吉原編
あなたのお名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ドォーン
轟音が鳴り響き、部屋が大きく揺れる。
やはり戦いが始まったのだろう。立ち上がり、窓から覗き込む。
あの御方の部屋の壁が大破し、団長と共に屋根の上にいた。固唾を飲み込み、じっと見つめてしまう。
二人の戦いが始まる。
初めに団長は飛び蹴りを叩き込む。難なくあのお方は受けるが、反対の足が再び襲う。
血が舞った。
団長の足をあのお方が突いて止めたのだ。団長は足で首を抱え込むが、そのまま顔を捕まれ、地面に叩きつけられる。あの御方の追撃が入ろうとしたその時、団長は足で止めた。
膠着状態に入る。何かを喋っているようだが、こちらには何も聞こえない。
おそらく団長があの御方を怒らしたのだろう。頭を掴まれ、団長は壁に向かって投げられた。大きな音がし、壁が崩れる。
ゆっくりと団長は屋根の上に戻ってきた。再び両者は睨み、ぶつかる。酷い煙が舞い上がった。
煙が晴れた後、立っているのはあの御方と団長、そして阿伏兎。云業は間で倒れている。仲裁に入った結果、亡くなったのだろう。よく見ると、阿伏兎の片腕もない。一人と腕一本、これがあの二人の喧嘩を止めるのに必要だった代償だろう。
彼らが部屋に戻るのを見て、やはり思う。
神威も強いが、あの御方は強い。自分の体が熱くなるのを感じた。私も夜兎だ。この身に宿る血は強い敵を、あの人と戦いたいと、そう強く望んでいる。
ああ、やりたいなあ
「センカ、それはあんたがやりたい事なのかい?」
『ひのわねえ?』
「あんたの母親を思い出しな」
わたしのかあさま?
かあさまは⋯⋯母様は⋯⋯
ああ、私は何を思っていたんだろう。あの御方を殺したいだなんて。私なんかが適うわけないのに。
私は窓の景色から目をずらし、日輪姉の方をみる。日輪姉は少し緊張していたようだ。私が暴れられたら、日輪姉は止められないから。
『ごめん、日輪姉』
「大丈夫さ。それより、静かになってる。戦いが終わったんじゃないのかい」
『喧嘩は終わったみたい、決着はついていないけど』
「そうだろうねぇ、夜兎の喧嘩がこんなにあっさり終わるはずがないだろう」
『うん、そうだね』
side新八
カチャカチャと金具の音が響く。月詠さんに貰った百華の服を着る音だ。
誰一人、口を開く事は無い。これからの戦いへの緊張が高まっている。いつもやる気のない銀さんも、真剣な雰囲気を出している。
「すまぬ、わっちがもっと早くに逃がしていれば⋯⋯」
「謝る必要なんてねぇよ」
月詠の謝罪を銀さんは止めた。
「行くのか?」
「行かなきゃ、晴太くんが死にます」
彼は今はたった一人であそこにいる。春雨の所か夜王の所かは分からないけれど、どちらでも危険は変わらない。放っておけば死は避けられないだろう。
「行けばぬしらも死ぬ。夜兎が5人。軍隊1個でも足りんぞ」
「あいつは私が何とかしなきゃ行けないネ」
「月詠さん、今、5人って言いましたか?」
僕の耳は月詠さんが言った言葉の違和感を逃がす事はしなかった。
「ああ、そうだ。夜兎は5人いるはずだ」
「春雨が3人と夜王⋯⋯後1人は誰ネ?」
神楽ちゃんが思い出そうとするけど、該当する人物は出ない。僕には一人だけ候補がいた。あの日すれ違った、神楽ちゃんの姉だという人。晴太君が知っていたから、吉原に関係する人だというのは間違いないだろうけど⋯⋯
「もう1人も春雨、その名はセンカ。 夜王の娘だ」
「や、夜王に娘がいるんですか?」
「ああ、吉原と春雨の連絡係をしている。春雨がここにいる以上、必ず居るだろう」
夜王の娘、強いのは分かっている。その上、春雨の人物だなんて。彼女も倒さなくては行けないのだろう。
女であること、共通点が出来てしまう。銀さんの中でも辿り着いたのだろう。銀さんは月詠さんに聞いた。
「そいつは夜狐って呼ばれてるか?」
「知っておるのか?」
その言葉は肯定と同じだ。そして、神楽ちゃんにとって最悪の答えでもある。
「私の姉アル⋯⋯なんで、バカ兄貴と同じ所に」
「センカは5歳からは吉原を出たから詳しい事は知らぬのじゃ。すまない。だが、あの子はずっと吉原を出た後は春雨にいた。それだけは確かじゃ」
そう言った月詠さんの表情を伺う事は出来なかった。だけど、深い後悔が滲み出ていた。
「おそらくセンカは日輪の所にいる。会えない事はないだろう」
「なんで日輪さんの所なんですか?」
「あの子が小さい頃、よくわっちと日輪とセンカとウメールで過ごしていた。まだあそこにいるのは日輪だけ。必然とそこに行くはずじゃ」
「ウメール? 誰アルか?」
神楽ちゃんがそう聞いた。ウメールなんて珍しい名前だ。気になるのも分かる。
「センカの母親だ。どこかの星から攫われてきたらしい。センカが5歳の頃に亡くなっているが」
「ともかく、日輪の所に行けばいいんだな」
銀さんがそう話をまとめた。僕達の準備は既に終わった。立ち上がり、外に出ようとすると、月詠さんが止める。
「わっちも行くからな。わっちにもやる事がある」
「吉原との戦いに吉原の人間を連れていく訳にはいかねぇ。てめぇ、裏切り者になるぞ」
「わっちが守るのは日輪じゃ。吉原に忠誠を誓ったことなど一度もない。清太を見殺しにする方がよっぽどの裏切りじゃ」
月詠さんの目には決意の色が篭もっていた。晴太君と日輪さんを守ること、それは死と天秤にかけても尚、そちらに傾くのだろう。
僕達は立ち上がった、夜の者達に立ち向かう為に。
轟音が鳴り響き、部屋が大きく揺れる。
やはり戦いが始まったのだろう。立ち上がり、窓から覗き込む。
あの御方の部屋の壁が大破し、団長と共に屋根の上にいた。固唾を飲み込み、じっと見つめてしまう。
二人の戦いが始まる。
初めに団長は飛び蹴りを叩き込む。難なくあのお方は受けるが、反対の足が再び襲う。
血が舞った。
団長の足をあのお方が突いて止めたのだ。団長は足で首を抱え込むが、そのまま顔を捕まれ、地面に叩きつけられる。あの御方の追撃が入ろうとしたその時、団長は足で止めた。
膠着状態に入る。何かを喋っているようだが、こちらには何も聞こえない。
おそらく団長があの御方を怒らしたのだろう。頭を掴まれ、団長は壁に向かって投げられた。大きな音がし、壁が崩れる。
ゆっくりと団長は屋根の上に戻ってきた。再び両者は睨み、ぶつかる。酷い煙が舞い上がった。
煙が晴れた後、立っているのはあの御方と団長、そして阿伏兎。云業は間で倒れている。仲裁に入った結果、亡くなったのだろう。よく見ると、阿伏兎の片腕もない。一人と腕一本、これがあの二人の喧嘩を止めるのに必要だった代償だろう。
彼らが部屋に戻るのを見て、やはり思う。
神威も強いが、あの御方は強い。自分の体が熱くなるのを感じた。私も夜兎だ。この身に宿る血は強い敵を、あの人と戦いたいと、そう強く望んでいる。
ああ、やりたいなあ
「センカ、それはあんたがやりたい事なのかい?」
『ひのわねえ?』
「あんたの母親を思い出しな」
わたしのかあさま?
かあさまは⋯⋯母様は⋯⋯
ああ、私は何を思っていたんだろう。あの御方を殺したいだなんて。私なんかが適うわけないのに。
私は窓の景色から目をずらし、日輪姉の方をみる。日輪姉は少し緊張していたようだ。私が暴れられたら、日輪姉は止められないから。
『ごめん、日輪姉』
「大丈夫さ。それより、静かになってる。戦いが終わったんじゃないのかい」
『喧嘩は終わったみたい、決着はついていないけど』
「そうだろうねぇ、夜兎の喧嘩がこんなにあっさり終わるはずがないだろう」
『うん、そうだね』
side新八
カチャカチャと金具の音が響く。月詠さんに貰った百華の服を着る音だ。
誰一人、口を開く事は無い。これからの戦いへの緊張が高まっている。いつもやる気のない銀さんも、真剣な雰囲気を出している。
「すまぬ、わっちがもっと早くに逃がしていれば⋯⋯」
「謝る必要なんてねぇよ」
月詠の謝罪を銀さんは止めた。
「行くのか?」
「行かなきゃ、晴太くんが死にます」
彼は今はたった一人であそこにいる。春雨の所か夜王の所かは分からないけれど、どちらでも危険は変わらない。放っておけば死は避けられないだろう。
「行けばぬしらも死ぬ。夜兎が5人。軍隊1個でも足りんぞ」
「あいつは私が何とかしなきゃ行けないネ」
「月詠さん、今、5人って言いましたか?」
僕の耳は月詠さんが言った言葉の違和感を逃がす事はしなかった。
「ああ、そうだ。夜兎は5人いるはずだ」
「春雨が3人と夜王⋯⋯後1人は誰ネ?」
神楽ちゃんが思い出そうとするけど、該当する人物は出ない。僕には一人だけ候補がいた。あの日すれ違った、神楽ちゃんの姉だという人。晴太君が知っていたから、吉原に関係する人だというのは間違いないだろうけど⋯⋯
「もう1人も春雨、その名はセンカ。 夜王の娘だ」
「や、夜王に娘がいるんですか?」
「ああ、吉原と春雨の連絡係をしている。春雨がここにいる以上、必ず居るだろう」
夜王の娘、強いのは分かっている。その上、春雨の人物だなんて。彼女も倒さなくては行けないのだろう。
女であること、共通点が出来てしまう。銀さんの中でも辿り着いたのだろう。銀さんは月詠さんに聞いた。
「そいつは夜狐って呼ばれてるか?」
「知っておるのか?」
その言葉は肯定と同じだ。そして、神楽ちゃんにとって最悪の答えでもある。
「私の姉アル⋯⋯なんで、バカ兄貴と同じ所に」
「センカは5歳からは吉原を出たから詳しい事は知らぬのじゃ。すまない。だが、あの子はずっと吉原を出た後は春雨にいた。それだけは確かじゃ」
そう言った月詠さんの表情を伺う事は出来なかった。だけど、深い後悔が滲み出ていた。
「おそらくセンカは日輪の所にいる。会えない事はないだろう」
「なんで日輪さんの所なんですか?」
「あの子が小さい頃、よくわっちと日輪とセンカとウメールで過ごしていた。まだあそこにいるのは日輪だけ。必然とそこに行くはずじゃ」
「ウメール? 誰アルか?」
神楽ちゃんがそう聞いた。ウメールなんて珍しい名前だ。気になるのも分かる。
「センカの母親だ。どこかの星から攫われてきたらしい。センカが5歳の頃に亡くなっているが」
「ともかく、日輪の所に行けばいいんだな」
銀さんがそう話をまとめた。僕達の準備は既に終わった。立ち上がり、外に出ようとすると、月詠さんが止める。
「わっちも行くからな。わっちにもやる事がある」
「吉原との戦いに吉原の人間を連れていく訳にはいかねぇ。てめぇ、裏切り者になるぞ」
「わっちが守るのは日輪じゃ。吉原に忠誠を誓ったことなど一度もない。清太を見殺しにする方がよっぽどの裏切りじゃ」
月詠さんの目には決意の色が篭もっていた。晴太君と日輪さんを守ること、それは死と天秤にかけても尚、そちらに傾くのだろう。
僕達は立ち上がった、夜の者達に立ち向かう為に。
4/4ページ