運命の糸に巻かれ
名前変換
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砂漠の砂が舞い上がる。
後ろでは足止めしてくれている部下たちの怒声や悲鳴が聞こえる。
俺は聞こえないふりをしてとにかく走った。
口の中は鉄と砂の味がする。
「っは、…しっかりしろ!名前っ…‼︎」
腕の中でどんどん冷たくなっていく愛しい人を抱きしめる。
いつのまにか誰の声もしなくなった。
聞こえるのは俺の荒い呼吸と耳をつん裂くような風の音だけだった。
名前の呼吸も聞こえない。
「…っ頼む!死ぬな…‼︎名前っ」
神なんていないことは知っている。
だけど今何に祈ればいい?
里のために尽くしたこの少女は、その愛していた里に裏切られた。
敵国にその身を狙われている彼女を危険視した上層部は彼女に刺客を送り込んだ。
直前でその目論みに気づいた俺と部下で救出に向かうも、辿り着いた時には血の海に沈む美しい彼女の姿があった。
とどめを刺そうとする暗部の連中を傀儡で切り刻んだ。
今まさに呼吸を止めてしまいそうな彼女を抱き上げるとすぐさま走り出した。
砂嵐が年中吹き荒れる荒野を抜け、誰も寄り付かぬ谷底に降りた。
そこには洞窟がいくつかある。
そのうちの一つの中で、俺は禁術の実験を繰り返していた。
名前も知らない俺だけの秘密の場所だった。
「絶対にっ、絶対に助けてやる!死ぬな名前‼︎」
寝台に名前を横たえる。
「‼︎」
全身に毒が回って、血管は全て青く浮き出ていた。呼吸も既に止まっていた。
「あ、あぁ…」
間ニ合ワナイ…?
「い、嫌だ…」
オイテイカナイデ、
俺の震える体は勝手に動いていた。
名前の毒に侵された血を濾過し、中和するために全身に管を通す。
もう、この体…この器では名前は生きられない。
まだ作りかけだった傀儡を巻物から引っ張り出し、術を施す。
この際姿形に構ってられなかった。今はこれしかない。
“人傀儡”として名前の核をこの傀儡に移すことが最優先だ。
名前の血液、臓器、取り出せる物全てを取り出して核を作る。
「後でちゃんと名前の器を作ってやるからな…!」
巻物に名前の血で名前を書き込み、印を結びチャクラを流し込んだ。
「っ頼む、うまくいってくれ…‼︎」
もう写真だけでしか思い出せない父と母の顔が浮かんだ。
この世界は俺からどれだけ奪えば気が済むのだろう。
もう俺から何も奪うな。
名前だけは絶対に渡さない。
お前だけは、名前だけは…
お前がいないなら、里だけじゃない…この世界なんてすぐに壊してやる。
俺は祈り、チャクラを流し込み続ける。
だが核を埋め込んだ傀儡には何の変化もない。
「…約束しただろっ」
俺は埋め込んだその核に額を押し付ける。
そこはまだ温かい。
行くな。
「この手を離すなと…!」
そこで俺のチャクラは尽きた。
全身の力が抜けて膝から崩れた。
そんな、
ーーー嫌だ。
いやだいやだいやだいやだいやだ‼︎
「嘘だ…嘘だぁ…‼︎」
その場に蹲る。
握り込んだ掌には自分の爪が食い込んだ。
そこから流れる血は、俺のものか…名前の血か…。
掌が、胸が、熱い。
憎しみが俺の心臓を焦がしているようだった。
「壊してやる‼︎…風の国も…‼︎全部!全部‼︎ぜんっ」
『さぁ、そ…り』
「‼︎」
俺は顔を上げた。
だ、誰だ?辺りには何の気配もない。
老人のような、子供のような…不思議な声が響いた。
目の前には名前の仮の器にしようとした傀儡しかなかった。
俺は戦闘用のために作ったその傀儡を見上げた。
まさか…
「…名前?」
ギギッと錆びついたような音を鳴らしながらその傀儡の頭部が動いてこちらを見た。
『なかない、でぇ…?』
後ろでは足止めしてくれている部下たちの怒声や悲鳴が聞こえる。
俺は聞こえないふりをしてとにかく走った。
口の中は鉄と砂の味がする。
「っは、…しっかりしろ!名前っ…‼︎」
腕の中でどんどん冷たくなっていく愛しい人を抱きしめる。
いつのまにか誰の声もしなくなった。
聞こえるのは俺の荒い呼吸と耳をつん裂くような風の音だけだった。
名前の呼吸も聞こえない。
「…っ頼む!死ぬな…‼︎名前っ」
神なんていないことは知っている。
だけど今何に祈ればいい?
里のために尽くしたこの少女は、その愛していた里に裏切られた。
敵国にその身を狙われている彼女を危険視した上層部は彼女に刺客を送り込んだ。
直前でその目論みに気づいた俺と部下で救出に向かうも、辿り着いた時には血の海に沈む美しい彼女の姿があった。
とどめを刺そうとする暗部の連中を傀儡で切り刻んだ。
今まさに呼吸を止めてしまいそうな彼女を抱き上げるとすぐさま走り出した。
砂嵐が年中吹き荒れる荒野を抜け、誰も寄り付かぬ谷底に降りた。
そこには洞窟がいくつかある。
そのうちの一つの中で、俺は禁術の実験を繰り返していた。
名前も知らない俺だけの秘密の場所だった。
「絶対にっ、絶対に助けてやる!死ぬな名前‼︎」
寝台に名前を横たえる。
「‼︎」
全身に毒が回って、血管は全て青く浮き出ていた。呼吸も既に止まっていた。
「あ、あぁ…」
間ニ合ワナイ…?
「い、嫌だ…」
オイテイカナイデ、
俺の震える体は勝手に動いていた。
名前の毒に侵された血を濾過し、中和するために全身に管を通す。
もう、この体…この器では名前は生きられない。
まだ作りかけだった傀儡を巻物から引っ張り出し、術を施す。
この際姿形に構ってられなかった。今はこれしかない。
“人傀儡”として名前の核をこの傀儡に移すことが最優先だ。
名前の血液、臓器、取り出せる物全てを取り出して核を作る。
「後でちゃんと名前の器を作ってやるからな…!」
巻物に名前の血で名前を書き込み、印を結びチャクラを流し込んだ。
「っ頼む、うまくいってくれ…‼︎」
もう写真だけでしか思い出せない父と母の顔が浮かんだ。
この世界は俺からどれだけ奪えば気が済むのだろう。
もう俺から何も奪うな。
名前だけは絶対に渡さない。
お前だけは、名前だけは…
お前がいないなら、里だけじゃない…この世界なんてすぐに壊してやる。
俺は祈り、チャクラを流し込み続ける。
だが核を埋め込んだ傀儡には何の変化もない。
「…約束しただろっ」
俺は埋め込んだその核に額を押し付ける。
そこはまだ温かい。
行くな。
「この手を離すなと…!」
そこで俺のチャクラは尽きた。
全身の力が抜けて膝から崩れた。
そんな、
ーーー嫌だ。
いやだいやだいやだいやだいやだ‼︎
「嘘だ…嘘だぁ…‼︎」
その場に蹲る。
握り込んだ掌には自分の爪が食い込んだ。
そこから流れる血は、俺のものか…名前の血か…。
掌が、胸が、熱い。
憎しみが俺の心臓を焦がしているようだった。
「壊してやる‼︎…風の国も…‼︎全部!全部‼︎ぜんっ」
『さぁ、そ…り』
「‼︎」
俺は顔を上げた。
だ、誰だ?辺りには何の気配もない。
老人のような、子供のような…不思議な声が響いた。
目の前には名前の仮の器にしようとした傀儡しかなかった。
俺は戦闘用のために作ったその傀儡を見上げた。
まさか…
「…名前?」
ギギッと錆びついたような音を鳴らしながらその傀儡の頭部が動いてこちらを見た。
『なかない、でぇ…?』