神隠しの真実
名前変換
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名前を初めて湯屋へと連れて来た。
その柔らかな手を取り湯屋へと続く大橋をゆっくりと渡った。
名前は笑いながら、
「どんな所かな、楽しみ…」と、ふわりと笑んだ。
その顔を見て、あぁ、連れて来てよかったと思った。
「祝言を挙げてから色々と忙しくさせたからな。しばらくはここで何も考えずゆっくりするといい」
するとどこからか見ていたのか湯屋に勤めている男が玄関から慌てて出て来て荷物持ちをかって出た。
男が来ると名前は繋いでいた手を恥ずかしいのかサッと離してしまった。
まぁいい。これからはずっと2人きりだ。
誰にも邪魔はさせない。
ここには何度か来ているが対応も悪くない。魔女が厳しく従業員を管理しているから安心だ。
2人で玄関の暖簾をくぐった。
大勢が三つ指立てて出迎えていたので名前は驚いて一歩後ずさった。そんな反応も可愛らしいと思ってしまう。
早く部屋で2人きりになりたいと挨拶もそこそこに部屋へと案内を頼もうと思った。
しかし従業員の中に1人だけ異質な存在を感じた。視線を向けると1人の女がいた。
(人間か…)
稀にここには人が入り込むと聞いていたが、運良く煤にされずに仕事を与えられたようだ。
一瞬だけだったが視線が合ったその女。
へばりつくような、気分の悪い視線だった。
畏敬の念から尊敬の眼差しを向けられることはよくある。しかしあれは違うものだ。自惚れとかの類ではなく、欲に塗れた感情はどうしてもわかってしまう。
しかし下働きの女にもう会うことはないだろう
とすぐ思考を切り替えた。
しかし女将がその女を跪かせようと声を荒げた。
その声に名前がピクリと肩を振るわせたのを感じた。
これでは名前が怯えてしまう。
早く休ませてやりたいと思い、女将に気にするなと制した。
そして部屋への案内を頼むと、女将自ら案内をかってでた。
エレベーターで上に向かう。
最上階に着けばより一層豪華な装飾のされた空間が広がっていた。
名前は口元に手を当てて感動しているようだった。
大きな扉を開くとそこが俺たちの部屋だ。
海が一望できるその部屋を名前はいたく気に入ったようだった。
女将は気を利かせてすぐに部屋を後にした。
戸が閉まるのを見届けた後、すぐに恥ずかしがり屋の名前の手を取り一緒にベッドへと倒れ込んだ。
「…まだ昼間だよ?」
顔を赤くして視線を合わせないまま小さく呟いた。
その可愛い様子に少し苛めてやりたくなる。
「ふっ、そうか?じゃあ夜ならいいんだな?」
顔を赤くして「そう言う意味じゃない!」と反論してくるだろうと思ったが、
予想に反して名前が耳まで赤くして「夜なら、い、いいよ…?」
なんて言うものだからやはり今からでも抱いてしまいたい気持ちになった。
「あ、ねぇ!あれさっき女将さんが言ってた贈り物かな?!」
その服に手をかけようとして伸ばした手が空を切った。
名前は素早い身のこなしでベッドから飛び降りるとテーブルの方へと駆けて行った。
流石は元忍び…と、虚しい気持ちを誤魔化すように彼女が人間だった頃を思い出した。
まだ少女だった彼女をこちら側に連れて来て祝言を挙げた。俺と契りを交わしたことで人間ではなく彼女も神格化したためもちろん人の子に戻ることは叶わない。大人になったら結婚しようと言う彼女の約束通り、その姿もすっかり大人の見た目にしてやった。そして人間だった頃のことは全て忘れさせた。
帰りたいなどと言えば契りを破った罰として彼女は灰になってしまう。
記憶のない名前はしばらく不安そうに、どこか無気力な様子でぼーっとしていたが、俺が抱きしめれば笑い、愛を囁けば恥ずかしそうに頬を赤く染めた。
そうして徐々に彼女本来の明るさを取り戻してくれた。
「見てー!こんなに大きな花束見たことないー
!」
そう言って両手で人1人抱きしめているかのように色とりどりの花をこちらに見せて来た。
花束にすっぽりと隠れて彼女の姿は見えない。
その無邪気な姿を見て、俺は彼女の心も手に入れることができたことに心から安堵した。
そして部屋の中を物珍しそうに一通り見て回った名前は町の中を散策したいと言った。
俺は了解すると名前とすぐに部屋を後にした。
名前は見たこともない食べ物や、綺麗なガラス細工をみては目を輝かせていた。
それを俺は横で見守った。
欲しいものがあればなんでも買ってやると言うと、相変わらずそんな贅沢できないと遠慮する。
ふと一つの硝子細工を名前が見ていた。
青い硝子玉のついた簪だった。それはガラスケースにしまわれて主人を待っているようだった。
「この町の海みたいだね!」
そう言った名前にそうだな、と返事をすると俺は店主に声をかけた。
店主の影は俺の意図を汲んでそのガラスケースから簪を取り出すと俺に渡した。
不思議そうにしてる名前の背後に回って、俺は何も言わずに彼女の髪を簡単に上に結い上げてから簪を差した。
名前が俺を驚いた顔で振り返る。
「よく似合ってる」
「ほ、本当?」
「あぁ」
名前は頬を染めて嬉しそうに笑った。
あぁ。この笑顔が俺のものだと思うと言葉にできぬほどの優越感を感じる。
「このままいただいていく」
俺は店主に大粒の砂金を渡した。
それをみて店主はあたふたとしていたが、妻に贈り物ができた礼だと言ってそのまま受け取らせた。
店を後にした後も名前はその簪の硝子細工に時折触れては嬉しそうに笑っていた。
一通り見て回った頃、湯屋に戻ることにした。
湯屋の中庭を通って部屋に戻ろうと、2人で庭の花を見ながら進んだ。
その時、中庭に面した大広間のガラス戸が勢いよく開けられた。
「サソリ様!お会いできて光栄です!」
中から1人の女が出て来た。
湯屋で働いているものであろうと服装ですぐわかった。
女は懐に入れていた自分の草履を取り出すと、それを履いて俺たちの方へと走って来た。
この女、湯屋に到着した時にいた人間だな。
これは…面倒だ。
「あの!私、諂 と言います!玄関で目が合いましたよね…?あの後私を庇ってくださってありがとうございます」
「は?庇う…?悪いがなんのことかわからない。妻と2人で休暇中なんだ。遠慮してもらえないか?」
上目遣いで話しかけてくる女に、俺は視線は冷たいまま返事をした。
このままサッサとどこかへ行ってくれれば1番いいと、苛立ちを抑えて出来るだけ穏やかに話した。
しかし女は引き下がらなかった。
俺が言った事など聞いていなかったかのように話し続けた。
「私一度サソリ様と2人でお話ししたくて…」
「え…?」
ここまでくるとその積極性は愚かで自惚れがすぎる。強欲な醜い女め。
横に妻である名前がいるのにも関わらず、女はあからさまな態度を取る。
流石の名前もその女の発言には表情を不安そうに曇らせた。
それを見て、名前の前では憚られたが俺は苛立ちを隠すのをやめ、明らかな拒絶を見せようと口を開きかけた。その時、
「あ!まずは3人でもいいですよ?その人、私と同じ人間ですよね?同じ仲間ですし仲良く…」
「それ以上その汚い口を開くな」
「え?」
一瞬で周りの空気が乾き、冷たくなった。
俺の周りから徐々に、庭の美しかった花々が次々と枯れ出した。
「な、何これ?!」
女は恐怖に目を見開いた。
よりによってこの人間…!
俺が1番名前に聞かせたくない言葉を…っ!
「さっ、サソリ‼︎」
名前が咄嗟に俺の腕を掴んだ。
ハッと我に帰った俺は名前を見た。
掴まれた腕から僅かに彼女が震えているのがわかった。両目を強く閉じて…怯えているようだった。
「…すまない。大丈夫だ」
「うん…うん…」
俺は名前を安心させるように抱きしめた。
女はポカンとした間抜け面でへたり込んでいた。
異変を感じ取った番頭が靴を履くのも忘れ、酷く慌てた様子で駆け寄ってきた。
他にもいつの間にか何人かの野次馬が集まっていた。
「も、もっ、申し訳ございませぬ!申し訳ございませぬ!この小娘が無礼を働いたようで!元は人間の世界から迷い込んだ余所者でして!ど、どうかっ…どうかお許しくださいぃ!」
番頭は地面に額を擦り付けながら必死に謝罪していた。
「貴様も頭を下げんかぁ‼︎」
「ちょっ!痛!何すんのよ?!」
番頭は女の頭を掴み無理やり土下座させようとしていた。
そんな中俺は考えていた。
早くこの女を始末せねばと。
二度と名前に近づけさせるつもりは毛頭ないが、万が一ということもある。
「どうか!お許しを…この者の処分はお望み通りにいたしますので!何なりと!」
「は?!私が何したって言うのよ?!」
「黙れこの疫病神が!煤にされて消されたいか?!」
番頭がそう言うならばと、この場でこの女を消し去ってしまおうと思ったが…名前の目の前でそんな事をすれば今度は酷く俺に怯え…最悪拒絶されかねない。ひとまずここは何事もなかったように振る舞うのが得策か…。
「…いや。何か誤解があったようだ。こちらこそすまなかったな。庭はすぐ元に戻そう」
俺が手で一帯を払うような仕草をすれば花は再び息を吹き返し、美しく咲き誇った。
その様子を見て名前は安心したのか、小さく息をついた。
番頭は目に涙を浮かべながら「あ、ありがとうございます…!」と再び頭を下げた。横の女はまた自分は助けられたとでも勘違いしているのか、上目遣いで気持ちの悪い笑顔をこちらに向けていた。
早くコイツを消し去らねば。
その柔らかな手を取り湯屋へと続く大橋をゆっくりと渡った。
名前は笑いながら、
「どんな所かな、楽しみ…」と、ふわりと笑んだ。
その顔を見て、あぁ、連れて来てよかったと思った。
「祝言を挙げてから色々と忙しくさせたからな。しばらくはここで何も考えずゆっくりするといい」
するとどこからか見ていたのか湯屋に勤めている男が玄関から慌てて出て来て荷物持ちをかって出た。
男が来ると名前は繋いでいた手を恥ずかしいのかサッと離してしまった。
まぁいい。これからはずっと2人きりだ。
誰にも邪魔はさせない。
ここには何度か来ているが対応も悪くない。魔女が厳しく従業員を管理しているから安心だ。
2人で玄関の暖簾をくぐった。
大勢が三つ指立てて出迎えていたので名前は驚いて一歩後ずさった。そんな反応も可愛らしいと思ってしまう。
早く部屋で2人きりになりたいと挨拶もそこそこに部屋へと案内を頼もうと思った。
しかし従業員の中に1人だけ異質な存在を感じた。視線を向けると1人の女がいた。
(人間か…)
稀にここには人が入り込むと聞いていたが、運良く煤にされずに仕事を与えられたようだ。
一瞬だけだったが視線が合ったその女。
へばりつくような、気分の悪い視線だった。
畏敬の念から尊敬の眼差しを向けられることはよくある。しかしあれは違うものだ。自惚れとかの類ではなく、欲に塗れた感情はどうしてもわかってしまう。
しかし下働きの女にもう会うことはないだろう
とすぐ思考を切り替えた。
しかし女将がその女を跪かせようと声を荒げた。
その声に名前がピクリと肩を振るわせたのを感じた。
これでは名前が怯えてしまう。
早く休ませてやりたいと思い、女将に気にするなと制した。
そして部屋への案内を頼むと、女将自ら案内をかってでた。
エレベーターで上に向かう。
最上階に着けばより一層豪華な装飾のされた空間が広がっていた。
名前は口元に手を当てて感動しているようだった。
大きな扉を開くとそこが俺たちの部屋だ。
海が一望できるその部屋を名前はいたく気に入ったようだった。
女将は気を利かせてすぐに部屋を後にした。
戸が閉まるのを見届けた後、すぐに恥ずかしがり屋の名前の手を取り一緒にベッドへと倒れ込んだ。
「…まだ昼間だよ?」
顔を赤くして視線を合わせないまま小さく呟いた。
その可愛い様子に少し苛めてやりたくなる。
「ふっ、そうか?じゃあ夜ならいいんだな?」
顔を赤くして「そう言う意味じゃない!」と反論してくるだろうと思ったが、
予想に反して名前が耳まで赤くして「夜なら、い、いいよ…?」
なんて言うものだからやはり今からでも抱いてしまいたい気持ちになった。
「あ、ねぇ!あれさっき女将さんが言ってた贈り物かな?!」
その服に手をかけようとして伸ばした手が空を切った。
名前は素早い身のこなしでベッドから飛び降りるとテーブルの方へと駆けて行った。
流石は元忍び…と、虚しい気持ちを誤魔化すように彼女が人間だった頃を思い出した。
まだ少女だった彼女をこちら側に連れて来て祝言を挙げた。俺と契りを交わしたことで人間ではなく彼女も神格化したためもちろん人の子に戻ることは叶わない。大人になったら結婚しようと言う彼女の約束通り、その姿もすっかり大人の見た目にしてやった。そして人間だった頃のことは全て忘れさせた。
帰りたいなどと言えば契りを破った罰として彼女は灰になってしまう。
記憶のない名前はしばらく不安そうに、どこか無気力な様子でぼーっとしていたが、俺が抱きしめれば笑い、愛を囁けば恥ずかしそうに頬を赤く染めた。
そうして徐々に彼女本来の明るさを取り戻してくれた。
「見てー!こんなに大きな花束見たことないー
!」
そう言って両手で人1人抱きしめているかのように色とりどりの花をこちらに見せて来た。
花束にすっぽりと隠れて彼女の姿は見えない。
その無邪気な姿を見て、俺は彼女の心も手に入れることができたことに心から安堵した。
そして部屋の中を物珍しそうに一通り見て回った名前は町の中を散策したいと言った。
俺は了解すると名前とすぐに部屋を後にした。
名前は見たこともない食べ物や、綺麗なガラス細工をみては目を輝かせていた。
それを俺は横で見守った。
欲しいものがあればなんでも買ってやると言うと、相変わらずそんな贅沢できないと遠慮する。
ふと一つの硝子細工を名前が見ていた。
青い硝子玉のついた簪だった。それはガラスケースにしまわれて主人を待っているようだった。
「この町の海みたいだね!」
そう言った名前にそうだな、と返事をすると俺は店主に声をかけた。
店主の影は俺の意図を汲んでそのガラスケースから簪を取り出すと俺に渡した。
不思議そうにしてる名前の背後に回って、俺は何も言わずに彼女の髪を簡単に上に結い上げてから簪を差した。
名前が俺を驚いた顔で振り返る。
「よく似合ってる」
「ほ、本当?」
「あぁ」
名前は頬を染めて嬉しそうに笑った。
あぁ。この笑顔が俺のものだと思うと言葉にできぬほどの優越感を感じる。
「このままいただいていく」
俺は店主に大粒の砂金を渡した。
それをみて店主はあたふたとしていたが、妻に贈り物ができた礼だと言ってそのまま受け取らせた。
店を後にした後も名前はその簪の硝子細工に時折触れては嬉しそうに笑っていた。
一通り見て回った頃、湯屋に戻ることにした。
湯屋の中庭を通って部屋に戻ろうと、2人で庭の花を見ながら進んだ。
その時、中庭に面した大広間のガラス戸が勢いよく開けられた。
「サソリ様!お会いできて光栄です!」
中から1人の女が出て来た。
湯屋で働いているものであろうと服装ですぐわかった。
女は懐に入れていた自分の草履を取り出すと、それを履いて俺たちの方へと走って来た。
この女、湯屋に到着した時にいた人間だな。
これは…面倒だ。
「あの!私、
「は?庇う…?悪いがなんのことかわからない。妻と2人で休暇中なんだ。遠慮してもらえないか?」
上目遣いで話しかけてくる女に、俺は視線は冷たいまま返事をした。
このままサッサとどこかへ行ってくれれば1番いいと、苛立ちを抑えて出来るだけ穏やかに話した。
しかし女は引き下がらなかった。
俺が言った事など聞いていなかったかのように話し続けた。
「私一度サソリ様と2人でお話ししたくて…」
「え…?」
ここまでくるとその積極性は愚かで自惚れがすぎる。強欲な醜い女め。
横に妻である名前がいるのにも関わらず、女はあからさまな態度を取る。
流石の名前もその女の発言には表情を不安そうに曇らせた。
それを見て、名前の前では憚られたが俺は苛立ちを隠すのをやめ、明らかな拒絶を見せようと口を開きかけた。その時、
「あ!まずは3人でもいいですよ?その人、私と同じ人間ですよね?同じ仲間ですし仲良く…」
「それ以上その汚い口を開くな」
「え?」
一瞬で周りの空気が乾き、冷たくなった。
俺の周りから徐々に、庭の美しかった花々が次々と枯れ出した。
「な、何これ?!」
女は恐怖に目を見開いた。
よりによってこの人間…!
俺が1番名前に聞かせたくない言葉を…っ!
「さっ、サソリ‼︎」
名前が咄嗟に俺の腕を掴んだ。
ハッと我に帰った俺は名前を見た。
掴まれた腕から僅かに彼女が震えているのがわかった。両目を強く閉じて…怯えているようだった。
「…すまない。大丈夫だ」
「うん…うん…」
俺は名前を安心させるように抱きしめた。
女はポカンとした間抜け面でへたり込んでいた。
異変を感じ取った番頭が靴を履くのも忘れ、酷く慌てた様子で駆け寄ってきた。
他にもいつの間にか何人かの野次馬が集まっていた。
「も、もっ、申し訳ございませぬ!申し訳ございませぬ!この小娘が無礼を働いたようで!元は人間の世界から迷い込んだ余所者でして!ど、どうかっ…どうかお許しくださいぃ!」
番頭は地面に額を擦り付けながら必死に謝罪していた。
「貴様も頭を下げんかぁ‼︎」
「ちょっ!痛!何すんのよ?!」
番頭は女の頭を掴み無理やり土下座させようとしていた。
そんな中俺は考えていた。
早くこの女を始末せねばと。
二度と名前に近づけさせるつもりは毛頭ないが、万が一ということもある。
「どうか!お許しを…この者の処分はお望み通りにいたしますので!何なりと!」
「は?!私が何したって言うのよ?!」
「黙れこの疫病神が!煤にされて消されたいか?!」
番頭がそう言うならばと、この場でこの女を消し去ってしまおうと思ったが…名前の目の前でそんな事をすれば今度は酷く俺に怯え…最悪拒絶されかねない。ひとまずここは何事もなかったように振る舞うのが得策か…。
「…いや。何か誤解があったようだ。こちらこそすまなかったな。庭はすぐ元に戻そう」
俺が手で一帯を払うような仕草をすれば花は再び息を吹き返し、美しく咲き誇った。
その様子を見て名前は安心したのか、小さく息をついた。
番頭は目に涙を浮かべながら「あ、ありがとうございます…!」と再び頭を下げた。横の女はまた自分は助けられたとでも勘違いしているのか、上目遣いで気持ちの悪い笑顔をこちらに向けていた。
早くコイツを消し去らねば。