ふたつめ
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いつもまっすぐに強さを求め、鍛錬を重ねて鬼を倒していく彼女は、
人形のように表情が無かった。
つらい時も、任務の時も、表情にも声にも感情がない。
彼女の素性を知らない周りの者は、
それが朝陽という女だと思い気に留めていなかったが、
煉獄は父から聞いた話と異なる彼女に違和感を日々感じていた。
そんな時、偶然立ち寄った藤の家で、屋敷の者に部屋へ
案内してもらう途中、割烹着姿の女中と話す隊士の姿が目に入った。
髪色の珍しい娘だなと思い目を向けると、
人懐っこい笑顔で隊士と嬉しそうに話している。
その笑顔の先へ目を向けると、相手は自分が見たことのない表情でしゃべる朝陽の姿だった。
優しい笑顔を浮かべ、女中の少女の頭を撫でる彼女は、
自分の知る朝陽では無い、まったくに別人だった。
「・・・もし、あそこにいる割烹着姿の少女はこの家の者か?」
「ああ、梓様ですか?いいえ違いますよ。
産屋敷様の願いでしばらくお手伝いをお願いしております。
いつもは静かな子なのですが、今日はお姉さまがいらっしゃって、
とても嬉しそうですねえ」
なるほど、あれが父上のおっしゃっていた妹なのかと、合点がいった。
生き残った唯一の肉親の前では、あのような表情をするのか・・・
いつもは氷のような美しさを纏っていた彼女が、
陽だまりのように、いつくしみ深く微笑んでいる。
ただの部下の一面を見ただけだったが、自分で思っている以上に
目を離すことが、見えなくなってからも頭の中からその姿が離れずにいた。
母の教えを胸に、煉獄家の名に恥じぬよう自分も立派な柱になるために、幼少より鍛錬を怠らずに力を磨いてきた。
別の女性を美しいと思ったことももちろんある。
しかしそれは景色が綺麗だというのと同じ感覚で、
一度も心が震えるような高鳴りを感じたことはなかった。
強いて言うなら使命感を駆り立てられた、
母の言葉を聞いた時くらいだろうか。
夜に布団に横になり目を閉じたときに、暗闇の中で、
昼間見かけた彼女の笑顔が浮かび上がった。
これは煩悩ではないかと消し去って眠ろうとした。
しかし、胸がどうしようもなくうるさく鳴り、
任務後でかなりの疲労感を感じていたはずなのに、
目が冴え逆に眠れなくなってしまったのだった。
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