第一章 傷と熱

『繭』

「目を閉じて、私の声だけ聞いていて
そうすればあなたは、私だけのもの」

そんなことないさ
だって風を感じる
風は愛だ
君の愛を感じる

「口を閉じて、私の言葉だけ呑んでいて
そうすれば私は、あなただけのもの」

そんなことないさ
だって熱を感じる
熱は血だ
君の血を感じる

君の中にある愛は、君だけのものじゃない
君の中にある血は、もとはひとつの源だった
知っているはずさ

風は、誰のものでもない
血は、すべてのひとのために

そう君が
教えてくれたのだから
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