毒の少女
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デイダラ視点
最近サソリの旦那の様子がおかしい。
「そんでよ!そん時オイラの芸術でアイツらの罠全部木っ端微塵にしてやってよ!その時のアイツらの顔が傑作でさ!うん!」
「…」
「…?、なぁ!旦那!聞ぃてんのかよ?」
「…?何だ」
「おいおい、ホントに聞こえてなかったのかよ。最近旦那変だぜ。何つーか、反応がいつもより薄いっつーかなんつーか、存在自体薄くなってきたっつーか」
「そうかよ」
「…」
最後の方は旦那がわざと腹が立ちそうな事言ったのにこの調子でやんの。
最近どっか心ここにあらずでオイラの話なんか聞いちゃいねぇ。そんなこと言ったら旦那は傀儡にそもそも心なんかないとか言いそうだよな。面倒だからいわねぇ。うん。
旦那とはお互いの芸術に対するベクトルは見事に正反対の方向を向いている。だから衝突する事はしょっちゅう。しかしながら刺激を受けることもある。話が噛み合わなくても、オイラはオイラでそのやり取りがイラつく事もあれば楽しんでる時もあったんだ。
…それが最近ときたらこの調子。
そもそも旦那以外の奴らは芸術観や美に対する価値観など皆無。
ゾンビコンビはそれぞれ金と神にしか興味ねぇ。鬼鮫の旦那は話は聞いてくれるが頭ん中は夕飯の支度の事でいっぱいだ。イタチなんか顔を見るのも御免だ。トビはうるせぇ。
ペインと小南、ゼツに関してはほとんどアジトにいない。
「俺は寄るところがある。お前先にアジトに戻ってろ」
終いにゃこれだ。最近やたらと単独行動を旦那は取りたがる。オイラは思う。たぶんこの前ふと旦那が話してた薬屋が関係してるんじゃねぇかな。
「いいけどよ。もしかして前話してた薬屋に行くのかい?うん?」
「……そうだ」
ん?何だ?今の間は。
「とにかくお前は先戻ってろ」
話はこれで終わりだと言いたげに旦那は鳥から降りるため立ち上がった。
それが何だか無性に腹が立ってきて、オイラはわざと鳥が飛ぶ高度をそのまま維持した。いつもなら地面まで下ろしてやるか高度を下げるけど、もう知らねぇ。勝手にしろよ。
そんなオイラの気も知らずに旦那はヒルコのままヒラリと鳥から飛び降りた。
ちっ…。ヒルコぶっ壊れても知らねぇからな。
何故かモヤモヤとした気持ちを抱えたままオイラは1人、帰路につくことにした。
「…ん?」
オイラはその時ハッとした。
まさか。
旦那のやつ…。
「女でもいるんじゃ…」
最近の旦那の様子。それにさっき行き先を聞いた時のあの態度…。
「へへっ!何だそういうことか!オイラにバレたら散々いじられると思って隠してやんのか」
ホントにそうだったらビッグニュースだ。あの旦那が惚れる女ってどんなだ?!そもそも旦那が女に興味があるとはな。
本当だったら皆にも教えてやろう。あの無機質で退屈なメンバーもこのニュースには食いつくだろう。その様子を想像するだけでも笑える。
「ん、なんだ旦那。また例の薬屋のところに行くのかい?うん?」
オイラはもう真実を確かめたくてうずうずしていた。
あれからまた旦那がアジトをコソコソ出て行こうとしているところを捕まえた。
もう顔がニヤニヤするのを抑えられねぇ。
旦那が迷惑そうにしているのも気付いているが、構わず詮索を続けた。
「その薬屋にすごい美人でもいるのかい?」
美人かどうかは知らないがお目当てはきっとその薬師なんだろうと、オイラは半分確信を持って旦那に問いかけた。
でも。
「その薬師、俺が作った毒薬の解毒剤を完璧に調合しやがる」
「?ほー」
ん?
「奴が解毒できないような毒を作り上げれば、俺の毒の完成度は証明されるってわけだ」
旦那から返ってきた説明はオイラの期待を大きく裏切る内容だった。
…んだよー!!
オイラのテンションはだだ下がりだ。
どうしてくれんだ!こういう話を面白がりそうな飛段のヤツに今度びっくりするニュース聞かせてやるなんて余計なこと言っちまったじゃねぇか!
旦那じゃなくて、しばらくはオイラがアイツにゲハゲハ笑われるのが簡単に想像できてゲンナリした。
オイラは早々と旦那に別れを告げてアジトの奥に引っ込んでいった。
「んだよ旦那のやつ。この間の態度から絶対女絡みだと思ったのによー…。さっきのは嘘か?いや、でも嘘にも聞こえなかったし…」
「よぉー!デイダラちゃんまたサソリに置いてかれたのかよ」
「‼︎」
こんな時に限って1番会いたくないヤツに遭遇した。これは逃げるしかねぇな。
「オイラ忙しいんだ。うん。またな飛だ…」
「そいやこの前言ってたおもしれぇ話って何だったんだよ?」
あー!!くそ!くそ!
無視して走り出そうとしたオイラの肩を飛段がガシリと掴んだ。
「なぁなぁ!もったいぶらずに教えろよ!」
「あ、やー。その。だ、旦那がよぉ」
「は?サソリ?あいつが本当はすんげーサバ読んでるって話は知ってるぜ」
「ちっげーよ!旦那のやつがコソコソ女に会いにいってんだ!」
「は?!まじかよ?!」
オイラが想像した通り、飛段はかなり驚きつつもその目には好奇の色が窺えた。
あー、ここまではオイラの期待通りの反応なのになぁ。
「…と、思ったんだけど…違った」
「はぁぁぁ???」
「何かすげー薬作る奴に会いにいってるだけだった」
「それが女なんじゃねぇの?」
「オイラもそう思ったんだけどよ。そいつ旦那の作った毒の解毒剤全部作れるらしいんだ。オイラ毒はわかんねぇけど旦那の毒がその辺の奴に作れねぇのは何となくわかる」
「はー、よくわかんねぇけど。何か仙人みたいなジジイかババアしか想像できねぇわ」
それはオイラも同感だ。
ん?それよりも。
このまま「勘違いだったー」で、すんなり話終われそうだな。
へへ!飛段のやつ物分かりけっこういいじゃ
「ま!デイダラちゃんはまだ粘土遊びが好きなお子様だからな!そんな勘違いもあるぜぇ!ゲハっゲハハ!」
そう言って手を振りながら、大股で飛段は去っていった。
…っはぁぁぁあん!?!?!
あの野郎今なんて言った?!
オイラの芸術をお遊び呼ばわりしやがってぇ!!
あのやろー!!
何でオイラがこんな目に!!
許せねぇ!!
それもこれもあれも全部サソリの旦那と仙人(例の薬師をそう呼ぶ)のせいだ!!
オイラはその場で怒りに拳を震わせた。
そして数週間後のことだった。
旦那は普段にも増してさらに自分の部屋に篭るようになっていた。
そういや…最近1人ででかけたりしねぇな。
仙人とこに行くのもうやめたのか?
もしかしてついに旦那のやつ、仙人に白旗上げたのか!?
オイラは先日恥をかかされたこともあって(逆恨みとか言うな。うん)白旗上げて部屋に引きこもってる旦那をからかってやろうと思った。
そんで久しぶりにオイラの新作を見せて元気付けてやるか、うん!
「へへ!」
そうと決めたオイラは早速旦那の部屋に向かった。
「よぉ旦那ー!最近なんか元気ねぇんじゃ…」
オイラはいつも通りノックなんかせずに旦那の部屋の扉を開けた。これをするといっつも怒った顔して旦那はこっちを見る。
今日もそのはずだった。のだが。
「お、お前…誰だ?!」
「…」
そこには目を丸くして、オイラと同じように驚いた顔をした女がいた。
「どこの忍びだ。どうやってアジトに入った…!」
オイラはすかさず粘土の入った腰のポーチに手を伸ばす。
「あっ…!まっ、待って!私はその…!」
旦那の部屋にいたってことは、旦那が狙いか?ぱっと見強そうな忍にも見えねぇが…誰にも気づかれずにここに入ってこれたとはな。速攻で片付けてやるぜ。うん。
青い顔で慌てて何か言おうとする女に構わず、オイラは粘土にチャクラを流し込む。
「感謝しろ。オイラの芸術で殺してや」
「デイダラてんめぇぇえぇ@△○¥&$×★‼︎‼︎」
グェッ‼︎‼︎
後ろから地獄の底から聞こえてきたような悍しい声がしたと思ったら、紐のようなもので首を締められた。
し、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ‼︎‼︎
「無事か名前」
「さ、サソリ…」
声も上げれず苦しんでるオイラを放ったらかしに、旦那は女の元に駆け寄る。その時首を締めるこれがやっと旦那のチャクラでできた糸だと気づく。
お、おい、旦那…。は、早くこれとって…く…
「!!やだ!サソリ!あの人息できてないよ!?」
「ん?あぁ…」
「どうしようサソリ!?」
旦那のせいなんだがな…。こいつチャクラ見えてねぇのか?忍じゃねぇのか…。
さっきまで殺そうとしてたオイラを本気で心配してるのか涙目でオイラに駆け寄ろうとして、それを旦那が止めてる。
おい。
どっちでもいい。早く助けろ。
オイラの心の声が聞こえたのか。
「仕方ねぇな」
旦那がそう言うと共に気道が圧迫感から解放された。
「っがは!!…ハァー!ハァー!」
あー、くそ!どうなってんだ!
何でオイラがこんな目に!
「…デイダラぁ」
また地の底から伝ってきたような声が聞こえてオイラはハッとした。
「てめぇ、今何しようとしてた」
「…?!何って…!そいつが侵入者だと思ったんだよ!!何なんだよそいつ?!」
オイラは旦那の隣でビクビクしている女を見る。
「…スカウトしてきた。俺の部下だ。手ぇ出すんじゃねぇ」
「はぁ?!オイラそんなの初めて聞いたぞ!だいたい旦那部下をアジトにまで連れてきたことなんて一回も…」
「ほら、名前出かけるぞ」
「おいー!人の話聞けよ!」
旦那は混乱するオイラそっちのけで名前と呼ばれた女の背中を押して部屋を出て行こうとした。
女は旦那に促されながらもチラチラとこっちを気にしていた。
そして意を決したようにこちらに向き直った。
「あ、あの!」
「あ?」
「わ、私、名前といいます。こちらでお世話になることになったので…その、よろしくお願いします…」
「え?あ、おぉ…」
オイラは何だか毒気を抜かれたように拍子抜けした。
わざわざ旦那がスカウトしてきた奴だっていうのに
おずおずと控えめに話すその様子は、至って平凡な女なのだ。
でも何だか悪い気はしなくて、オイラも名前くらい教えといてやってもいいかって気になった。
「…オイラはデイダラだ。旦那とツーマンセル組んでて…」
「行くぞ」
「だぁーから!!最後まで話させろよ!」
待たされるのが嫌いな旦那が今日は特にせっかちだ。
でも次の瞬間ギョッとした。
旦那が名前の手を取って、部屋の外へと出ていったのだ。
あの旦那が…女の手を…。
そしてそれを嬉しそうに握り返す名前を見て、やっと2人はただの上司と部下の関係ではないとオイラは気付いた。
名前が仙人だとオイラが知るのは、もう少し先の話だ。
おわれ
最近サソリの旦那の様子がおかしい。
「そんでよ!そん時オイラの芸術でアイツらの罠全部木っ端微塵にしてやってよ!その時のアイツらの顔が傑作でさ!うん!」
「…」
「…?、なぁ!旦那!聞ぃてんのかよ?」
「…?何だ」
「おいおい、ホントに聞こえてなかったのかよ。最近旦那変だぜ。何つーか、反応がいつもより薄いっつーかなんつーか、存在自体薄くなってきたっつーか」
「そうかよ」
「…」
最後の方は旦那がわざと腹が立ちそうな事言ったのにこの調子でやんの。
最近どっか心ここにあらずでオイラの話なんか聞いちゃいねぇ。そんなこと言ったら旦那は傀儡にそもそも心なんかないとか言いそうだよな。面倒だからいわねぇ。うん。
旦那とはお互いの芸術に対するベクトルは見事に正反対の方向を向いている。だから衝突する事はしょっちゅう。しかしながら刺激を受けることもある。話が噛み合わなくても、オイラはオイラでそのやり取りがイラつく事もあれば楽しんでる時もあったんだ。
…それが最近ときたらこの調子。
そもそも旦那以外の奴らは芸術観や美に対する価値観など皆無。
ゾンビコンビはそれぞれ金と神にしか興味ねぇ。鬼鮫の旦那は話は聞いてくれるが頭ん中は夕飯の支度の事でいっぱいだ。イタチなんか顔を見るのも御免だ。トビはうるせぇ。
ペインと小南、ゼツに関してはほとんどアジトにいない。
「俺は寄るところがある。お前先にアジトに戻ってろ」
終いにゃこれだ。最近やたらと単独行動を旦那は取りたがる。オイラは思う。たぶんこの前ふと旦那が話してた薬屋が関係してるんじゃねぇかな。
「いいけどよ。もしかして前話してた薬屋に行くのかい?うん?」
「……そうだ」
ん?何だ?今の間は。
「とにかくお前は先戻ってろ」
話はこれで終わりだと言いたげに旦那は鳥から降りるため立ち上がった。
それが何だか無性に腹が立ってきて、オイラはわざと鳥が飛ぶ高度をそのまま維持した。いつもなら地面まで下ろしてやるか高度を下げるけど、もう知らねぇ。勝手にしろよ。
そんなオイラの気も知らずに旦那はヒルコのままヒラリと鳥から飛び降りた。
ちっ…。ヒルコぶっ壊れても知らねぇからな。
何故かモヤモヤとした気持ちを抱えたままオイラは1人、帰路につくことにした。
「…ん?」
オイラはその時ハッとした。
まさか。
旦那のやつ…。
「女でもいるんじゃ…」
最近の旦那の様子。それにさっき行き先を聞いた時のあの態度…。
「へへっ!何だそういうことか!オイラにバレたら散々いじられると思って隠してやんのか」
ホントにそうだったらビッグニュースだ。あの旦那が惚れる女ってどんなだ?!そもそも旦那が女に興味があるとはな。
本当だったら皆にも教えてやろう。あの無機質で退屈なメンバーもこのニュースには食いつくだろう。その様子を想像するだけでも笑える。
「ん、なんだ旦那。また例の薬屋のところに行くのかい?うん?」
オイラはもう真実を確かめたくてうずうずしていた。
あれからまた旦那がアジトをコソコソ出て行こうとしているところを捕まえた。
もう顔がニヤニヤするのを抑えられねぇ。
旦那が迷惑そうにしているのも気付いているが、構わず詮索を続けた。
「その薬屋にすごい美人でもいるのかい?」
美人かどうかは知らないがお目当てはきっとその薬師なんだろうと、オイラは半分確信を持って旦那に問いかけた。
でも。
「その薬師、俺が作った毒薬の解毒剤を完璧に調合しやがる」
「?ほー」
ん?
「奴が解毒できないような毒を作り上げれば、俺の毒の完成度は証明されるってわけだ」
旦那から返ってきた説明はオイラの期待を大きく裏切る内容だった。
…んだよー!!
オイラのテンションはだだ下がりだ。
どうしてくれんだ!こういう話を面白がりそうな飛段のヤツに今度びっくりするニュース聞かせてやるなんて余計なこと言っちまったじゃねぇか!
旦那じゃなくて、しばらくはオイラがアイツにゲハゲハ笑われるのが簡単に想像できてゲンナリした。
オイラは早々と旦那に別れを告げてアジトの奥に引っ込んでいった。
「んだよ旦那のやつ。この間の態度から絶対女絡みだと思ったのによー…。さっきのは嘘か?いや、でも嘘にも聞こえなかったし…」
「よぉー!デイダラちゃんまたサソリに置いてかれたのかよ」
「‼︎」
こんな時に限って1番会いたくないヤツに遭遇した。これは逃げるしかねぇな。
「オイラ忙しいんだ。うん。またな飛だ…」
「そいやこの前言ってたおもしれぇ話って何だったんだよ?」
あー!!くそ!くそ!
無視して走り出そうとしたオイラの肩を飛段がガシリと掴んだ。
「なぁなぁ!もったいぶらずに教えろよ!」
「あ、やー。その。だ、旦那がよぉ」
「は?サソリ?あいつが本当はすんげーサバ読んでるって話は知ってるぜ」
「ちっげーよ!旦那のやつがコソコソ女に会いにいってんだ!」
「は?!まじかよ?!」
オイラが想像した通り、飛段はかなり驚きつつもその目には好奇の色が窺えた。
あー、ここまではオイラの期待通りの反応なのになぁ。
「…と、思ったんだけど…違った」
「はぁぁぁ???」
「何かすげー薬作る奴に会いにいってるだけだった」
「それが女なんじゃねぇの?」
「オイラもそう思ったんだけどよ。そいつ旦那の作った毒の解毒剤全部作れるらしいんだ。オイラ毒はわかんねぇけど旦那の毒がその辺の奴に作れねぇのは何となくわかる」
「はー、よくわかんねぇけど。何か仙人みたいなジジイかババアしか想像できねぇわ」
それはオイラも同感だ。
ん?それよりも。
このまま「勘違いだったー」で、すんなり話終われそうだな。
へへ!飛段のやつ物分かりけっこういいじゃ
「ま!デイダラちゃんはまだ粘土遊びが好きなお子様だからな!そんな勘違いもあるぜぇ!ゲハっゲハハ!」
そう言って手を振りながら、大股で飛段は去っていった。
…っはぁぁぁあん!?!?!
あの野郎今なんて言った?!
オイラの芸術をお遊び呼ばわりしやがってぇ!!
あのやろー!!
何でオイラがこんな目に!!
許せねぇ!!
それもこれもあれも全部サソリの旦那と仙人(例の薬師をそう呼ぶ)のせいだ!!
オイラはその場で怒りに拳を震わせた。
そして数週間後のことだった。
旦那は普段にも増してさらに自分の部屋に篭るようになっていた。
そういや…最近1人ででかけたりしねぇな。
仙人とこに行くのもうやめたのか?
もしかしてついに旦那のやつ、仙人に白旗上げたのか!?
オイラは先日恥をかかされたこともあって(逆恨みとか言うな。うん)白旗上げて部屋に引きこもってる旦那をからかってやろうと思った。
そんで久しぶりにオイラの新作を見せて元気付けてやるか、うん!
「へへ!」
そうと決めたオイラは早速旦那の部屋に向かった。
「よぉ旦那ー!最近なんか元気ねぇんじゃ…」
オイラはいつも通りノックなんかせずに旦那の部屋の扉を開けた。これをするといっつも怒った顔して旦那はこっちを見る。
今日もそのはずだった。のだが。
「お、お前…誰だ?!」
「…」
そこには目を丸くして、オイラと同じように驚いた顔をした女がいた。
「どこの忍びだ。どうやってアジトに入った…!」
オイラはすかさず粘土の入った腰のポーチに手を伸ばす。
「あっ…!まっ、待って!私はその…!」
旦那の部屋にいたってことは、旦那が狙いか?ぱっと見強そうな忍にも見えねぇが…誰にも気づかれずにここに入ってこれたとはな。速攻で片付けてやるぜ。うん。
青い顔で慌てて何か言おうとする女に構わず、オイラは粘土にチャクラを流し込む。
「感謝しろ。オイラの芸術で殺してや」
「デイダラてんめぇぇえぇ@△○¥&$×★‼︎‼︎」
グェッ‼︎‼︎
後ろから地獄の底から聞こえてきたような悍しい声がしたと思ったら、紐のようなもので首を締められた。
し、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ‼︎‼︎
「無事か名前」
「さ、サソリ…」
声も上げれず苦しんでるオイラを放ったらかしに、旦那は女の元に駆け寄る。その時首を締めるこれがやっと旦那のチャクラでできた糸だと気づく。
お、おい、旦那…。は、早くこれとって…く…
「!!やだ!サソリ!あの人息できてないよ!?」
「ん?あぁ…」
「どうしようサソリ!?」
旦那のせいなんだがな…。こいつチャクラ見えてねぇのか?忍じゃねぇのか…。
さっきまで殺そうとしてたオイラを本気で心配してるのか涙目でオイラに駆け寄ろうとして、それを旦那が止めてる。
おい。
どっちでもいい。早く助けろ。
オイラの心の声が聞こえたのか。
「仕方ねぇな」
旦那がそう言うと共に気道が圧迫感から解放された。
「っがは!!…ハァー!ハァー!」
あー、くそ!どうなってんだ!
何でオイラがこんな目に!
「…デイダラぁ」
また地の底から伝ってきたような声が聞こえてオイラはハッとした。
「てめぇ、今何しようとしてた」
「…?!何って…!そいつが侵入者だと思ったんだよ!!何なんだよそいつ?!」
オイラは旦那の隣でビクビクしている女を見る。
「…スカウトしてきた。俺の部下だ。手ぇ出すんじゃねぇ」
「はぁ?!オイラそんなの初めて聞いたぞ!だいたい旦那部下をアジトにまで連れてきたことなんて一回も…」
「ほら、名前出かけるぞ」
「おいー!人の話聞けよ!」
旦那は混乱するオイラそっちのけで名前と呼ばれた女の背中を押して部屋を出て行こうとした。
女は旦那に促されながらもチラチラとこっちを気にしていた。
そして意を決したようにこちらに向き直った。
「あ、あの!」
「あ?」
「わ、私、名前といいます。こちらでお世話になることになったので…その、よろしくお願いします…」
「え?あ、おぉ…」
オイラは何だか毒気を抜かれたように拍子抜けした。
わざわざ旦那がスカウトしてきた奴だっていうのに
おずおずと控えめに話すその様子は、至って平凡な女なのだ。
でも何だか悪い気はしなくて、オイラも名前くらい教えといてやってもいいかって気になった。
「…オイラはデイダラだ。旦那とツーマンセル組んでて…」
「行くぞ」
「だぁーから!!最後まで話させろよ!」
待たされるのが嫌いな旦那が今日は特にせっかちだ。
でも次の瞬間ギョッとした。
旦那が名前の手を取って、部屋の外へと出ていったのだ。
あの旦那が…女の手を…。
そしてそれを嬉しそうに握り返す名前を見て、やっと2人はただの上司と部下の関係ではないとオイラは気付いた。
名前が仙人だとオイラが知るのは、もう少し先の話だ。
おわれ