どうして自分は産まれたのだろう？

物心ついた時には白い服を着た人が代わる代わる自分の世話をしてくれた。

皆んな私のことを“168”って呼んでた。

毎日色んな“検査”をされた。

血を取ったり、よくわからない機械を頭につけたり、巻物に書かれた印を結んでチャクラを練ってごらんと、毎日のように言われた。

でもいつも白い服の人たちはその結果が良くないみたいでいい顔をしてくれなかった。

「ここまで来て…もう失敗作と認めるしかないのか…」
「だがもうこれに賭けるしかないんだぞ！何がなんでも血継限界を発動させるんだ！」
「しかし…オリジナルの名前博士だって術の真髄には辿り着けなかったじゃないか…」
「…仕方ない、採れる組織サンプルだけとろう。あとは改良するために解剖して、その後月影様のDNAも使って…」

失敗作…。
私はそもそも人間ではないから産まれたと言う表現も相応しくないかもしれない。


毎日が目まぐるしく過ぎているはずなのに、私には彼らの服の色と同じで、ただただ何の変化もなく、意味もなく、過ぎていった。


そんなある日の事だった。
夜中に遠くで大きな振動と何かが爆発するような音がして目が覚めた。
建物の中が騒めき出した。
白い服の人たちが青い顔をして狼狽えていた。

「砂隠れに攻め込まれてる！逃げた方がいい！」
「研究資料はどうする？！膨大な量だぞ？！奴らには渡せない！」

何か危険が迫っているようだった。
私がぼーっとその様子を見ていると、1人の男が私の前に立った。
彼はみんなと同じ白い服を着ていなかった。
黒っぽい服に、何か頭に巻いていた。

「逃げるぞ」

「え？」

彼が私の腕を掴んだと思ったら一瞬で景色が変わった。
全身に当たる空気が冷たい。急に体温を奪われる感覚がした。
あ、これが風なのか…。
眼下には暗闇と、その中に一つの白い大きな建物が見えた。
「あれがさっきまでいた施設だ。お前はこのまま砂隠れに亡命しろ。二度とここへはきちゃダメだ…」
上を見ると男が俯いていた。顔は暗くて見えないが、上から落ちてきた水滴が私の頬に落ちた。
知っている、これは雨だ。
本で読んだことがある。
空から降ってくるんだ。

「目が覚めたら…別の世界が待っている。きっとお前のことを愛してくれる人にもいつか出会える。だから…その人のために生きるんだ」

男が言っていることはよくわからなかった。
ただ何となく、その声は安心した。
男は屈むと私の体を硬く抱きしめた。
あたたかかったーー。
そして私はそのまま意識が遠くなるのを感じた。