芸コン夢
名前変換
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名前は疲れていた。
連日重なる任務。
アジトに帰るのは2週間ぶりだろうか。何とか早めにケリをつけて帰還した。
「疲れたー!ただいまみんなー」
戻ったことを知らせようとメンバーがリビングとして使っている部屋に顔を出した。
しかしそこにいたペイン、イタチ、鬼鮫は名前を見ると一斉にギョッとした。
名前はメンバーのその反応に首を傾げた。
「名前!何してる?!任務はどうした!?」
「え、何?リーダーどうしたの?任務ならちゃんと片付けてきたよ?」
「あー、不味いですよここに名前さんがいては」
「どうするリーダー、名前をどこかに閉じ込めて隠しておくか?」
「ちょ、鬼鮫も何なの!?イタチはサラッと怖いこと言わないでよ!」
任務もスピーディーかつ完璧にこなして、やっと帰ってきて早く休みたいのにこの対応。
名前は何の文句があるのだと憤慨した。
「お前、もしかして今日が何の日か忘れていたのか?」
イタチが呆れたように問いかける。
「今日?え?何かあったっけ…?ってか今日何日?ーーーあ」
「やっぱり忘れてたんですねぇ」
そう今日は名前の誕生日だ。
本来なら歓迎すべき日であるが、ここでは厄日だ。
「名前ー!去年の事を忘れたわけじゃないだろ!?お前のせいでアジトが半壊したんだぞ!」
「私のせいじゃないでしょ?!」
去年はサソリとデイダラが誕生日を祝おうとしてくれたが、予想通りどちらが名前と過ごすかでもめた。
結果、リーダーの言う通り何故かアジトが半壊するまでに至った。
「で、でも今年は大丈夫よ!サソリとデイダラも今日任務でしょ?」
名前達が出くわさないよう、誕生日前後はペイン達はあえてこの3人に集中して任務を与えていた。
しかし予想外にも名前が早く帰ってきてしまい焦っていた。
「ですがあの2人の事ですからねぇ」
「そうだな。念のため名前、お前は今日はアジトからは出ていってくれ」
「ちょっと!イタチ!冗談だよね!?私今帰ってきたところだよ?!」
「俺の部屋が吹き飛んだのを忘れたわけではあるまい?」
「ゔ…」
確かに、去年はイタチの部屋だけでなく何人かの部屋が吹き飛んだのだ。また迷惑をかけることになるのは心苦しかった。
しかしもう疲れてどこかに出かける気にもならない。
「じゃあシャワー浴びて、ちょっと休んだらすぐでかけるからさ…」
「ダメだ。今すぐだ」
「…」
有無は言わせないと、ペインのグルグルの目、イタチの写輪眼が睨んできた。
鬼鮫は後ろで困ったように笑うだけで味方にはなってくれそうになかった。
△
結局、アジトに帰ってすぐ追い出されてしまった名前は行くあてもなく森を彷徨っていた。
「こんな誕生日ってないんじゃない…?」
なんだか虚しくなってきた。
忘れていたとはいえ今日は誕生日。
メンバーには祝ってもらうどころか邪険にされる始末。まぁ優しくしてくれなど犯罪者集団に求めても仕方ない話かもしれないが。
「だいたいサソリとデイダラが普通に祝ってくれてればこんなことにならなかったよ!私は今頃布団の中でスヤスヤ眠ってたところなのにー!」
もういいや、この辺で寝てやる。もう疲れた。そう名前は開き直ることにした。
森は静かで木漏れ日が美しく煌めいていた。
鳥のさえずりが良い子守唄になりそうだ。
人の気配もない。
本来ならあと3日はかかりそうだった任務を我武者羅に片付けたのだ。少しでも横になりたかった。
名前は適当な木の根本に腰かけ、幹に背を預けた。
地面は柔らかい苔が生えていて痛くなさそうだった。
こういう時、この体をすっぽりと覆ってくれるデザインの外套はいい毛布代わりになる。
木漏れ日の中、2匹のアゲハ蝶が花の周りをヒラヒラと楽しそうに踊っているのを見ながら、名前は眠ってしまった。
「…あれ??」
気づけば夜になっていた。
「嘘でしょ。どんだけ寝てんのよ」
慌ててその場を立ち上がる。
座って寝ていたせいか体中が僅かに痛んだ。
先ほどの景色とは変わって夜の森は鬱蒼としていた。
星明かりだけが木々の間から見えた。
星座をみながらもう日付も変わろうとしている時間だと思った。
みんなが恐れていた誕生日も終わろうとしているのだと気づいた。
「はぁ、どうせまだ帰ってくるなとか言われそう。ーー散々な誕生日よ」
そうぼやいた。
別に祝って欲しかったわけじゃない。
ただ自分の誕生日を災厄の日としてメンバーに扱われるのは惨めな想いだった。
ーーー寂しい。
「…サソリとデイダラのバーカ」
名前はせめて2人にこの際祝って貰えばよかったかな、なんて思ってしまった。
その時風が吹いて、同時に頭上の星明かりが遮られた。
「名前!」
「ーーーー?!」
上を見上げれば巨大な鳥のような影が見えた。
あれは、デイダラの…。
「探したぞー!うん!アジト戻ったら名前は追い出したってみんなが言うからよ!」
デイダラの操る粘土の大鳥はゆっくりと地面に着地した。
鳥に乗っていたデイダラ、サソリは地面に降りて名前の方へ歩いてきた。
「名前、お前こんなところで何してる」
サソリがヒルコの中から話しかけてきた。
「…寝てたのよ。誕生日なのに誰かさん達のせいで追い出されちゃうし、こんなところで寝るしかなかったのよ!」
怒り心頭な様子の名前に流石の2人もたじろいだ。
「お、怒んなよー。うん。ほら。誕生日今から祝おうぜ!」
名前はそう言われて少し喜んでしまったが、疲れとメンバーから受けた仕打ちによって拗ねた気持ちではそれどころではなかった。
「いい!私疲れてるの!任務だって完璧にこなしてやっと帰ってきたのに皆私の事邪魔者扱いで…っ!」
2人には甘えもあってか、つい八つ当たりのような発言をしてしまった時。
ヒルコの尾の切っ先が名前に向かって飛んできた。まさか攻撃されるなんて思っていなかった名前は驚いて咄嗟に目を瞑り、腕で顔を庇うように身構えた。
「…う?」
しかし周りは変わらず静かで何の衝撃もこなかった。
名前が恐る恐る目を開くと、目の前のヒルコの尾の先には白い花が一輪挟まれていた。
「…誕生日…おめでと。これやるから機嫌直せ」
「お花…?」
ヒルコの発する重低音と可愛らしい花と言葉にギャップがありすぎて、しばし名前は固まった。
サソリはヒルコの中にいるので表情もわからないが慣れないことをして居心地悪そうにしているのが何となく伝わってきた。
「あ、ありがとう」
名前は花を手に取った。
それを見たデイダラが今度は懐から何かを取り出して名前に差し出した。
「オイラからはこれな!可愛いだろう!うん!」
そこには手乗りサイズの可愛らしい小鳥の粘土細工があった。
「作ってくれたの?」
誇らしげにデイダラが頷く。
「帰るぞ」
いつの間にかヒルコから本来の姿になったサソリが再びデイダラの作った鳥の上に飛び乗った。
「名前疲れてんだろ?」
未だに動こうとしない名前にサソリが話しかける。
「早く帰ってゆっくりしようぜ。皆んなにはちゃんと迷惑かけないって約束すっから」
デイダラもそれに続くように名前に帰るよう促した。
「う、うん!」
名前は嬉しかった。去年はというより毎度の事だが、デイダラもサソリも誕生日なのにも関わらず、言ってくることは一緒にいろだとか、一緒にここに行けだのあーしろこーしろと何故か注文ばかりだった。
今年はそんな2人が可愛らしいプレゼントと一緒に労りの気持ちを向けてくれたのが嬉しかった。
名前の喜んでいる様子に2人は満足そうに笑った。
3人を乗せて夜空の中を白い鳥がゆったりと飛んでいった。
夜風が気持ちよく、悪くない誕生日だったと名前は思った。
「しっかし旦那が花贈るなんて似合わねぇよなぁ!うんうん」
「あ゛ぁ?」
デイダラの言葉に名前は凍りついた。
「ちょっ、ちょっとやめ…」
「普段とかけ離れ過ぎてて思わず笑っちまいそうになったぜ!ははっ!うん!」
「…ほー」
サソリは静かに殺気を放った。
「てめぇも女に爆弾贈るなんて相当な悪趣味だな」
「あ゛?」
「え?!やだ!ねぇ!これも爆発するの!?ねぇ?!」
「オイラの芸術を悪趣味だってのかい?旦那ぁ?」
狼狽える名前を他所に2人は臨戦態勢に入る。
「いいぜ!見せてやるぜオイラの芸術ってやつをなぁ!」
「?!」
デイダラが印を結ぶ。
「喝!!」
「ちょっ!まっ!」
「あ」
名前が止めるのも虚しく、辺りは眩しい光に包まれた。掌に載せていた小鳥も例外ではない。
何故、何故こうなってしまうのだと。名前が泣いたのは言うまでもない。
やっとアジトに帰ってきた3人がボロボロな姿だったのを見て、メンバーは何も言わずに静かに頷き合った。
名前の誕生日を皆で祝うのは諦めよう、と。
連日重なる任務。
アジトに帰るのは2週間ぶりだろうか。何とか早めにケリをつけて帰還した。
「疲れたー!ただいまみんなー」
戻ったことを知らせようとメンバーがリビングとして使っている部屋に顔を出した。
しかしそこにいたペイン、イタチ、鬼鮫は名前を見ると一斉にギョッとした。
名前はメンバーのその反応に首を傾げた。
「名前!何してる?!任務はどうした!?」
「え、何?リーダーどうしたの?任務ならちゃんと片付けてきたよ?」
「あー、不味いですよここに名前さんがいては」
「どうするリーダー、名前をどこかに閉じ込めて隠しておくか?」
「ちょ、鬼鮫も何なの!?イタチはサラッと怖いこと言わないでよ!」
任務もスピーディーかつ完璧にこなして、やっと帰ってきて早く休みたいのにこの対応。
名前は何の文句があるのだと憤慨した。
「お前、もしかして今日が何の日か忘れていたのか?」
イタチが呆れたように問いかける。
「今日?え?何かあったっけ…?ってか今日何日?ーーーあ」
「やっぱり忘れてたんですねぇ」
そう今日は名前の誕生日だ。
本来なら歓迎すべき日であるが、ここでは厄日だ。
「名前ー!去年の事を忘れたわけじゃないだろ!?お前のせいでアジトが半壊したんだぞ!」
「私のせいじゃないでしょ?!」
去年はサソリとデイダラが誕生日を祝おうとしてくれたが、予想通りどちらが名前と過ごすかでもめた。
結果、リーダーの言う通り何故かアジトが半壊するまでに至った。
「で、でも今年は大丈夫よ!サソリとデイダラも今日任務でしょ?」
名前達が出くわさないよう、誕生日前後はペイン達はあえてこの3人に集中して任務を与えていた。
しかし予想外にも名前が早く帰ってきてしまい焦っていた。
「ですがあの2人の事ですからねぇ」
「そうだな。念のため名前、お前は今日はアジトからは出ていってくれ」
「ちょっと!イタチ!冗談だよね!?私今帰ってきたところだよ?!」
「俺の部屋が吹き飛んだのを忘れたわけではあるまい?」
「ゔ…」
確かに、去年はイタチの部屋だけでなく何人かの部屋が吹き飛んだのだ。また迷惑をかけることになるのは心苦しかった。
しかしもう疲れてどこかに出かける気にもならない。
「じゃあシャワー浴びて、ちょっと休んだらすぐでかけるからさ…」
「ダメだ。今すぐだ」
「…」
有無は言わせないと、ペインのグルグルの目、イタチの写輪眼が睨んできた。
鬼鮫は後ろで困ったように笑うだけで味方にはなってくれそうになかった。
△
結局、アジトに帰ってすぐ追い出されてしまった名前は行くあてもなく森を彷徨っていた。
「こんな誕生日ってないんじゃない…?」
なんだか虚しくなってきた。
忘れていたとはいえ今日は誕生日。
メンバーには祝ってもらうどころか邪険にされる始末。まぁ優しくしてくれなど犯罪者集団に求めても仕方ない話かもしれないが。
「だいたいサソリとデイダラが普通に祝ってくれてればこんなことにならなかったよ!私は今頃布団の中でスヤスヤ眠ってたところなのにー!」
もういいや、この辺で寝てやる。もう疲れた。そう名前は開き直ることにした。
森は静かで木漏れ日が美しく煌めいていた。
鳥のさえずりが良い子守唄になりそうだ。
人の気配もない。
本来ならあと3日はかかりそうだった任務を我武者羅に片付けたのだ。少しでも横になりたかった。
名前は適当な木の根本に腰かけ、幹に背を預けた。
地面は柔らかい苔が生えていて痛くなさそうだった。
こういう時、この体をすっぽりと覆ってくれるデザインの外套はいい毛布代わりになる。
木漏れ日の中、2匹のアゲハ蝶が花の周りをヒラヒラと楽しそうに踊っているのを見ながら、名前は眠ってしまった。
「…あれ??」
気づけば夜になっていた。
「嘘でしょ。どんだけ寝てんのよ」
慌ててその場を立ち上がる。
座って寝ていたせいか体中が僅かに痛んだ。
先ほどの景色とは変わって夜の森は鬱蒼としていた。
星明かりだけが木々の間から見えた。
星座をみながらもう日付も変わろうとしている時間だと思った。
みんなが恐れていた誕生日も終わろうとしているのだと気づいた。
「はぁ、どうせまだ帰ってくるなとか言われそう。ーー散々な誕生日よ」
そうぼやいた。
別に祝って欲しかったわけじゃない。
ただ自分の誕生日を災厄の日としてメンバーに扱われるのは惨めな想いだった。
ーーー寂しい。
「…サソリとデイダラのバーカ」
名前はせめて2人にこの際祝って貰えばよかったかな、なんて思ってしまった。
その時風が吹いて、同時に頭上の星明かりが遮られた。
「名前!」
「ーーーー?!」
上を見上げれば巨大な鳥のような影が見えた。
あれは、デイダラの…。
「探したぞー!うん!アジト戻ったら名前は追い出したってみんなが言うからよ!」
デイダラの操る粘土の大鳥はゆっくりと地面に着地した。
鳥に乗っていたデイダラ、サソリは地面に降りて名前の方へ歩いてきた。
「名前、お前こんなところで何してる」
サソリがヒルコの中から話しかけてきた。
「…寝てたのよ。誕生日なのに誰かさん達のせいで追い出されちゃうし、こんなところで寝るしかなかったのよ!」
怒り心頭な様子の名前に流石の2人もたじろいだ。
「お、怒んなよー。うん。ほら。誕生日今から祝おうぜ!」
名前はそう言われて少し喜んでしまったが、疲れとメンバーから受けた仕打ちによって拗ねた気持ちではそれどころではなかった。
「いい!私疲れてるの!任務だって完璧にこなしてやっと帰ってきたのに皆私の事邪魔者扱いで…っ!」
2人には甘えもあってか、つい八つ当たりのような発言をしてしまった時。
ヒルコの尾の切っ先が名前に向かって飛んできた。まさか攻撃されるなんて思っていなかった名前は驚いて咄嗟に目を瞑り、腕で顔を庇うように身構えた。
「…う?」
しかし周りは変わらず静かで何の衝撃もこなかった。
名前が恐る恐る目を開くと、目の前のヒルコの尾の先には白い花が一輪挟まれていた。
「…誕生日…おめでと。これやるから機嫌直せ」
「お花…?」
ヒルコの発する重低音と可愛らしい花と言葉にギャップがありすぎて、しばし名前は固まった。
サソリはヒルコの中にいるので表情もわからないが慣れないことをして居心地悪そうにしているのが何となく伝わってきた。
「あ、ありがとう」
名前は花を手に取った。
それを見たデイダラが今度は懐から何かを取り出して名前に差し出した。
「オイラからはこれな!可愛いだろう!うん!」
そこには手乗りサイズの可愛らしい小鳥の粘土細工があった。
「作ってくれたの?」
誇らしげにデイダラが頷く。
「帰るぞ」
いつの間にかヒルコから本来の姿になったサソリが再びデイダラの作った鳥の上に飛び乗った。
「名前疲れてんだろ?」
未だに動こうとしない名前にサソリが話しかける。
「早く帰ってゆっくりしようぜ。皆んなにはちゃんと迷惑かけないって約束すっから」
デイダラもそれに続くように名前に帰るよう促した。
「う、うん!」
名前は嬉しかった。去年はというより毎度の事だが、デイダラもサソリも誕生日なのにも関わらず、言ってくることは一緒にいろだとか、一緒にここに行けだのあーしろこーしろと何故か注文ばかりだった。
今年はそんな2人が可愛らしいプレゼントと一緒に労りの気持ちを向けてくれたのが嬉しかった。
名前の喜んでいる様子に2人は満足そうに笑った。
3人を乗せて夜空の中を白い鳥がゆったりと飛んでいった。
夜風が気持ちよく、悪くない誕生日だったと名前は思った。
「しっかし旦那が花贈るなんて似合わねぇよなぁ!うんうん」
「あ゛ぁ?」
デイダラの言葉に名前は凍りついた。
「ちょっ、ちょっとやめ…」
「普段とかけ離れ過ぎてて思わず笑っちまいそうになったぜ!ははっ!うん!」
「…ほー」
サソリは静かに殺気を放った。
「てめぇも女に爆弾贈るなんて相当な悪趣味だな」
「あ゛?」
「え?!やだ!ねぇ!これも爆発するの!?ねぇ?!」
「オイラの芸術を悪趣味だってのかい?旦那ぁ?」
狼狽える名前を他所に2人は臨戦態勢に入る。
「いいぜ!見せてやるぜオイラの芸術ってやつをなぁ!」
「?!」
デイダラが印を結ぶ。
「喝!!」
「ちょっ!まっ!」
「あ」
名前が止めるのも虚しく、辺りは眩しい光に包まれた。掌に載せていた小鳥も例外ではない。
何故、何故こうなってしまうのだと。名前が泣いたのは言うまでもない。
やっとアジトに帰ってきた3人がボロボロな姿だったのを見て、メンバーは何も言わずに静かに頷き合った。
名前の誕生日を皆で祝うのは諦めよう、と。