毒の少女
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「奴と次の約束も取り付けたようだな。この調子で奴の油断を誘え」
自宅に戻るとまたあの忍が居た。
人の家に勝手に入って…不法侵入でしょ?浮世離れした生活をしている私でもそれくらいは知ってる。
私は無視して調剤室に使っている部屋に行こうとした。
「きゃっ!」
いつの間にか側に来ていた男に後ろから髪を掴まれた。
「あの男は何か素性を明かしたか?名前、使う武器、出身の忍び里、アジトに関する情報…何でもいい」
後ろから髪を引っ張り上げられて振り返ることもできない。頭皮が引きつる痛みは大したことないが、こんな奴の言いなりになるのが嫌で、悔しくて、目頭がギュッとなった。
「…っ薬に関しては熱心みたいで私の話をよく聞いてるけど…警戒してるのか他のことは何も話そうとしないわ」
本当は色々話してくれた。砂隠れにいたこと。ヒルコのような人傀儡を作っていること。そして自身も傀儡だということ。
でもコイツには絶対教えてなんかやらない。私が出来る唯一の小さな抵抗だった。
「…チッ、何でもいい。奴らには高額な懸賞金がかけられている。少しでも何か聞き出せたら逐一教えろ」
男は私から離れ、掴まれていた髪がパサっと肩に落ちた。
振り返ればそこにはもう男はいなかった。
私はその場に座り込んで静かに泣いた。
サソリに会いたい。
でも時間を共にすればするほど彼を追い詰めることになるかもしれない。
初めて好きになった人を、私は…。
その後も数度、サソリは私を訪ねてきてくれた。
今日は作った解毒剤をとりにきてくれる約束だ。いつもの場所で彼を待つ。
あ、来た!
彼はいつも時間通りに来てくれる。ヒルコの姿を確認した私は大きく手を振った。
あれ?なんだか頭がフワフワするな…。まだ飲んだ毒が分解しきれてないみたい。今朝はまだ少し熱があったしな…。
毒を飲んでることは内緒にしなくてはいけないから、悟られないように毎回ヒヤヒヤしている。
サソリの方へ駆け寄ると、彼もヒルコから出てきてこちらに歩いてきた。
やっぱり今日もかっこいいな。好きだな。
再確認して、恥ずかしくなって俯く。
「お前、熱でもあるのか?」
突然頬にサソリの手が触れて驚いた。
その手はひんやりとしていて、熱発している私にはとても気持ちが良かった。
しかし驚いた反動でつい後退りしてその手から離れてしまった。
触れられていた頬が今度はやけに熱く感じた。
顔もどんどん赤くなってる気がする。これはもう熱だけのせいじゃない!
そう思った私は慌てて話を逸らそうと、作った解毒剤をサソリに見せた。けど、今回頼まれていたのは彼でもまだ解毒剤を作れていないものだったようだ。それを聞いて焦った。私がどうして調合できたのか深く追求されれば、この体質のことがバレてしまうかもしれないと思った。
しかしその心配は杞憂に終わった。
「安心しろ。お前にそんな危ねえもん渡さねえよ」
彼は私が危険な毒を渡されて狼狽えていると思ってくれたようで、深く追求されなかった。
しかも…なんだろう。浮かれすぎなのはわかっているが、サソリのその言い方が私には嬉しすぎた。心配してくれたのだろうか…。
今日も私は絶好調でサソリとの時間を過ごした。
この時間だけは一族も、家族も、私を操ろうとする忍のことも忘れたかった。
「奴からは何も情報を得られそうにない。次で奴だけでも始末する」
「え…」
その日、サソリと別れて家に戻るとまたあの男が来ていた。
そして私が最も恐れていたことを言ってのけた。
「お前は奴が現れたらいつも通り薬の話でもして注意を引いておけ。我々が全員でかかれば暁とて1人では敵わん」
目眩がした。
このままではサソリが…。でもいうことを聞かなければ父と母が…。
それからは眠れず、食事もろくに摂らずに日々だけが過ぎていった。
私の意思に反してサソリとの約束した日はすぐにきてしまった。
「奴が来たら我々は逃げられぬように奴を囲む。それまでくれぐれも注意を引いておけ」
「…」
私は俯いて返事をしなかった。
彼はきっといつも通り時間ぴったりに来るだろう。でも、今日だけは来ないでくれないだろうか…。何か奇跡的な力が働いて、彼が私の前から姿を消してもうここへは二度と現れずに…。
木の根に腰掛けてそんなことを考えていた。
考えていたというより祈っていた。
会えなくなる事はとても辛いが、どこかで生きていてくれればそれでいい。
だが、そんな都合の良いことは起きない。
はやりサソリはいつも通り現れた。遠くにヒルコの姿が見える。今頃彼を抹殺するため、あの男達が罠を張り巡らせているだろう。
駄目。
ダメだよ。
サソリ、来ちゃダメ。
私はそこからはもう反射的に立ち上がり叫んだ。
「…だ、ダメ!逃げて!こっちに来ないで!」
彼はゆっくり立ち止まった。
早く!早く逃げて!そう叫びながら私は彼に向かって走った。勝手に涙が溢れる。
遠くで誰かが「裏切る気か!」「もういい!殺せ!」とか叫ぶ声と、木々が騒めく耳障りな音がした。
どうしよう。私のせいでサソリが。
そしてどうしていいかもわからないまま走る私に向かって、突然彼はヒルコの尾を物凄いスピードで伸ばしてきた。その鋭い切先が滲んだ視界に入る。
「!」
ヒルコの尾の先。
猛毒が塗ってあるって、前サソリが言ってた。
そうだよね、許せないよね。
騙してごめんね。ごめんね。
せめてちゃんと謝りたかったな…。
サソリ…。
そこで私の視界は真っ暗になった。
自宅に戻るとまたあの忍が居た。
人の家に勝手に入って…不法侵入でしょ?浮世離れした生活をしている私でもそれくらいは知ってる。
私は無視して調剤室に使っている部屋に行こうとした。
「きゃっ!」
いつの間にか側に来ていた男に後ろから髪を掴まれた。
「あの男は何か素性を明かしたか?名前、使う武器、出身の忍び里、アジトに関する情報…何でもいい」
後ろから髪を引っ張り上げられて振り返ることもできない。頭皮が引きつる痛みは大したことないが、こんな奴の言いなりになるのが嫌で、悔しくて、目頭がギュッとなった。
「…っ薬に関しては熱心みたいで私の話をよく聞いてるけど…警戒してるのか他のことは何も話そうとしないわ」
本当は色々話してくれた。砂隠れにいたこと。ヒルコのような人傀儡を作っていること。そして自身も傀儡だということ。
でもコイツには絶対教えてなんかやらない。私が出来る唯一の小さな抵抗だった。
「…チッ、何でもいい。奴らには高額な懸賞金がかけられている。少しでも何か聞き出せたら逐一教えろ」
男は私から離れ、掴まれていた髪がパサっと肩に落ちた。
振り返ればそこにはもう男はいなかった。
私はその場に座り込んで静かに泣いた。
サソリに会いたい。
でも時間を共にすればするほど彼を追い詰めることになるかもしれない。
初めて好きになった人を、私は…。
その後も数度、サソリは私を訪ねてきてくれた。
今日は作った解毒剤をとりにきてくれる約束だ。いつもの場所で彼を待つ。
あ、来た!
彼はいつも時間通りに来てくれる。ヒルコの姿を確認した私は大きく手を振った。
あれ?なんだか頭がフワフワするな…。まだ飲んだ毒が分解しきれてないみたい。今朝はまだ少し熱があったしな…。
毒を飲んでることは内緒にしなくてはいけないから、悟られないように毎回ヒヤヒヤしている。
サソリの方へ駆け寄ると、彼もヒルコから出てきてこちらに歩いてきた。
やっぱり今日もかっこいいな。好きだな。
再確認して、恥ずかしくなって俯く。
「お前、熱でもあるのか?」
突然頬にサソリの手が触れて驚いた。
その手はひんやりとしていて、熱発している私にはとても気持ちが良かった。
しかし驚いた反動でつい後退りしてその手から離れてしまった。
触れられていた頬が今度はやけに熱く感じた。
顔もどんどん赤くなってる気がする。これはもう熱だけのせいじゃない!
そう思った私は慌てて話を逸らそうと、作った解毒剤をサソリに見せた。けど、今回頼まれていたのは彼でもまだ解毒剤を作れていないものだったようだ。それを聞いて焦った。私がどうして調合できたのか深く追求されれば、この体質のことがバレてしまうかもしれないと思った。
しかしその心配は杞憂に終わった。
「安心しろ。お前にそんな危ねえもん渡さねえよ」
彼は私が危険な毒を渡されて狼狽えていると思ってくれたようで、深く追求されなかった。
しかも…なんだろう。浮かれすぎなのはわかっているが、サソリのその言い方が私には嬉しすぎた。心配してくれたのだろうか…。
今日も私は絶好調でサソリとの時間を過ごした。
この時間だけは一族も、家族も、私を操ろうとする忍のことも忘れたかった。
「奴からは何も情報を得られそうにない。次で奴だけでも始末する」
「え…」
その日、サソリと別れて家に戻るとまたあの男が来ていた。
そして私が最も恐れていたことを言ってのけた。
「お前は奴が現れたらいつも通り薬の話でもして注意を引いておけ。我々が全員でかかれば暁とて1人では敵わん」
目眩がした。
このままではサソリが…。でもいうことを聞かなければ父と母が…。
それからは眠れず、食事もろくに摂らずに日々だけが過ぎていった。
私の意思に反してサソリとの約束した日はすぐにきてしまった。
「奴が来たら我々は逃げられぬように奴を囲む。それまでくれぐれも注意を引いておけ」
「…」
私は俯いて返事をしなかった。
彼はきっといつも通り時間ぴったりに来るだろう。でも、今日だけは来ないでくれないだろうか…。何か奇跡的な力が働いて、彼が私の前から姿を消してもうここへは二度と現れずに…。
木の根に腰掛けてそんなことを考えていた。
考えていたというより祈っていた。
会えなくなる事はとても辛いが、どこかで生きていてくれればそれでいい。
だが、そんな都合の良いことは起きない。
はやりサソリはいつも通り現れた。遠くにヒルコの姿が見える。今頃彼を抹殺するため、あの男達が罠を張り巡らせているだろう。
駄目。
ダメだよ。
サソリ、来ちゃダメ。
私はそこからはもう反射的に立ち上がり叫んだ。
「…だ、ダメ!逃げて!こっちに来ないで!」
彼はゆっくり立ち止まった。
早く!早く逃げて!そう叫びながら私は彼に向かって走った。勝手に涙が溢れる。
遠くで誰かが「裏切る気か!」「もういい!殺せ!」とか叫ぶ声と、木々が騒めく耳障りな音がした。
どうしよう。私のせいでサソリが。
そしてどうしていいかもわからないまま走る私に向かって、突然彼はヒルコの尾を物凄いスピードで伸ばしてきた。その鋭い切先が滲んだ視界に入る。
「!」
ヒルコの尾の先。
猛毒が塗ってあるって、前サソリが言ってた。
そうだよね、許せないよね。
騙してごめんね。ごめんね。
せめてちゃんと謝りたかったな…。
サソリ…。
そこで私の視界は真っ暗になった。