三章
貴女のなまえは?
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魔法界のこと、お母さんが在学中のことは色々聞いたし、1年2年の夏休みにもホグワーツで経験したことは沢山話した。
その中には、私がよく中庭で話す男の子がいることも、勿論話していた。
お母さんは黙っていつも聞いてくれた。
私からの質問には色々答えてくれたけど、自分から必要以上に、学生時代の話はしてこない。
『全部話してしまったらつまらないでしょ?貴女に話すタイミングが来たら話すわよ?お父さんにはわからないしね??』
イギリスの魔法界をあまり知らない、お父さんにはわからない話だからという。
「・・・2年生の真ん中辺りで、ハーマイオニーがスリザリンの生徒に言われていたの。私が中庭で時々話をしていた男の子から・・・」
「!そうだったのね・・・へえ?そう言えば、そういうことね」
「なに?」
「貴女から今年は、その子の話が一切出ないから、喧嘩でもしてもう中庭には来なくなったのかしら〜って思ってたんだけど?なるほど、そうなってるってことは、
その言葉の意味はちゃんと理解してるのよね?」
「! うん、多分。」
「残念ながら、魔法界では珍しいことじゃないの。魔法を使えるってことだけじゃなくて、血統を大事にしたがるのよね?イギリス人って伝統伝統なお国柄だから。だから街も暮らしも、今でも素敵な部分はあるんだけれどね」
「でも血に縛られると、その能力は必ず劣化し滅んでいく。だから安倍の家は(安倍)であることを隠すことにしたんだよ」
割って入ってきたのはお父さんだった。
仕事用に前髪をちゃんと後ろに流して整えている。
黒縁の眼鏡もしていて、普段家族の前では髪はボサボサなことが多いから、どこかハリーを思わせる時がある。
「ああ、なるほどね」
「わかりやすいだろう?同じことは人間なら誰でも考えてしまうことだよ。安倍は藤原家に仕えて、その繁栄と衰退を目の当たりにした。愚かだと当時は思ったのか知らないが、安倍の姓は名乗るべきではないと考えた。僕はその判断は正しかったと思うよ。力は争いを生むからね?」
「あら?その割には魔女の嫁を迎えたなんて、陰陽師の力が強くなるから一石二鳥とか考えていたんじゃないの??」
「それとこれとは全く関係ないよ?たまたま出会った君が魔女だっただけじゃないか。第一、最初に僕を見つけたのは君だろう??」
『っ!あなた何しゃべってるの?!』
「ロンドンの街中で何も無い場所に話しかけてる東洋人がいたら、幽霊好きなイギリス人は喜んで新聞記者かテレビ局を呼んでくるわよ?」
「あの少女のゴーストには感謝しているよ。運命の人に会わせてくれたんだからね。今でもあそこに居るんじゃないかな」
「あの子はあそこに植えられた木の根元に昔埋葬された子の霊なの。ゴーストは悪いことした人には悪戯するし、優しい人には幸せをもたらしてくれることもあるのよ?まぁ、気分次第だろうけど」
さり気なく母さんの身体に触れながら寄り添う両親に、惚気られたことは軽く流しつつ、仲良しだよな、と感心もしてしまう。
変わった力を持っていても、同じ日本人同士で出会って一緒になれたのはきっと運命もあったのかな、なんて考えてしまう。
「ロンドンに行くことがあったら、行ってみるといいわよ。可愛いブロンドの女の子の霊よ」
「うん、行けたらね?」
「さて、じゃあ漏れ鍋にお使い頼めるかしら」
漏れ鍋って、魔法界の漏れ鍋だろうか??
「漏れ鍋??」
「そう!トムがね、りんご飴の話をしたら、是非是非食べてみたいってずっとお願いされていたのよ。ちょうどいいからシオンちょっと届けてきてくれない?」
そう言ってシオンに持っていた紙袋を差し出した。
中には小さいサイズのりんご飴がいくつか入っている。
「浴衣のままじゃイギリスは寒いかしら。着替えてから行く?」
「そんな暑いよ。すぐ帰ってくるから大丈夫でしょ!」