二章
貴女のなまえは?
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(何があったのかわからないけど、とりあえずここに居ることはあんまり知られたくないなぁ‥グリフィンドールの生徒は特に)
いい人ばかりでグリフィンドールに入れて心底安堵している。
楽しい学生生活が送れているのも寮の仲間や優しい先輩達のおかげだ。
しかしフレンドリーすぎて、寮にいても授業の移動でもいつも誰かがいて賑やかなので、たまに味わえるこの静けさは守りたいわけで。
(とりあえず、さり気なく通りかかってみたらいいかな)
シオンはやれやれと荷物を纏めて立ち上がった。
図書室をいつも言い訳にしているため、荷物の中ではなく小脇に2冊本を抱えておくのを忘れない。
中庭へと続いている廊下を足早に歩いて、渡り廊下の手前でゆっくり歩く。
「見て!シオンの鴉だわ!!」
ええっ?!
ハーマイオニーの大きな声にびっくりして顔を上げると黒光する大きな羽が視界を横切‥いや遮った。
よく知る野生‥の鴉はどこにでもいるが、この鴉はペットのせいか普通のどこにでもいる鴉より2回りはでかい。
翼を広げれば勝てないが、胴体だけならフクロウにも負けないだろう。
「黒曜(こくよう)・・・」
黒曜石のように光沢を放つくらい、真っ黒で艶のある羽をしているからと父がつけた名前だった。
もともと父親のお遣いカラスのようなものだったが、シオンが生まれてすぐになぜか守るようにそばを片時も離れようとしなかったため、シオンに譲ったのだった。
『この子は雌の鴉だからね。母性本能が刺激されたんだろう』
黒曜に産卵経験はないらしい。
大きい見た目のせいで野生の鴉からは恐れられて近づきたがらないし、むしろ捕食対象にすらなってしまう。
きっとこの子は仲間の鴉のことを、まったく違う生き物と認識しているんだろうと、以前母も言っていた。
で、そのお化け並みに大きな鴉が目の前を遮って表れたのだから当然シオンの足は止まり、持っていた本まで反動で手から落としてしまった。
「シオンっ!!」
すぐシオンの存在に気づいたハーマイオニーがこちらに向かってくるのがわかった。
(よかったのか、悪かったのか・・・)
黒曜が何の目的でここに飛んできたのかわからないまま、シオンは諦めの意味でため息を一つついて、たった今気づいたようにハーマイオニーの方を見るのだった。