五章
貴女のなまえは?
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夏休みが終わり、待ちに待った新学期のホグワーツに向かうためにシオンはホグワーツ特急の中に居た。
「シオンはクィブラー読んでくれてるんだね。パパに今度話しておく」
「なかなか面白い内容だからね!イギリスの怪談話や魔法界についてのミステリーなんて大好物!それを事実なのか他の文献を読み漁って確かめるのも楽しいの」
「なんでシオンはグリフィンドールなんだろう。レイブンクローに来ればよかったのに」
「あ~、私もなんでグリフィンドールなのかわからない。勇気なんて全然ないのに」
「シオンはあたしと同じで誰も居ない場所で居るのが好きだよね」
「よく知ってるね、ルーナ。人間観察も趣味なの?」
「ううん。妖精が教えてくれるの。私が好きな人のことは、代わりに見に行って報告してくれるんだ」
「へえ。イギリスの妖精は親切なんだね」
髪の長い、白くて可愛いルーナ・ラブグットとは彼女が入ってきて“変わり者”と噂を聞いたときに、なんとなくシオンから声をかけてみた。
変わり者扱いはお互い様であるし、寮が違ってもあまり関係ない。
案の定、ルーナは必要以上にシオンにくっつかないし、たまに見かけたら話をする、よき先輩後輩の関係に収まっていた。
時々、得意の魔法薬についての課題を手伝うこともあった。
ルーナは勉強熱心だが、考えが真っすぐすぎて、正確さが求められる魔法薬の調合で時々自分の理屈に負けてしまうのだった。
ニガヨモギの量が足りないのに、こんなまずそうなものを入れたくない、というマイペースな思考が勝ってしまう。
そんな時だった。
ガタンッ
大きな揺れとともに、列車が止まった。
直ぐに明かりが消えて、一気に冷気があたりを包み込んだ。
「・・・なに?」
シオンは訳が分からなかった。
こんなことは初めての経験だった。
ホグワーツの冬の寒さとも違う。
ただ寒いだけじゃなくて、一気に悲しさや寂しさがこみ上げてきて。
今来たばかりで、新学期が待ち遠しかったはずなのに。
日本に帰りたいとすら思ってしまっている。
「シオン??大丈夫??」
ルーナは状況には混乱しているようだったが、そこまで影響を受けている様子は見られない。
「・・・何?これ」
「わからない。動かない方が、いいかもね」
言われた通り、シオンはローブを握り締めてそのまま待つことにした。
しばらくすると明かりがついて、冷気もスッと引いて行った。
列車が動き出すのには少し時間がかかったが、それでも夕食の時間には十分に間に合いそうに動いてくれた。
今日の朝、母親に言われたことをシオンはふと思い出していた。
「・・・・・・・・・・」
「??お母さん?どうしたの?」
もうすぐ新学期、長かった夏休みがようやく終わりかけ、シオンはうきうきしていた。
しかし新学期を翌日に控えた日の朝、食卓に向かうと母の手には珍しく動く写真の載った新聞が握られている。
魔法界では当たり前の日刊予言者新聞だった。
(日本にも届くんだ?)
この家で見るのは初めてだった。
お父さんがみたらとても不思議がるだろうと思いつつ、興味本位で近づいてみた。
そこには怖い顔の男の人が映っていた。
「誰?」
シオンはもちろん見覚えが無かった。
マグル出身でも勉強熱心なハーマイオニーほど、情報通でもない。
古い本を読み漁るのは好きだが。
「お母さん、それどうしたの?」
「貴女の新学期の手紙と一緒に、ダンブルドアが送ってきたのよ」
新聞から視線を逸らすことなく答える母の様子から、あまり穏やかじゃない様子がシオンには感じられた。
「シオン。今年のホグワーツでは少し面倒ごとが起きるかもしれないわ」
「面倒ごとなんて、ハリーがいるおかげで毎年起きてるみたいだけど」
シオンには直接関係してはいないが、片棒を担いだこともあるので情報は集めるようにしている。
「そうね。けどこれは、それとは比べ物にならないかも」
「その人誰?」
「この人はね・・・魔法界では殺人鬼と言われている人よ」
「殺人鬼・・・?」
この時間、お父さんは神社の境内の見回りで居ない。
お母さんがやっとこちらを向いてくれた。
「でもね、シオンは覚えておいて。魔法界ではこの人を例のあの人と同じくらい恐れている。けど、お母さんはそうは思わない」
「・・・・・・」
「周りに流されちゃ駄目。行動するときは、貴女の考えで動きなさい」
さっそく、不吉な予感がする登校日だと思った。
