一章
貴女のなまえは?
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ふたりの日常は、ゆっくりと進んでいった。
イギリスに来て、ホグワーツにて、どうしてそうなっているのか、お互いにわからなくて、不思議なものだった。
「おい、聞いているのか?グリフィンドールの一年だな」
「・・・そういう君はだれ??」
「まさか僕を知らないのか?!まさかマグル生まれじゃないだろうね?これだから恥知らずにグリフィンドールは・・・僕の名は「あー思い出した!いつもハリーに突っかかって負けたり引き分けたりしてるドラコ・マルフォイ!・・・だっけ??」
シオンは芝生の上に寝そべったままだが、視線はまっすぐにドラコを見上げたまま言い放った。
「っ・・・」
きちんと相手を見ていなかったドラコは言われた言葉が沸点に到達しそうになり、芝生の上の少女をギッとにらみつけて、しかし少し詰まった。
「っっ・・・ポッターに負けたことなんて一度もないぞ!!」
見慣れない黒いボブの髪に、同じく黒い大きな丸い瞳と目が合って、動揺しまくる自分をなんとか隠そうと、また視線を泳がせ落ち着かない。
「お前、見かけない顔だが、アジア系か?」
「日本人よ。ジャパニーズ。ちなみにお母さんはホグワーツの出身。・・・それより、どうしてこんなところに来たの?誰も来たこと無いのに」
入学して三か月経つが、ここで誰かに出会うのは初めてだった。
誰にも来て欲しくなくてわざわざ人気のない場所を見つけて一人の時間を満喫していたのに、たった三か月でその平穏な時間が脅かされるなんてと、シオンは内心冷や冷やがっかりしていた。
しかも相手は自分の寮と一番相性が悪いスリザリンの、話したことはなかったけれど同じ寮のハリーポッター達ととても仲の悪い相手。
シオンは自分はあまり彼らと今のところ関りが少ないので、そこまで嫌うとかそういった感情は持ち合わせていなかったが、遠巻きにやり合う彼らを見ていると、あまりいい印象は持っていない相手でもあった。
「フクロウがこっちに来なかったか?僕のなんだ。いきなり飛び立つから呼び戻そうとしたんだが、聞きやしなくて、仕方なく追ってきたんだ」
なんてふてぶてしい態度だろう。自分のふくろうだろうに・・・
英国紳士なんて実はみんな、見栄だけのナルシスト紳士の間違いではないだろうか?
シオンはそんなことを考えながら冷めた視線を隠そうとせずにドラコの話を黙って聞いた。
「なんだその目は?」
「・・・別に・・・私眠ってたから、ふくろうが飛んでいたかはわからないわ」
翼が羽ばたく音も特に感じなかった。感じたら、マルフォイには見えないが、自分のそばにいる零体の子狐が教えてくれるはず・・・
百聞は一見に如かず、人を見た目で判断してはいけないよ。日本人としての誇りを忘れないようにねと、名残惜しそうに父親がかけてくれた言葉を思い出しつつ、シオンはドラコ・マルフォイを初めてまっすぐ見てみた。
当の本人は、私の言葉に小さく舌打ちをしつつフクロウを探すように遠くの森の方へと視線を向けている。
シルバーのように光を放つブロンドの髪を後ろにしっかりと固めて、それ以上に白い肌にとがった顎と鼻、青い瞳、しゃべらなければマグルの世界で雑誌でモデルをしてそうな綺麗な男の子。日本でなら間違いなく人気が出るだろう。
「さっきも聞いたがお前、どうしてこんなところで寝ているんだ?」
「・・・いつも賑やかなのは好きじゃないの。たまには一人になりたくて、人が絶対来ないだろうなって、ここを見つけたの」
もう見つかっちゃったけどね・・・落ち込むようにそう言ってシオンがのそりと起き上がり、両手を上ケて伸びをする。
「フクロウ、見つけたら教えてあげる。もう少し休みたいんだけど?」
そう言ってまた自分をまっすぐ見つめてくるシオンを、今度はマルフォイもまっすぐ見返した。
「別に教えてもらわなくてもいい。そのうち戻ってくるだろうし!」
「グリフィンドールの助けになんてなりたくない?」
「っ!別にそんなんじゃない!」
言い捨てるとマルフォイはそのままくるりと来た道を戻っていった。
「・・・変な子」
助けになりたくないなら正直に言えばいいのに・・・やはりグリフィンドールとスリザリンは仲良くできないのかな~・・・
のんきにそんなことを考えながら、シオンはまた思い切り後ろに倒れて日向ぼっこを再開した。