三章
貴女のなまえは?
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幸い家に人の気配は無く、鍵も掛かっていなかったので簡単に外には出られた。
シオンはホッとしたが、風が吹き寒さにぶるりっと背筋が震えた。
イギリスも夏ではあるが、日本に比べたら涼しすぎて浴衣1枚では少し肌寒い。風が吹くと、ここは日も当たらないようなので尚更寒かった。
「やっぱりこっちは寒いや。よくみんな半袖で過ごせるなって思ってたけど」
イギリス人はこの程度なら余裕で薄着である。
慣れない日本人には中々厳しい涼しさなのに‥
「ダイアゴン横丁って、どうやって行ったらいいの?」
ここがノクターン横丁なのは間違いなさそうだが、そのどの辺なのかどのような立地なのかもろもろ、さっぱり分からない。
ダイアゴン横丁から近いのか遠いのか。
こういう時、1番いい方法は人に尋ねること。
だが・・・
黒い魔法使いばかりの中では浴衣姿は目立ちすぎて。
しかも危険な場所だから、子どもだけでは絶対行ってはいけないと、ホグワーツでも教わっていた。
「どうしたらいいんだろう・・・」
シオンは建物の影に隠れて、とりあえず通行人に目立たないようにしながらどうしようかと頭を悩ませた。
可能性は低いけれど、誰か知っている人に出会うことが出来ないだろうか。
「ハリーの時みたいに、ハグリッドが助けてくれないかな」
かなり淡い期待だが。
「・・・イズミ?」
「え?」
ドキッ
その声に自分の苗字を呼ばれて、胸が高鳴ったのをシオンは感じた。
びっくりするあまりに、驚きの意味で心臓が跳ねただけかもしれない。
しかしその高鳴りはその後もずっと続いていて、怖い・・・ものなのか今のシオンにはわからなかった。
声は後ろからかかった。
じゃりじゃりと歩いてくる足音も、直ぐ側まで近づいて止まった。
シオンは恐る恐る、後ろを振り向く。
「あ・・・ド、ラコ?」
「こんな所で何してるんだ?それにその格好は?」
驚いたように目を見開いて、いつの間にか目の前にいる彼を少し見上げる形になった。
「えっと、これは浴衣っていって、日本の昔の夏服?みたいなものなの。」
見慣れない服だろうと思い一応説明してみるが頭が上の空でちゃんと喋れているか不安だった。
久しぶりに見るドラコは別人とまではいかなくとも、少し大人びた顔立ちに変わっていて、髪型もオールバックからストレートに降ろしてセットされている。
学校のものとは少し違う黒い高級そうなローブに身を包んでいて、纏う雰囲気はなんだかミステリアスだ。
じろりとシオンを下まで視線を回し、顔を見つめてしばらく何も言わなくなった。
シオンも同じくドラコから目を逸らせなかった。
どうしよう。
その沈黙は居心地はいいものではなかったけど、気まずく別れ手久しぶりに会えた友人から話しかけてもらえたことは、決して悪い気がするものではなくて。