全然解らないんだけど!十瑚ちゃんが怪しいってことなの?置いて行かないでよ先生~)
彌涼「そうと決まれば…やはりあそこにあれがある筈だ。厨房に戻ろう」
→現場に戻る
聞き込みを続ける
(なんか分んないけど、先生が戻るとか言ってるから厨房に行けばいいのかな)
PM3:40 厨房
彌涼「俺の推理が正しければ、犯人が残していった証拠がある筈だ」
(証拠ねー。床と冷凍庫を調べればいいのかな)
彌涼「冷凍庫の中にあった、このステンレスのボール、これが凶器だ。そして床には…」
(ボール?で殴ったのかな?)
彌涼「…あった!この遺体の周辺に落ちていた白い紙切れ…あいつはおそらくこれを使ったのだろう)
キーワードは全て揃った。
ダイイングメッセージの「ト」「ツ」「マ」「ア」
そしてボールの中身と白い紙。
間違いない、犯人はあいつだ!
(どいつだ!?プレーヤーは無視ですか!)
PM4:00
彌涼「皆、集まったな」
夕月「彌涼先生、犯人が分かったんですか?」
斎悧「早くしてくれ。仕事に遅れる」
皆、不安そうに俺を見つめている。
この中に犯人がいるなど、信じたくはなかった。
彌涼「まず、第一の被害者は遠間だった。彼はペピコを狙ったのではなく、昼食の準備をしようと冷凍庫を開けた所を、勘違いした犯人に襲われたんだ。第二の被害者、黒刀と焔椎真は、抜け駆けをしようと厨房に向かい、お互いに相打ちになった。そして最後の被害者、橘も冷凍庫を開けた所を犯人に襲われたんだ」
夕月「でも、凶器は見つかっていないんですよね?厨房の出入り口はひとつですから、犯人が皆さんを襲って、逃げる時間などあったんでしょうか」
彌涼「先程、「犯人に襲われた」と言ったが、正確に言えば違う。犯人はあらかじめ、冷凍庫に凶器を仕込んでおいたんだ。被害者はそれを間違って開けてしまい、それを食べたか、食べさせられた。…凶器はこれ、冷凍庫に入っていた、ステンレスのボールに入っている中身だ」
十瑚「そっ、それは…っ!」
十瑚の動揺ぶり…やはりそうだったか。
夕月「そのボールには、何が入っているんですか?」
彌涼「斎悧、ラップを開けて、嗅いでみてくれ。他の皆は鼻をつまむように」
斎悧「なんだよ、この中身がどうしたって…ぐっ、ぐわぁっ!!」
夕月「さ、斎悧さんっ!?しっかりしてください!」
彌涼「このボールの中身は、十瑚が作ったアイスクリームだ。そうだね、十瑚?」
十瑚「…ええ。バニラアイスを作ろうと思ったら、少し失敗して炭のような色になっちゃったの。でも、九十九は美味しいって言ってくれたから、皆にも食べさせてあげようと思って、冷凍庫に入れておいたのよ」
ルカ「どんな食材を使ったらそんな色と匂いになるんだ」
彌涼「被害者が残したダイイングメッセージ。「ト」「ツ」「マ」「ア」は、「十瑚の、作った、マズイ、アイス」を示している」
犯人は、この殺人的に不味いアイスを利用した。
犯人が自ら厨房に赴く必要などなく、あとは被害者が勝手に自滅する。
そんなことが出来る人間は…そう、あいつしかいない。
→夕月だ
ルカだ
十瑚だ
九十九だ
千紫郎だ
斎悧だ
リアだ
綾だ
(だ、誰だろう。十瑚ちゃんは利用されたとして…さっきから一言も喋らない千紫郎さんだ!たぶん!)
彌涼「そう、犯人はきみだね。千紫郎」
千紫郎「…俺が…犯人…?」
リア「まさか、千紫郎さんが!?」
綾「お待ちくださいませ。千紫郎様は私と共におりましたわ」
彌涼「第一発見者はいずれも千紫郎と九十九だった。悲鳴を聞きつけた時、皆よりもいくらか早く、千紫郎は厨房に駆け付けていたね?」
綾「は、はい。ですがほんの僅かの時間でしかありませんわ」
彌涼「僅かな時間があれば犯行を隠滅するには充分だったんだ。そしてもうひとり…千紫郎には共犯者がいる。ある特殊な能力を持ち、千紫郎の式神を通して会話が出来る者。それは…」
(あ、これは分かった。九十九くんだ)
彌涼「九十九、きみだ。きみと千紫郎は式神と神の耳の連携プレーを駆使し、冷凍庫に近付く者を一掃した。証拠は床に落ちていた、式神に使う紙切れだ」
千紫郎「…ふっ。見事な推理です。藤原先生」
(そ、そうかなあ…)
九十九「ばれてしまったら、仕方がないね…」
十瑚「九十九、まさか、あなたが…!?」
夕月「千紫郎さん…どうして…」
彌涼「きみ達は共謀して、夕月のペピコを狙う者を一網打尽にし、あとでこっそりペピコを食べる。そういう算段だった」
九十九「俺は千紫郎さんに誘われただけだよ。神の耳を使って協力してくれたら、ペピコの他にアイスも作ってくれるって。だから悪いのは千紫郎さん」
千紫郎「九十九!きみ、裏切るのか!」
夕月「千紫郎さん…信じてたのに…」
千紫郎「ごめん、夕月くん。でも、俺はどうしても夕月くんのペピコが欲しかったんだ。…本当、ボールに『夕月くんの作ったアイスだよ』と書くだけでほいほいと騙されるんですから、馬鹿な奴らです。でも、俺は後悔していませんよ。大方の目的は達成したんです。後は…このペピコを戴くだけだ!!」
夕月「まっ、まさか!」
彌涼「待て、千紫郎!早まるな!」
千紫郎「止めても無駄だ。ふふっ、これで王(夕月)からの、忠誠の盃(アイス)は俺のものだよ!」
しまった!追い詰められた犯人は何を仕出かすか分からない!
千紫郎「ふふふっ…これで夕月くんのペピコは俺のものに……なにっ!?」
焔椎真「…こーらー…人を勝手に亡き者にするんじゃねえ~…ぐふっ」
遠間「うっかり食べてしまったアイスがあまりに不味くて、気絶していただけですぅ…」
橘「粘り気があるからトルコアイスかと思ったら…ま、まさか十瑚くんの作ったアイスだったなんて…ぉうえっ!」
黒刀「くっ…独り占めなど許さんぞ…夕月のペピコは僕のものだ…!」
千紫郎「ちっ…生きていたのか…」
十瑚「ちょっと!人の作ったアイスを勝手に殺人凶器にしないでよね!食あたりなんて認めないわ!失礼なんだから!」
愁生「ふぅーっ…。ようやく終わったか。くだらない時間だったな」
ルカ「まったくだ」
夕月「えっ?ルカと愁生くんは、初めから犯人が分かっていたんですか?」
愁生「まあね。俺は神の目があるから。巻き込まれたら面倒だし、傍観させてもらったよ。…それじゃあ、時間を無駄にされたお詫びに、夕月のペピコは俺が貰おうかな」
ひょいっ、と千紫郎からペピコを取り上げる愁生。
もうアイスはほとんど溶けてしまっている。
焔椎真「あーっ!愁生ずりいぞ!」
わーわーと争い始めるツヴァイルト達…。結局はこうなるのか。
夕月「あのー!だから忠誠の盃とやらじゃなくて、ただのアイスなんですよーー!!」
まったく、恐ろしい事件だった。
ツヴァイルトの、夕月に対する並々ならぬ愛情。それが皮肉にも凶器となったこの事件は、「黄昏館アイスクリーム殺人事件」として、歴史に名を刻むだろう。
愛憎の招く罠とは、つくづく恐ろしいものだ。
チャラララーン♪
『あなたの推理評価、B』
(なんだこのゲーム。ただのコメディだったよね?推理をした感じもなかったけど、Bなんて微妙な評価貰っても嬉しくないわあ…)
エンディングテーマ「世界にひとつだけのアイス」
歌:黄昏館の住人
♪せーかいにひーとつだーけのあーいす♪
(うーん…。アニメが重めのお話しだったから、アイスひとつで盛り上がれるのも、なんやかんやで楽しそうで良かった…のかな?なんかアイスアイス言ってたら、アイス食べたくなってきちゃった。コンビニ行ってこようっと)
おわり。