4月
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いつもより力が入る。
クラスメイトが初めて見に来た。それはいい。
それはいいんだけど。
何を話してたんだ。
幸村部長と知り合いだったんだ。でもそんなようなこと言ってなかったよな。
「赤也。普段よりスイングが早いし雑だ。テイクバックが遅い。ついてから準備するな。走りながらすでに体制を整えろ。」
「柳先輩…スイマセン」
なんかもやもやする。友達をとられた?みたいな。
俺のクラスメイトなんだけど、幸村部長のほうがもしかして仲いい?
俺の後ろの席なんだけど。
いや、だから何だって話だな。
『切原君-‼ナイスコース!』
柊の声がダイレクトに耳に響いた。
見られてる。なんか、わからないけど、格好つけたい。
丁寧に、ていねいに。
いつもよりめちゃくちゃ丁寧に、コース取りして、振り抜く瞬間まで指の先を意識する。
シングルスコートの角、ぎりぎり。柳先輩のラケットは届かなかった。
「よしっ‼」
『よし‼』
俺と、柊の声が重なる。
コートの外に目をやって、視線を合わせて笑った。
なんだこれ、すっげー、気分いい。
「ボール上げ‼片付けして、集合‼」
これからだ、と思ったのに。
幸村部長の声が聞こえて、ぐったり肩を落とす。
「ハイ‼」
ネットをぐるぐる畳んでいると、柳先輩が俺の背中に手を当てる。
「フェンスの向こうの御仁、恋人か?」
「なっっ…」
顔に熱が集まった。
「クラスメイトっす‼」
「そうなのか」
柳先輩は、からかったような笑みを浮かべた。
何なんだ、この人。
柊のほうに目をやる。
ギャラリーもちらほら帰って、フェンスの向こうの人ごみはまばらになった。柊と一緒に来てたやつも、いつの間にかいない。あいつもそろそろ帰るんだろう。
バッグの中にからカーディガンを出して腕を通している。
「なあ」
網をはさんですぐそこのあいつに話しかけた。
さっき幸村部長がしたみたいに。
『切原くん、お疲れさま‼最後、すごかったね‼』
まぶしいくらいニコニコして俺に笑う。
可愛いな、と思った。
「反省して、着替えて、終わりだからさ、待っててくんない?送るわ」
『え?悪いよ、』
「いいから!」
雑魚キャラの捨て台詞みたいにそれだけ言い放って、俺は片付けに戻った。
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