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裏僕小説その2

    「白夕月姫」

とうじょうじんぶつ

しらゆきひめ  夕月

となりのくにの王子  ルカ

こびと  1  ツクモ
     2  トオコ
     3  シュウセイ
     4  ホツマ
     5  クロト
     6  センシロウ
     7  リア
     8  サイリ

魔女   タチバナ

しらゆきひめの父(王)  トオマ

しらゆきひめの母(妃)  アヤ

殺し屋  正宗

鏡   タカシロ


むかし、ある国に王さまとお妃さまがお城でくらしていました。


王さまとお妃さまにこどもはいませんでしたが、トオマ王はとてもりょうり上手で、アヤ妃はおさいほうから家事ぜんぱんまでなんでもこなします。


ふたりはしあわせにくらしていました。


やがてふたりは子どもをさずかり、しらゆきひめと名づけました。


しらゆきひめは男の子でしたが、そのかわいらしいようしからお城のみんなはひめとよんでいました。


しらゆきひめは少しはずかしいとかんじていました。


そんなある日、しゅうとめのいびりにたえかねた王さまがじっかにかえってしまいました。


王さまはむこようしだったのです。


かなしみにくれるしらゆきひめのためにお妃さまはきかんげんていであたらしい王さまをみつけることにしました。


それは愛じんというのではないかとしらゆきひめはおもいましたが、この国は一妻多夫制だからだいじょうぶなのですといわれました。


やがてあたらしい王さまがやってきました。


「はじめましてユキひめ。ぼくはタチバナ。えんりょなくおかあさんてよんでいいからね」


「え?おと・・おか、おかあさん?」


そのひとはどうみても男のひとでしたが、なぜかじぶんをおかあさんとよばせたがりました。


へんなぼうしもかぶっています。


あたらしい王さまにはひみつがありました


その王さまはおそろしいまじょだったのです。


王さまはふしぎなかがみをもっていました。


そしてまいあさそのかがみにむかってたずねます。


「かがみよ、かがみ。この国でいちばんかわいいのはだーれだ」


するとかがみはめんどうそうにこたえます。


「この国でいちばん美しいのは私だが、いちばんかわいいのはユキに決まっている」


「なんですってー!むきー!ゆるせないわ、ぼくよりかわいいなんてっ!」


王さまはとてもおこってしらゆきひめをまっさつすることにきめました。


「正宗くーん!すこしかわいそうだけどあの子をころしておしまい!」


「まじっすか!?だめっすよ、かわいそうですって!」


「いいから!さっさとやるの!」


「むりだとおもうけどねえ・・」


かがみのあきれたようなつぶやきを王さまはむししました。



りょうし兼ころし屋の正宗は王さまを止めましたが、めいれいにはさからえず、しかたなくしらゆきひめを森にさそいだしました。


そしてしらゆきひめをころそうとグリムワールをかまえましたが、かわいそうでころすことなどできません。


「ひめさま、はやくにげたほうがいいっすよ!森のおくにしんせきのこびとがいますから、そこにいってください!」


りょうしはしらゆきひめをころしたとうそをつきました。


王さまはとてもよろこびました。


そのころ、しらゆきひめはひとりぼっちで森の中をあるいていました。


「こまったなあ、くらくなってきたし、どうしよう」


しばらくあるくと、あかりがみえました。


ちかづいていくと、それは小さな家でした。


どうみてもこびとの家なので、ここがりょうしのいっていたしんせきの家だとすぐにわかりました。


しらゆきひめは小さなドアをたたきました。


ごめんくださいといってもだれもいません。


「すみません、おじゃまします」


しらゆきひめはりちぎにことわってから中にはいりました。


しらゆきひめはとてもつかれていたのでこびとのベッドをかりてねむらせてもらうことにしました。


しばらくして、しごとをおえた七・・八にんのこびとたちがかえってきました。


「あーはらへったー、せんしろう、なんかつくってくれよー」


「はいはい、いまつくるよ」


「あれ?だれかねてるよ」


ぎんいろのかみをしたこびとがベットでねむるしらゆきひめをみつけました。


「やだっ!ちょうかわいい!だれこの子?」



八にんのこびとのうち、ふたりの女の子のこびとがおおさわぎしています。


「お城にすむしらゆきひめだろ」


いち番ねんちょうのこびとがれいせいに言いました。


「まあ、つかれているみたいだからこのままねかせてあげよう」


きこうしのようなきれいなこびとが言いました。



よく朝、目をさましたしらゆきひめはこびとたちにあやまり、いままでのわけをはなしました。


「なんておそろしい王だ!あんしんしろ、ぼくたちがまもってやる!」


黒いかみのこびとがはらをたてておこりました。


「ずっとここにいればいいよ。こわいおもいしたね」


めがねをかけたこびとが、しらゆきひめをやさしくなぐさめました。


しらゆきひめはしばらくおせわになることにしました。


何もしなくていいと言われましたが、おせわになるのですからおてつだいをさせてくださいとたのみ、りょうりやせんたくや、そうじをしてすごすことにしました。


「おそろしい王さまがころしにやってくるかもしれないからぜったいにドアをあけないでね」


と、こびとたちはしごとにでかけるまえにいいきかせました。


そのころ、お城では、王さまがおおよろこびでかがみにむかいたずねます。


「かがみよかがみ、この国でいちばんかわいいのはだーれだ」


ところがかがみはさもめんどうそうに、


「いちばんうつくしいのは私、いちばんかわいいのはしらゆきひめ。なんども言わせるな」


と、言いました。


ものすごくおこった王さまはこんじょうでしらゆきひめのいばしょをつきとめて、みずからころしに行くことにしました。


王さまはりんごうりのおばあさんにへんそうして、もりにでかけました。


「おいしいりんごはいかが~?いまならとくべつにわりびきするよん」


やさしいこえにしらゆきひめはドアをあけてしまいました。


「おいしいりんごだよん、ささっ、ししょくしてみて」


王さまはりんごをうさぎがたにきりわけて、しらゆきひめにさしだしました。


しらゆきひめは一口たべると、ゆかにたおれてしまいました。



しばらくして、ていじでしごとをおわらせた七・・八にんのこびとがかえってきました。



ゆかにたおれたしらゆきひめを見つけておうきゅうしょちをしましたが生きかえりません。


どうぶつとはなしができるこびとが、これはへんそうした王さまのしわざだと言いました。


「あのやろーっ!ぜってー許せねえ!」


きんぱつのこびとがぶきをもってとびだして行こうとしました。


「まつんだホツマ。ここはれいせいになれ」


「んだよ、シュウセイ!お前だってくやしいだろうが!」


シュウセイとよばれたこびとがいかりにこうふんするみんなを止めました。


「やみくもに行ってもかえりうちにあうだけだ。ここはしらゆきひめがまだ生きているとおもわせて、王さまをおびきだそう」


こびとたちはみんなで王さまにふくしゅうすることにしました。


こびとたちは、



しらゆきひめといっしょにくらしています。



と、いう手紙を王さまにおくりました。


しらゆきひめをガラスのひつぎにいれ、はなでかざり、お庭でどうぶつたちといっしょにそうぎをしました。


こびとたちはそれぞれのぶきをもち、王さまを待ちかまえます。


そこへ、となりのくにの王子さまがとおりかかりました。


その王子さまは、ぎんいろのひとみにしっこくのかみの、とてもうつくしい王子さまでした。


王子さまはひつぎにねむるしらゆきひめのあまりのかわいさにこころをうばわれてしまいました。


もうこれはうんめいだとおもいました。


「しらゆきひめはおれがもらう」


と、まるで悪やくのようなせりふを言って、王子さまはガラスのひつぎをあけて、しらゆきひめにキスをしました。


こびとたちは王さまではなく、目のまえの王子さまに殺いがわきました。


「てめえ!しらゆきひめになにしやがんだ!」


おこったきんぱつのこびとがぶきをもって王子さまにきりかかりました。


ですがこびとがひつぎにつまづき、しらゆきひめのみぞおちにあたまをぶつけました。


「けほっ・・」


するとどうでしょう。しらゆきひめの口からどくりんごのかけらがおちました。



しらゆきひめは生きかえりました。


おきあがったしらゆきひめは、たすけてくれた王子さまとホツマにお礼を言いました。


ホツマはとくいげにふんぞり返りました。


王子さまはしらゆきひめの手をとり、


「おれはルカクロスゼリア。俺をおまえのものにしてくれないか」


と、びみょうなプロポーズをしました。


しらゆきひめはほおを赤くそめて、


「うれしいです。でも、母とじっかにかえった父とタチバナお母さんをおいていけません」


と、こたえました。


「まったくもんだいない。俺がむこようしに入る」


と、王子さまはあっさり言いました。


それならばと、しらゆきひめはけっこんをしょうだくしました。


王子さまとしらゆきひめとこびとはお城にむかいました。


お城ではふたりのためにせいだいなけっこんしきがはじまりました。


それをしった王さまはしらゆきひめにおそいかかろうとします。


ところが、かいだんから足をすべらせておちてしまいました。


しらゆきひめは王さまをゆるしました。


かいしんした王さまは、じっかからもどってきたもう一人の王さまとお妃さまとなかよくくらしました。


いっしょについてきたこびとたちはしらゆきひめせんぞくのごえいになりました。


こうしてルカ王子さまとしらゆきひめはすえながくしあわせにくらしました。


           おわり。


「・・・き、ゆっきー・・・?」


「・・・うん・・・あれ?」


誰かに体を揺すられ、夕月は微睡みかけた意識を覚醒させた。


いつに間にか眠ってしまっていたらしい。


隣でソドムが心配そうに夕月を見上げている。


「ゆっきー大丈夫?うーんって、苦しんでたの」


「大丈夫だよ、ありがとう。絵本を読む途中で眠っちゃってごめんね」


もたれていたソファーから身を起こせば、額や手の平にじっとりと汗を掻いていた。


夢を視ていた気がするのだが、どうにも思い出せない。


きっと眠りが浅かったのだろう。


夕月は大きく伸びをし、完全に意識を覚醒させると、絵本の続きを読み始めた。


ソドムはぴたりと夕月に添い、嬉しそうに耳を傾けている。


「七人の小人は白雪姫を・・・」


再び絵本を読み始める頃には、さっき視た夢の内容のことなど、頭から消えていた。
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