四章
貴女のなまえは?
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「・・・父上、ホグワーツの生徒です。煙突飛行に失敗したようで、今からダイアゴン横丁へ戻るようです」
「ほう・・・」
生返事をしつつ、ルシウスはいまだにシオンを真っすぐに見つめたままだった。
見つめられ段々居心地が悪くなったシオンは、顔が熱くなり出す前に視線を逸らし、どうすればいいのという風にドラコを見た。
ドラコもシオンを一瞬見て、父親に視線を向けた。
いつもと明らかに様子が違った。
「・・・失礼だが君は、日本人かね?」
「!!は、はい」
話しかけられるとは思わなかったため、シオンはまたビクッと肩を震わせつつ返事をするのが精いっぱいだった。
まだホグワーツ関係の魔法使いや魔女しか知り合いはいなく、ましてやドラコの父親の話はハリーやロンやハーマイオニーが散々悪口を言っているのを談話室で耳にしていたから。
そしてその期間はめっきりドラコとも会わなくなっていたため、印象も良いものになっていくはずもなく。
純血以外一切認めない純血主義の、冷たい生粋のスリザリン英国紳士。
それがシオンの中のドラコの父親のイメージだった。
「やはり。昔知り合いの日本人が、同じ服を着ているのを見たことがある。確か“ゆかた”と言ったかな?」
「!はい、その通りです。あ、マントは・・・」
「ああ、ドラコのものだろう?わかっているとも。その服は確か、イギリスの夏は涼しすぎると言っていたかな。しかしレディーが着るには少し頂けない。
ドラコ、彼女に合うものを買って差し上げなさい」
「え?・・・承知しました父上・・・」
驚くことが次々に起きて、ドラコもへんじをするのがやっとだった。
「そんな!私は直ぐに帰るので、大丈夫ですから!」
慌てて両手を前に出して話すシオンの声に、ルシウスは穏やかに微笑んで近づいた。
「遠慮することは無い。私の息子に、エスコートさせてくれ。」
ルシウスの右手がそっと、シオンの顔に添えられた。
大きい男の人の掌。
白く細いので冷たいのかと想像したが、思いのほか暖かく、目の近くを少し撫でられシオンは動かないようにするのに必死だった。
じっと目を逸らさずに見つめてくる相手になんとなく、逃げてはいけないような気がしたからだった。
「・・・目元がそっくりなのだね」
「え?・・・もしかして、お母さんを知って?」
「嗚呼、多分そうだろうと思ったよ。アヤ・・・ミス・フジワラの娘さんなのだろう?」
一瞬母の名前が出てきそうになったことをシオンは聞き逃さなかった。
ドラコは知らないのでおそらくわかっていないだろう。
「そういえばお前の母親はホグワーツ出身だと言っていたな」
「うん。でも」
「さあドラコ、レディーを待たせるでない。行きなさい」
“スリザリンではなくグリフィンドール生だった”という言葉は遮られてしまった。
でもきっとシオンは、言えなかったと思った。
ルシウスはパッとシオンから手を放して、くるりとマントをなびかせて、そのまま行ってしまった。
「「・・・・・・・・・」」
2人は少しの間何も言わず、見えなくなった先を見つめた。
(あの人、お母さんを知ってた。でもスリザリンとグリフィンドールってものすごく仲悪いはずだよね?)
普段の学校でずっと集団の中に居るわけではないシオンでも、2寮の間の亀裂が相当なものだということはよく理解できた。
一人くらい仲良く話せる人間がいるか、おそらく居ないだろう。
それが千年も続いてきてるとしたら伝統もここまでくると異様なほどだと感じる。
(表面上はいがみ合わなきゃいけないけど、実は中にはそこまでいがみ合ってない人もいるとか・・・?
でもドラコのお父さんだし、そんなこと有るわけないか)
