裏僕小説その2
とうじょうじんぶつ
ヘンゼル ツクモ
グレーテル トオコ
母 イブキ
前父 タカシロ
後父 イスズ
森の小鳥 センシロウ
魔女 シュウセイ
奴隷 トオマ
奴隷2 ホツマ
森の精霊 ルカ
森の精霊2 クロト
菓子職人 ユキ
むかし、ある村に、トオコとツクモという、とても仲のよい姉弟がいました。
二人の前のお父さんはとてもお金もちでしたが、ある日、突然「私はお菓子作りを極めたい」と言って、家を出ていってしまいました。
美人なお母さんは新しいお父さんに、とある有名な科学者を婿にむかえました。
四人はしばらくの間は幸せにくらしていました。
ところが、姉のトオコが年ごろになると、お父さんとの距離が少しづつ広がりました。
「お父さんのくつ下と私の下着をいっしょに洗わないで」
「ひげが汚い」
「お父さんの後のお風呂はいや」
「まじうざい」
と、お父さんを毛嫌いするようになりました。
「まったくトオコには困ったもんだな。お父さんのどこが悪いってんだ。まあ、研究に没頭するとあの子たちにかまってやれないのは反省しているが」
「あの子も難しい年ごろなんです。藤原先生、仕事もけっこうですが、二人ともっとお話してくださいね。それから、若い娘の前では常にせいけつに」
「気を付けるよ。それはそうと、イブキ。藤原先生はやめないか。あ・な・たとか、イスズさんとか呼んでくれよ」
「いやです」
そんなある日、お父さんとけんかをしたトオコは、弟のツクモを連れて、家をとびだして行ってしまいました。
「もう、ちょーむかつく!イスズお父さんたら、『トオコ、ケーキでも食べに行かないか。お前の菓子作りが上達するように、お父さんが美味いケーキというものを科学的に証明してやろう』だなんて言ったのよ!私の作るお菓子がまずいみたいじゃない、ほんと、でりかしーのない人なんだから!」
「落ち着いて、トオコちゃん。トオコちゃんの作るお菓子はおいしいよ。それに、お父さんも、もっとトオコちゃんと仲よくなりたかったんだよ」
「分かってるけど‥。どちらもちょっと変態っぽかったけど、私はタカシロお父さんのほうがよかったわ」
「うん、どこに行っちゃったんだろうね。お父さん。俺たちのこと忘れちゃったのかな」
「そうね…」
二人はタカシロお父さんのことを思い出して、悲しくなりました。
「あっ、そういえばこんな森の奥まで来ちゃったけど、どうしよう!帰り道が分からないわ」
「大丈夫。迷子にならないように、道にお菓子を落としてきたんだ。これを伝って帰ろう」
「さすが私の弟ね!帰ったらお父さんに謝るわ。帰りましょうツクモ」
二人は道に落としたお菓子を伝ってもと来た道をたどりました。
ところが、目印のお菓子が途中でなくなっています。
「あれ、お菓子がなくなってるよ」
「やだ、本当!これじゃあお家に帰れないわ」
二人がお菓子のなくなった道の先を見ると、一羽の小鳥がせっせとお菓子をひろっていました。
「ああ、もう。こんなところにお菓子を落としていくなんてもったいないなあ」
「あーっ、ちょっとなにしてるのよ!」
「うわあっ!びっくりしたなあ。君たち、食べものは大切にね」
「それは俺たちが家に帰るための目印だったんだ」
「あ、そうなのかい?ごめん、悪いことしちゃったね。俺、小鳥のセンシロウって言います。おわびに君たちを家まで案内するよ」
小鳥…というにはかなり大きい鳥でしたが、本人は小鳥だと言い張っていました。
二人はセンシロウの案内で家まで送ってもらうことにしました。
ところが、いつまで経っても家に着きません。
辺りはすっかり暗くなってしまいました。
「あれっ、おかしいな。確かこっちだったと思ったのに」
「小鳥さん、迷っちゃったの?」
「あはは、そうみたい。あっ、そろそろ夕食のしたくをしないと!じゃ、二人とも。俺はこの辺で!」
「ちょっとちょっと、困るわよ!家に帰れないじゃない」
「この先の森に精霊がいるから、その人に聞いてみて。また様子を見に来るから。それじゃあ!」
小鳥は道案内を途中で放棄して、さっさと飛び立っていきました。
「どうしよう。怖いわツクモ」
「大丈夫、トオコちゃんは俺が守るから」
二人は励まし合いながら森を進みました。
しばらく森の中を歩いていると、遠くにカラフルな家が見えてきました。
甘い匂いも漂って来ます。
「ねえ、あれってお菓子の家じゃない?どうしてあんなところに?」
「…おいしそう」
甘いお菓子の香りに誘われて、ツクモはふらふらと歩いて行きました。
トオコもあわてて後を追います。
辿り着いたお菓子の家を見て、二人は驚きました。
立派な門はあめ細工、大きな庭に咲く花々は砂糖菓子、地面までも色とりどりのゼリービーンズで作られていて、ぶよぶよとふしぎな感しょくがしました。
小さなお城のような家は、屋根はビスケット、壁はチョコレート、扉はクッキーと全ておいしそうなお菓子で作られていました。
「すごいわ、なんてきれいなのかしら」
トオコが見とれている間に、ツクモは壁のチョコレートを剥がしてむしゃむしゃと食べ始めました。
「あっ、駄目よツクモ!誰が作ったのか分からないのに危ないわ」
トオコが止めようとすると、どこからか声が聞こえてきました。
「製作者は僕です~」
声のした方向を見ると、壁によじのぼってフルーツを貼りつけているコック帽子をかぶった男性が手を振っていました。
「あなたが作ったの?すごくおいしいよ」
「えへへ、そうですか?ありがとうございます。そのチョコレートはカカオにこだわって何度もテンパリングを重ねた自信作で…ってそんな場合じゃない!早く逃げてください!ここには恐ろしい魔女が‥」
その時です。
上空からかっちかちに焼かれたメレンゲの網が落ちてきて、ツクモを捕らえてしまいました。
「っしゃあ!!捕まえたぜ」
「よくやった、ホツマ」
網を投げた金髪の男性と、きれいな男性が、トオコの前に現われました。
「ちょっと!ツクモになにするのよ!」
「俺は魔女のシュウセイ。俺の家を食べたからね。この子は俺の物だよ」
「うわあーん!だから逃げてって言ったのに!僕も魔女さんに誘惑されて、どれいにされちゃったんですぅ~」
「トオマさんは専属菓子職人として働いてもらってるんだ。ちなみに隣のこいつはどれいその二のホツマ」
「自己紹介なんてどうでもいいのよ!早く弟をかえしてっ」
「かえして欲しいの?だったら俺と勝負しない?どちらがおいしいお菓子を作れるか」
シュウセイがぱちんと指をならすと、一枚のチラシがトオコの前に舞い降りてきました。
「なに?『ケーキ作りコンテスト』?」
「そう、もし君がこれに優勝出来たらツクモをかえしてあげる」
「いいわ、コンテストまでツクモになにもしないって約束して!優勝して、弟をかえしてもらうんだから!」
「君には無理だと思うけどね。こちらには菓子の本場で修業してきたトオマさんがいるから」
「俺もいるぜ!」
「トオコさん、僕には勝てませんよ!僕、こんな家を作れるくらいの腕前なんですから」
やんわり馬鹿にされたトオコの額に怒りのマークがうかびました。
負けず嫌いのトオコの闘志に火がともりました。
「私、お菓子作りには自信があるの!まっててツクモ、お姉ちゃん頑張るからね!」
「がんばって、トオコちゃん」
「じゃあ、三日後に」
ツクモはどれいその二に担がれて、家の中に連れて行かれました。
「とは言ったものの、困ったわ」
お菓子の家から追い出されたトオコは、ひとり途方に暮れていました。
いったん家に帰ろうにも道が分からず、ケーキを作るための材料もアイデアもありません。
こんなことになったのも、あの大きい自称小鳥のせいだと、恨みたくなりました。
「あれ、トオコさん。どうしたんですか」
その時、ちょうど小鳥のセンシロウに空から声をかけられました。
「どうしたの、じゃないわよ!大変なの」
トオコはセンシロウに、事情を話しました。
「そっか、弟さんが。だったら、ケーキ作りに必要な『幻の○○』っていう材料があるから、森の精霊にお願いしてみるといいよ。俺が案内してあげる」
「いいえ、時間もないし、また迷ったら困るから地図をちょうだい」
残念がるセンシロウに地図を描いてもらい、お弁当に特製センシロウボックスをもらって、トオコは精精に会いに行きました。
途中、センシロウが上空から先導してくれましたが、まったく役に立ちませんでした。
しばらく歩いていても、なかなか精精の住みかに辿りつけません。
トオコが不安になっていると、目の前の大きな木の上から声がしました。
「おい、お前人間だな。こんな森の奥になんの用だ」
声の主は不機嫌そうにトオコの前におりて来ました。
トオコはひとめ見て精霊だと分かりました。
その人は黒いかみに、銀のヒトミ、とても美しい姿をしていたからです。
「あなたが森の精霊ね、お願い、『幻の○○』を私にちょうだい!」
トオコはこれまでの事情を精霊に話しました。
「…そうか。お前の事情などどうでもいいが、どちらにしろ『幻のミルク』は渡せない。悪いが先約がある」
「そんな、私、どうしても勝たなくちゃいけないのに!」
大切な弟をおもって、泣きだしそうなトオコを見て、精霊は少しだけやさしく言いました。
「もうひとり、森の外れに精霊がいる。そいつに頼んでみるといい」
精霊は親切に、森の外れまでトオコを送っていきました。
精霊の住むという家の近くまで来ると、びぼうの精霊は帰っていきました。
去りぎわに、トオコが名前をきくと、精霊はゼスと名乗りました。
和菓子でつくられた家のドアをたたくと、中から小柄な黒いかみの精霊が出てきました。
「なんだ、お前。人間がなんの用だ」
さっきの精霊もそうでしたが、この森の精霊は無愛想だなとトオコはおもいました。
「お願い、助けて欲しいの。『幻の○○』を私にちょうだい」
トオコは今までの事情を精霊に話しました。
クロト、と名乗った精精は意外にも情にもろい妖精でした。
「あの魔女は手強いぞ。僕も何度か拉致られそうになった。お前に勝ち目があるとは思わないが、『幻のあんこ』をお前にくれてやる」
「本当?ありがとう!…って、ちゃんと話聞いてたの?ケーキコンテストだって言ったじゃない!どうしてあんこなのよ」
「知らん。僕は和菓子専門だ。これを渡すには取り引きが必要だ。お前はなにが出来る?」
「えっと、そうね。だったらあなたにおいしいお菓子を作るわ。どら焼きなんてどうかしら」
「悪くないな…。じゃあさっそく作ってみせろ」
トオコはキッチンを借りて、張り切ってどら焼きを作りました。
「さあ、できたわ!見た目はちょっと悪いけど、たぶんおいしいから!」
「お前、分かっているのか。菓子は見た目も重要なんだぞ」
差し出されたどら焼き、のような物体を、クロトは恐る恐る口に入れました。
「…!お、おまっ…うっ‥ぐふっ!」
「えっ、『おまえ、うまい』ですって!?ありがとう、なんか自信つく~」
あまりの衝撃的な味に、クロトは気絶してしまいました。
「じゃあ、『幻のあんこ』勝手にもらっていくわね~」
これで弟を助けられると、トオコは喜び勇んで捕われているツクモのところに向かいました。
どれいその二に面会は駄目だと言われたので、トオコはトオマに頼んで、こっそりとツクモのところに案内してもらいました。
ツクモは牢屋…ではなく、お菓子で作られたごうかな部屋で、魔女にもてなされていました。
「これもおいしいよ。シュウセイ」
「そうだろう?他に欲しい物があったらなんでも言って。後でいっしょにお風呂に入ろうか」
まさに、至れり尽くせり。
マカロンのソファーに座り、色とりどりのお菓子に囲まれて、ツクモは嬉しそうでした。
その様子を窓から見ていたトオコは少しがっくりしながらも、
「きっとあの魔女はツクモをぶくぶくに太らせて食べちゃうつもりなんだわ。でも残念ね、ツクモは太らない体質なんだから!待ってて、お姉ちゃん頑張るからね!」
と、意気込んでケーキコンテストの会場に向かいました。
ケーキコンテスト開催の日がやって来ました。
会場に指定されたケーキ店に向かったトオコは、そこで前のお父さん、タカシロに会いました。
「タカシロお父さん!今までどこでなにをしていたの?」
「おや、トオコ。元気だったかい?君もコンテストに参加するのか。悪いが私も負けるわけにはいかないよ」
タカシロお父さんは蒸発した後、洋菓子店「T&Y」のオーナーになり、遠く離れた町で成功していました。
トオコは充実して元気そうなお父さんに安心しながらも、お父さんと勝負をしなければならないことに苦しい気持ちになりました。
そして、コンテストが始まりました。
参加者は、「T&Y」の菓子職人。森の魔女の専属菓子職人。トオコの三人だけでした。
審査員には、タカシロと森の精霊ゼス、「T&Y」とフランチャイズ契約を結んだ洋菓子店の店長、タチバナが選ばれました。
「ちょっと、ゼスはともかく、身内を審査員にするなんてずるいわよ!」
トオコは文句を言いましたが、批判は受けつけないと言われました。
一人目のケーキの審査が始まりました。
「T&Y」の菓子職人ユキは、アイシングで飾りつけた純白のウエディングケーキを用意しました。
「精霊から分けてもらった『幻のミルク』を、隠し味に使いました」
審査員も一般の人も大絶賛でした。
二人目のケーキの審査が始まりました。
専属菓子職人のトオマは、長年の腕前を生かして、森のお菓子の家をそのままミニチュアサイズにしたケーキを用意しました。
「これで優勝すれば、僕はどれい契約期間を解消できますぅ~」
審査員はともかく、一般の人は大絶賛でした。
三人目のケーキの審査が始まりました。
「私の自信作、『幻のあんこ』を使った和風トオコスペシャルです!」
世にも奇妙な真っ黒な物体を食べた審査員のタチバナと、一般人はあまりの不味さに気絶してしまいました。
運命の結果発表がやってきました。
「優勝は、森の魔女の専属菓子職人、トオマさんです!」
「本当ですか?ありがとうございますぅ~、これで僕も自由の身なんですね!」
「じゃあ、トオコ。約束通りツクモは俺の物だよ。タカシロオーナー、ありがとうございました。例の物は後程お届けしますので」
「お安いご用だよ。うちもいい宣伝になった」
シュウセイ魔女は自分が勝つためにタカシロに賄賂を送っていました。
「どうしよう、ツクモが食べられちゃうわ」
わあわあと泣きだしたトオコに、菓子職人のユキが優しく手を差し伸べました。
「トオコちゃん、僕がかわりに魔女さんのところに行きます。悲しんでいる女の子を放って置けませんから」
「ユキが来てくれるの?じゃあツクモは返してあげる」
魔女はあっさり言いました。
「ユキがいなくなったら私が困るな。では、シュウセイはそこのトオマを連れて私の店に来なさい。店としても利益が上がるし、お互いに悪い話ではない。そこの精霊も、ユキの下で働くといい」
「ルカ、いいの?」
「ああ。お前が望んでくれるのなら」
タカシロはよい具合に皆を丸め込みました。
「えーっ!僕優勝した意味ないじゃないですかーっ!」
トオマの人権は軽く無視されました。
トオコは精霊ゼスが本当の名前を教えなかったことに怒りましたが、なにはともあれ、これでツクモと帰ることが出来てほっとしました。
「おーーい、トオコ!」
「イスズお父さん!イブキお母さん!」
「まったく、なかなか帰って来ないと思ったらお菓子コンテストに出場しているだなんて、父さん驚いたぞ」
「見ていたわよ、あなたの活躍。お母さん、育て方を間違えていたわ。帰ったら、みっちりお菓子のお勉強しましょうね」
お父さんとお母さんに事情を話し、ツクモを迎えに行ってから帰ることにしました。
「悪かった、トオコ。これからは毎日風呂に入るし、ケーキバイキングにも連れて行ってやるし、着古した服も着ないし、セクハラまがいの言動も控えるから」
「私もごめんなさい。これからはもっと仲良く暮らそうね」
こうしてトオコはツクモを助け出し、反抗期を乗り越えながら仲良く暮らしました。
「T&Y」は新しい社員を迎えたことで更に事業が軌道にのり、世を代表する有名な菓子店になりました。
数年後には魔女も独立し、「S&D&D2」(シュウセイとドレイとドレイその二の店)を開店し、こちらも有名店になりました。
みんなが傷つかず、幸せな結末を迎えることが出来たのです。
ちなみに、タカシロお父さんと、イスズお父さんと、イブキお母さんが少しだけ修羅場になったことは、子どもの夢を壊すのでまた別のお話…。
おわり。
「‥もっと食べたかった‥」
「‥‥九十九くん?」
甘いお菓子の香りに包まれながら、どこか遠くで声が聞こえた。
ゆっくりと微睡みから意識を目覚めさせ、九十九は瞼を開ける。
「夕月、おはよう」
夢の世界から戻り切らない、とろんと下がった瞼で、九十九は自分を覗き込む夕月に声を掛けた。
「お菓子を食べながら眠っちゃったんですか?」
「うん、すごくおいしい夢だった。もっと視ていたかったな」
大好きなお菓子を好きなだけ食べる。
そんな幸せな夢だった、気がする。
眠りながらもしっかりと握っていたスナック菓子の袋を見詰め、九十九が名残惜しそうに呟いた。
「ゆっきー!ご本読んでー!」
明るく元気なソドムの声がリビング一杯に響き、ぼんやりとした頭が現実に引き戻される。
ソドムは夕月の腰に勢いよく抱きつき、絵本を差し出して読み聞かせをせがんだ。
「うん、じゃあお部屋に行く?」
「俺も聞いてていい?」
「はい、もちろんです。でも退屈じゃないですか?」
「ううん、俺、夕月の声好き」
「じゃあつっくんも一緒ねー」
夕月と九十九の手を引いて、三人でソファーに座る。
真ん中に座った夕月に寄り添いながら、ソドムと九十九は開いた絵本を覗いた。
「ヘンゼルとグレーテル。俺、この話好き。おいしそうなお菓子がいっぱい出てくるんだ」
「ふふっ、九十九くんらしいですね。僕もお菓子の家には憧れました」
ソドムと九十九は揃って甘いお菓子の描かれた挿絵を見詰め、瞳を輝かせている。
その様子を微笑ましく思いながら、夕月は読み聞かせを始めた。
「むかし、ある村に、ヘンゼルとグレーテルという仲のよいきょうだいが‥」
夕月の柔らかな声音が、黄昏時のリビングに溶けていった。
ヘンゼル ツクモ
グレーテル トオコ
母 イブキ
前父 タカシロ
後父 イスズ
森の小鳥 センシロウ
魔女 シュウセイ
奴隷 トオマ
奴隷2 ホツマ
森の精霊 ルカ
森の精霊2 クロト
菓子職人 ユキ
むかし、ある村に、トオコとツクモという、とても仲のよい姉弟がいました。
二人の前のお父さんはとてもお金もちでしたが、ある日、突然「私はお菓子作りを極めたい」と言って、家を出ていってしまいました。
美人なお母さんは新しいお父さんに、とある有名な科学者を婿にむかえました。
四人はしばらくの間は幸せにくらしていました。
ところが、姉のトオコが年ごろになると、お父さんとの距離が少しづつ広がりました。
「お父さんのくつ下と私の下着をいっしょに洗わないで」
「ひげが汚い」
「お父さんの後のお風呂はいや」
「まじうざい」
と、お父さんを毛嫌いするようになりました。
「まったくトオコには困ったもんだな。お父さんのどこが悪いってんだ。まあ、研究に没頭するとあの子たちにかまってやれないのは反省しているが」
「あの子も難しい年ごろなんです。藤原先生、仕事もけっこうですが、二人ともっとお話してくださいね。それから、若い娘の前では常にせいけつに」
「気を付けるよ。それはそうと、イブキ。藤原先生はやめないか。あ・な・たとか、イスズさんとか呼んでくれよ」
「いやです」
そんなある日、お父さんとけんかをしたトオコは、弟のツクモを連れて、家をとびだして行ってしまいました。
「もう、ちょーむかつく!イスズお父さんたら、『トオコ、ケーキでも食べに行かないか。お前の菓子作りが上達するように、お父さんが美味いケーキというものを科学的に証明してやろう』だなんて言ったのよ!私の作るお菓子がまずいみたいじゃない、ほんと、でりかしーのない人なんだから!」
「落ち着いて、トオコちゃん。トオコちゃんの作るお菓子はおいしいよ。それに、お父さんも、もっとトオコちゃんと仲よくなりたかったんだよ」
「分かってるけど‥。どちらもちょっと変態っぽかったけど、私はタカシロお父さんのほうがよかったわ」
「うん、どこに行っちゃったんだろうね。お父さん。俺たちのこと忘れちゃったのかな」
「そうね…」
二人はタカシロお父さんのことを思い出して、悲しくなりました。
「あっ、そういえばこんな森の奥まで来ちゃったけど、どうしよう!帰り道が分からないわ」
「大丈夫。迷子にならないように、道にお菓子を落としてきたんだ。これを伝って帰ろう」
「さすが私の弟ね!帰ったらお父さんに謝るわ。帰りましょうツクモ」
二人は道に落としたお菓子を伝ってもと来た道をたどりました。
ところが、目印のお菓子が途中でなくなっています。
「あれ、お菓子がなくなってるよ」
「やだ、本当!これじゃあお家に帰れないわ」
二人がお菓子のなくなった道の先を見ると、一羽の小鳥がせっせとお菓子をひろっていました。
「ああ、もう。こんなところにお菓子を落としていくなんてもったいないなあ」
「あーっ、ちょっとなにしてるのよ!」
「うわあっ!びっくりしたなあ。君たち、食べものは大切にね」
「それは俺たちが家に帰るための目印だったんだ」
「あ、そうなのかい?ごめん、悪いことしちゃったね。俺、小鳥のセンシロウって言います。おわびに君たちを家まで案内するよ」
小鳥…というにはかなり大きい鳥でしたが、本人は小鳥だと言い張っていました。
二人はセンシロウの案内で家まで送ってもらうことにしました。
ところが、いつまで経っても家に着きません。
辺りはすっかり暗くなってしまいました。
「あれっ、おかしいな。確かこっちだったと思ったのに」
「小鳥さん、迷っちゃったの?」
「あはは、そうみたい。あっ、そろそろ夕食のしたくをしないと!じゃ、二人とも。俺はこの辺で!」
「ちょっとちょっと、困るわよ!家に帰れないじゃない」
「この先の森に精霊がいるから、その人に聞いてみて。また様子を見に来るから。それじゃあ!」
小鳥は道案内を途中で放棄して、さっさと飛び立っていきました。
「どうしよう。怖いわツクモ」
「大丈夫、トオコちゃんは俺が守るから」
二人は励まし合いながら森を進みました。
しばらく森の中を歩いていると、遠くにカラフルな家が見えてきました。
甘い匂いも漂って来ます。
「ねえ、あれってお菓子の家じゃない?どうしてあんなところに?」
「…おいしそう」
甘いお菓子の香りに誘われて、ツクモはふらふらと歩いて行きました。
トオコもあわてて後を追います。
辿り着いたお菓子の家を見て、二人は驚きました。
立派な門はあめ細工、大きな庭に咲く花々は砂糖菓子、地面までも色とりどりのゼリービーンズで作られていて、ぶよぶよとふしぎな感しょくがしました。
小さなお城のような家は、屋根はビスケット、壁はチョコレート、扉はクッキーと全ておいしそうなお菓子で作られていました。
「すごいわ、なんてきれいなのかしら」
トオコが見とれている間に、ツクモは壁のチョコレートを剥がしてむしゃむしゃと食べ始めました。
「あっ、駄目よツクモ!誰が作ったのか分からないのに危ないわ」
トオコが止めようとすると、どこからか声が聞こえてきました。
「製作者は僕です~」
声のした方向を見ると、壁によじのぼってフルーツを貼りつけているコック帽子をかぶった男性が手を振っていました。
「あなたが作ったの?すごくおいしいよ」
「えへへ、そうですか?ありがとうございます。そのチョコレートはカカオにこだわって何度もテンパリングを重ねた自信作で…ってそんな場合じゃない!早く逃げてください!ここには恐ろしい魔女が‥」
その時です。
上空からかっちかちに焼かれたメレンゲの網が落ちてきて、ツクモを捕らえてしまいました。
「っしゃあ!!捕まえたぜ」
「よくやった、ホツマ」
網を投げた金髪の男性と、きれいな男性が、トオコの前に現われました。
「ちょっと!ツクモになにするのよ!」
「俺は魔女のシュウセイ。俺の家を食べたからね。この子は俺の物だよ」
「うわあーん!だから逃げてって言ったのに!僕も魔女さんに誘惑されて、どれいにされちゃったんですぅ~」
「トオマさんは専属菓子職人として働いてもらってるんだ。ちなみに隣のこいつはどれいその二のホツマ」
「自己紹介なんてどうでもいいのよ!早く弟をかえしてっ」
「かえして欲しいの?だったら俺と勝負しない?どちらがおいしいお菓子を作れるか」
シュウセイがぱちんと指をならすと、一枚のチラシがトオコの前に舞い降りてきました。
「なに?『ケーキ作りコンテスト』?」
「そう、もし君がこれに優勝出来たらツクモをかえしてあげる」
「いいわ、コンテストまでツクモになにもしないって約束して!優勝して、弟をかえしてもらうんだから!」
「君には無理だと思うけどね。こちらには菓子の本場で修業してきたトオマさんがいるから」
「俺もいるぜ!」
「トオコさん、僕には勝てませんよ!僕、こんな家を作れるくらいの腕前なんですから」
やんわり馬鹿にされたトオコの額に怒りのマークがうかびました。
負けず嫌いのトオコの闘志に火がともりました。
「私、お菓子作りには自信があるの!まっててツクモ、お姉ちゃん頑張るからね!」
「がんばって、トオコちゃん」
「じゃあ、三日後に」
ツクモはどれいその二に担がれて、家の中に連れて行かれました。
「とは言ったものの、困ったわ」
お菓子の家から追い出されたトオコは、ひとり途方に暮れていました。
いったん家に帰ろうにも道が分からず、ケーキを作るための材料もアイデアもありません。
こんなことになったのも、あの大きい自称小鳥のせいだと、恨みたくなりました。
「あれ、トオコさん。どうしたんですか」
その時、ちょうど小鳥のセンシロウに空から声をかけられました。
「どうしたの、じゃないわよ!大変なの」
トオコはセンシロウに、事情を話しました。
「そっか、弟さんが。だったら、ケーキ作りに必要な『幻の○○』っていう材料があるから、森の精霊にお願いしてみるといいよ。俺が案内してあげる」
「いいえ、時間もないし、また迷ったら困るから地図をちょうだい」
残念がるセンシロウに地図を描いてもらい、お弁当に特製センシロウボックスをもらって、トオコは精精に会いに行きました。
途中、センシロウが上空から先導してくれましたが、まったく役に立ちませんでした。
しばらく歩いていても、なかなか精精の住みかに辿りつけません。
トオコが不安になっていると、目の前の大きな木の上から声がしました。
「おい、お前人間だな。こんな森の奥になんの用だ」
声の主は不機嫌そうにトオコの前におりて来ました。
トオコはひとめ見て精霊だと分かりました。
その人は黒いかみに、銀のヒトミ、とても美しい姿をしていたからです。
「あなたが森の精霊ね、お願い、『幻の○○』を私にちょうだい!」
トオコはこれまでの事情を精霊に話しました。
「…そうか。お前の事情などどうでもいいが、どちらにしろ『幻のミルク』は渡せない。悪いが先約がある」
「そんな、私、どうしても勝たなくちゃいけないのに!」
大切な弟をおもって、泣きだしそうなトオコを見て、精霊は少しだけやさしく言いました。
「もうひとり、森の外れに精霊がいる。そいつに頼んでみるといい」
精霊は親切に、森の外れまでトオコを送っていきました。
精霊の住むという家の近くまで来ると、びぼうの精霊は帰っていきました。
去りぎわに、トオコが名前をきくと、精霊はゼスと名乗りました。
和菓子でつくられた家のドアをたたくと、中から小柄な黒いかみの精霊が出てきました。
「なんだ、お前。人間がなんの用だ」
さっきの精霊もそうでしたが、この森の精霊は無愛想だなとトオコはおもいました。
「お願い、助けて欲しいの。『幻の○○』を私にちょうだい」
トオコは今までの事情を精霊に話しました。
クロト、と名乗った精精は意外にも情にもろい妖精でした。
「あの魔女は手強いぞ。僕も何度か拉致られそうになった。お前に勝ち目があるとは思わないが、『幻のあんこ』をお前にくれてやる」
「本当?ありがとう!…って、ちゃんと話聞いてたの?ケーキコンテストだって言ったじゃない!どうしてあんこなのよ」
「知らん。僕は和菓子専門だ。これを渡すには取り引きが必要だ。お前はなにが出来る?」
「えっと、そうね。だったらあなたにおいしいお菓子を作るわ。どら焼きなんてどうかしら」
「悪くないな…。じゃあさっそく作ってみせろ」
トオコはキッチンを借りて、張り切ってどら焼きを作りました。
「さあ、できたわ!見た目はちょっと悪いけど、たぶんおいしいから!」
「お前、分かっているのか。菓子は見た目も重要なんだぞ」
差し出されたどら焼き、のような物体を、クロトは恐る恐る口に入れました。
「…!お、おまっ…うっ‥ぐふっ!」
「えっ、『おまえ、うまい』ですって!?ありがとう、なんか自信つく~」
あまりの衝撃的な味に、クロトは気絶してしまいました。
「じゃあ、『幻のあんこ』勝手にもらっていくわね~」
これで弟を助けられると、トオコは喜び勇んで捕われているツクモのところに向かいました。
どれいその二に面会は駄目だと言われたので、トオコはトオマに頼んで、こっそりとツクモのところに案内してもらいました。
ツクモは牢屋…ではなく、お菓子で作られたごうかな部屋で、魔女にもてなされていました。
「これもおいしいよ。シュウセイ」
「そうだろう?他に欲しい物があったらなんでも言って。後でいっしょにお風呂に入ろうか」
まさに、至れり尽くせり。
マカロンのソファーに座り、色とりどりのお菓子に囲まれて、ツクモは嬉しそうでした。
その様子を窓から見ていたトオコは少しがっくりしながらも、
「きっとあの魔女はツクモをぶくぶくに太らせて食べちゃうつもりなんだわ。でも残念ね、ツクモは太らない体質なんだから!待ってて、お姉ちゃん頑張るからね!」
と、意気込んでケーキコンテストの会場に向かいました。
ケーキコンテスト開催の日がやって来ました。
会場に指定されたケーキ店に向かったトオコは、そこで前のお父さん、タカシロに会いました。
「タカシロお父さん!今までどこでなにをしていたの?」
「おや、トオコ。元気だったかい?君もコンテストに参加するのか。悪いが私も負けるわけにはいかないよ」
タカシロお父さんは蒸発した後、洋菓子店「T&Y」のオーナーになり、遠く離れた町で成功していました。
トオコは充実して元気そうなお父さんに安心しながらも、お父さんと勝負をしなければならないことに苦しい気持ちになりました。
そして、コンテストが始まりました。
参加者は、「T&Y」の菓子職人。森の魔女の専属菓子職人。トオコの三人だけでした。
審査員には、タカシロと森の精霊ゼス、「T&Y」とフランチャイズ契約を結んだ洋菓子店の店長、タチバナが選ばれました。
「ちょっと、ゼスはともかく、身内を審査員にするなんてずるいわよ!」
トオコは文句を言いましたが、批判は受けつけないと言われました。
一人目のケーキの審査が始まりました。
「T&Y」の菓子職人ユキは、アイシングで飾りつけた純白のウエディングケーキを用意しました。
「精霊から分けてもらった『幻のミルク』を、隠し味に使いました」
審査員も一般の人も大絶賛でした。
二人目のケーキの審査が始まりました。
専属菓子職人のトオマは、長年の腕前を生かして、森のお菓子の家をそのままミニチュアサイズにしたケーキを用意しました。
「これで優勝すれば、僕はどれい契約期間を解消できますぅ~」
審査員はともかく、一般の人は大絶賛でした。
三人目のケーキの審査が始まりました。
「私の自信作、『幻のあんこ』を使った和風トオコスペシャルです!」
世にも奇妙な真っ黒な物体を食べた審査員のタチバナと、一般人はあまりの不味さに気絶してしまいました。
運命の結果発表がやってきました。
「優勝は、森の魔女の専属菓子職人、トオマさんです!」
「本当ですか?ありがとうございますぅ~、これで僕も自由の身なんですね!」
「じゃあ、トオコ。約束通りツクモは俺の物だよ。タカシロオーナー、ありがとうございました。例の物は後程お届けしますので」
「お安いご用だよ。うちもいい宣伝になった」
シュウセイ魔女は自分が勝つためにタカシロに賄賂を送っていました。
「どうしよう、ツクモが食べられちゃうわ」
わあわあと泣きだしたトオコに、菓子職人のユキが優しく手を差し伸べました。
「トオコちゃん、僕がかわりに魔女さんのところに行きます。悲しんでいる女の子を放って置けませんから」
「ユキが来てくれるの?じゃあツクモは返してあげる」
魔女はあっさり言いました。
「ユキがいなくなったら私が困るな。では、シュウセイはそこのトオマを連れて私の店に来なさい。店としても利益が上がるし、お互いに悪い話ではない。そこの精霊も、ユキの下で働くといい」
「ルカ、いいの?」
「ああ。お前が望んでくれるのなら」
タカシロはよい具合に皆を丸め込みました。
「えーっ!僕優勝した意味ないじゃないですかーっ!」
トオマの人権は軽く無視されました。
トオコは精霊ゼスが本当の名前を教えなかったことに怒りましたが、なにはともあれ、これでツクモと帰ることが出来てほっとしました。
「おーーい、トオコ!」
「イスズお父さん!イブキお母さん!」
「まったく、なかなか帰って来ないと思ったらお菓子コンテストに出場しているだなんて、父さん驚いたぞ」
「見ていたわよ、あなたの活躍。お母さん、育て方を間違えていたわ。帰ったら、みっちりお菓子のお勉強しましょうね」
お父さんとお母さんに事情を話し、ツクモを迎えに行ってから帰ることにしました。
「悪かった、トオコ。これからは毎日風呂に入るし、ケーキバイキングにも連れて行ってやるし、着古した服も着ないし、セクハラまがいの言動も控えるから」
「私もごめんなさい。これからはもっと仲良く暮らそうね」
こうしてトオコはツクモを助け出し、反抗期を乗り越えながら仲良く暮らしました。
「T&Y」は新しい社員を迎えたことで更に事業が軌道にのり、世を代表する有名な菓子店になりました。
数年後には魔女も独立し、「S&D&D2」(シュウセイとドレイとドレイその二の店)を開店し、こちらも有名店になりました。
みんなが傷つかず、幸せな結末を迎えることが出来たのです。
ちなみに、タカシロお父さんと、イスズお父さんと、イブキお母さんが少しだけ修羅場になったことは、子どもの夢を壊すのでまた別のお話…。
おわり。
「‥もっと食べたかった‥」
「‥‥九十九くん?」
甘いお菓子の香りに包まれながら、どこか遠くで声が聞こえた。
ゆっくりと微睡みから意識を目覚めさせ、九十九は瞼を開ける。
「夕月、おはよう」
夢の世界から戻り切らない、とろんと下がった瞼で、九十九は自分を覗き込む夕月に声を掛けた。
「お菓子を食べながら眠っちゃったんですか?」
「うん、すごくおいしい夢だった。もっと視ていたかったな」
大好きなお菓子を好きなだけ食べる。
そんな幸せな夢だった、気がする。
眠りながらもしっかりと握っていたスナック菓子の袋を見詰め、九十九が名残惜しそうに呟いた。
「ゆっきー!ご本読んでー!」
明るく元気なソドムの声がリビング一杯に響き、ぼんやりとした頭が現実に引き戻される。
ソドムは夕月の腰に勢いよく抱きつき、絵本を差し出して読み聞かせをせがんだ。
「うん、じゃあお部屋に行く?」
「俺も聞いてていい?」
「はい、もちろんです。でも退屈じゃないですか?」
「ううん、俺、夕月の声好き」
「じゃあつっくんも一緒ねー」
夕月と九十九の手を引いて、三人でソファーに座る。
真ん中に座った夕月に寄り添いながら、ソドムと九十九は開いた絵本を覗いた。
「ヘンゼルとグレーテル。俺、この話好き。おいしそうなお菓子がいっぱい出てくるんだ」
「ふふっ、九十九くんらしいですね。僕もお菓子の家には憧れました」
ソドムと九十九は揃って甘いお菓子の描かれた挿絵を見詰め、瞳を輝かせている。
その様子を微笑ましく思いながら、夕月は読み聞かせを始めた。
「むかし、ある村に、ヘンゼルとグレーテルという仲のよいきょうだいが‥」
夕月の柔らかな声音が、黄昏時のリビングに溶けていった。