サソリ夢
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「サソリくん、約束だよ。ずっと名前と一緒にいてね?」
「うん。約束だよ」
俺の隣で膝を抱えて小さく震えている少女は、大きな目を潤ませながらそう言った。
すかさず返事をしたのを今でも覚えている。
少しでも、不安や寂しが紛れたらいいと…幼いながらに他人を思いやったことをぼんやりと覚えている。
「今日は初めてのアカデミーで緊張しちゃった…。サソリくん、明日の朝も一緒に行こう?」
「うん!これから毎朝一緒に行こうね」
偶々近くに住んでいる同い年の子供で、偶々彼女の両親も忍びで、そして死んだ。
「サソリくん!どうやったらチャクラ糸って出せるの?私にも教えて?」
「いいよ!名前には特別に教えてあげるね」
気づけばいつも隣には名前がいた。
そう、いつも…。
「サソリー!ねぇ!いないのー?!…あ!いるじゃない!ねぇ聞いてよー!明日遂に中忍クラスの任務が入ったのー!それでね!護衛の任務なんだけど解毒剤用意しておいた方がいいかな?!要人の食事の毒味とかさせられるかな?!なんかすごい豪華な食事だったらむしろラッキーだよね?!今時ご飯に毒入れるなんて使い古された罠使ってくる人いないもんねぇ!ねぇ何か万能薬みたいなのないかな?これ一つあれば無敵!みたいな!あ、その棚の中見ても…」
「っあぁぁー!!!うるせうるせうるせー!!!」
「うわ、そっちのがよっぽどうるさいわ」
俺は傀儡のメンテナンスのため自宅の一室にこもっていたのだが、ノックもなしに(そもそも不法侵入)部屋に入ってきたコイツは一方的に話し始める。しかも声量がうるさい。
我慢ならなくなった俺は手を止めて振り向き、名前に叫んだ。
「てめぇ、いい加減に家に勝手に入ってくるな!あと前にも言ったが中忍になったのがそもそも遅すぎなんだよ。浮かれんなアホ」
「ちょっと周りより遅かっただけで大袈裟だなー!サソリが異端なだけだよ!」
「お前と違って出来がいいんだよ」
昔、名前は人見知りで、大人しくて、だけど人知れず努力して両親のような立派な忍びになろうとする健気な少女だった。
いつからこんな…いや、言わないでおこう。ここは大人になれ俺。
「いつからこんなただの馬鹿になったんだ」
「ちょっと!心の声ダダ漏れじゃない!」
本音が抑えきれれなかったか…。
ふん。まぁいい。
「小さい頃はサソリ優しかったのにー」
「お前に言われたくねぇよ!…そっちこそ昔は可愛かったのによ…」
「え?何ー?」
「なんでもねぇよ!…ほら!さっさとこれ持って出てけ!」
俺は薬棚の引き出しをやや乱暴に開けると、中に入っていた薬を一包掴むと名前に投げた。
「わー!万能薬?!ありがとう!サソリ大好きー!」
「毒だ」
「えー?!解毒剤が欲しいんだけどー」
「万能薬なんて都合のいいものねぇ。もし毒盛られてどうにもならなかったらそれ飲め。全身の毒の巡りを遅くさせる」
「え!そんないいものあるなら言ってよー!」
「同時にあらゆる臓器の機能が低下するからどっちにしろ早く医療班に診てもらうんだな」
「えー?!何それ毒じゃん!」
「だからそう言ってんだろ馬鹿が」
名前は「口悪いなぁ」とか文句を言っていたがその薬をポーチに入れるとやっと扉の方へ向かっていった。
俺もやれやれと一息つくと作業中だったメンテナンスに戻ろうとした。
「サソリ」
「あ?」
呼ばれて再び振り向く。
視線の先には扉を閉める前に顔だけこちらに覗かせている名前がいた。
「昔は優しかったのに、って言ったけど今も優しいのわかってるよ!ありがと!」
扉の閉まる音がして、俺はその場にしばらく突っ立っていた。
大人しくて、控えめで可愛らしかったアイツは今じゃやかましくて馬鹿で、図々しくて。
だが俺だって、お前が努力家なのは変わってないってわかってる。
そう、いつか言ってやってもいいかもしれないと柄にもなく思ってしまった。
「ねぇ!名前が重症ってホント?!」
「さっき治療室まで運ばれたけど、心肺停止してたって」
アカデミーで同期だった連中が騒いでいたのを偶々任務帰りに見つけた。
俺の脚は勝手に走りだしていた。
名前は努力家で、真面目で…忍にはずっと向いていないと思っていた。
情に脆くて、人をすぐに信じる。
お前は忍に向いていないと、言えばよかった。
夢に向かおうとするお前を見るのが好きだった。
人を利用し、消費するしかないこの荒んだ里でも、守るべきものがあると…お前を見てるとそう思えたから。
でも、お前がいなくなったら…もう何の意味も無くなってしまうな…。
いっそ2人で、誰もいない場所に逃げてしまえばよかった。もっと早くそうしていればよかったんだ。
「あれ?サソリー!もうお見舞い来てくれたのー?!うれしいー!へへー」
「…」
目の前には治療室でいつも通りニカニカ笑っている名前がベッドから体を起こして、こちらに手を振っていた。
「…お前、死んだんじゃなかったのか?」
「へぇー?!私が死んだと思って慌てて来てくれたのー?!感激なんだけど?!」
「…っはぁー」
俺は額に手を当てて大げさにため息をついた。
遠くで治療に当たっていたであろう誰かが毒の回りが遅くてよかった、と話しているのがぼんやりと聞こえた。今更状況がわかった自分にも溜息が出る。
「いっそそのまま死ね」
「ひどっっ!もぉー!サソリのくれた薬のせいで死ぬかと思った!あれ本当に解毒剤なの?!」
だからあれは毒だっつってんだろうが!
…っていつもなら怒鳴ってるところだが、もう俺は呆れて声も出ないのか、全身の力が抜けてしまって立ってることしかできなかった。
「え、ねぇ、どうしたの?…サソリ?」
いつもは言い返してくる俺が何も言わないからか、不安そうに名前が俺を呼ぶ。
その声で我に帰る。
「ごめん…心配してくれてたんだよね?私大丈夫だよ!こんなに元気!」
心配?そうだな…俺は今コイツが生きていたことに、安心したのだ。
名前の死が、恐ろしいと感じた。
笑うアイツの顔を見る。
よく見ればまだ顔色が悪い。
おもわずその頬に手を伸ばした。
「えぇ?!な、何?!どうし…」
「なぁ。お前、忍やめろよ」
「…え」
想像していた通り彼女は絶望した表情をした。
そんな顔させたくなくて、ずっと…言えなかった。だけどお前には、ただ生きていてほしい。2人でこんな里から、時代から逃げてしまえばいいと思ったことを思い出した。
お前がいてくれたらいいんだって、お前がいなきゃ意味ないんだって…どうしたら伝わる?
みるみるうちに泣きそうになる名前に俺は言った。
「お前がいてくれるなら俺は生きて帰ってくるから」
そう言った途端名前が俺に飛びついてきた。
咄嗟に受け止めた体は想像以上に軽くてまたゾッとする。
名前が泣きながら小さな声で、聞き取りにくい声で俺に言った言葉を聞いて、俺は…。
「うん。約束だよ」
俺の隣で膝を抱えて小さく震えている少女は、大きな目を潤ませながらそう言った。
すかさず返事をしたのを今でも覚えている。
少しでも、不安や寂しが紛れたらいいと…幼いながらに他人を思いやったことをぼんやりと覚えている。
「今日は初めてのアカデミーで緊張しちゃった…。サソリくん、明日の朝も一緒に行こう?」
「うん!これから毎朝一緒に行こうね」
偶々近くに住んでいる同い年の子供で、偶々彼女の両親も忍びで、そして死んだ。
「サソリくん!どうやったらチャクラ糸って出せるの?私にも教えて?」
「いいよ!名前には特別に教えてあげるね」
気づけばいつも隣には名前がいた。
そう、いつも…。
「サソリー!ねぇ!いないのー?!…あ!いるじゃない!ねぇ聞いてよー!明日遂に中忍クラスの任務が入ったのー!それでね!護衛の任務なんだけど解毒剤用意しておいた方がいいかな?!要人の食事の毒味とかさせられるかな?!なんかすごい豪華な食事だったらむしろラッキーだよね?!今時ご飯に毒入れるなんて使い古された罠使ってくる人いないもんねぇ!ねぇ何か万能薬みたいなのないかな?これ一つあれば無敵!みたいな!あ、その棚の中見ても…」
「っあぁぁー!!!うるせうるせうるせー!!!」
「うわ、そっちのがよっぽどうるさいわ」
俺は傀儡のメンテナンスのため自宅の一室にこもっていたのだが、ノックもなしに(そもそも不法侵入)部屋に入ってきたコイツは一方的に話し始める。しかも声量がうるさい。
我慢ならなくなった俺は手を止めて振り向き、名前に叫んだ。
「てめぇ、いい加減に家に勝手に入ってくるな!あと前にも言ったが中忍になったのがそもそも遅すぎなんだよ。浮かれんなアホ」
「ちょっと周りより遅かっただけで大袈裟だなー!サソリが異端なだけだよ!」
「お前と違って出来がいいんだよ」
昔、名前は人見知りで、大人しくて、だけど人知れず努力して両親のような立派な忍びになろうとする健気な少女だった。
いつからこんな…いや、言わないでおこう。ここは大人になれ俺。
「いつからこんなただの馬鹿になったんだ」
「ちょっと!心の声ダダ漏れじゃない!」
本音が抑えきれれなかったか…。
ふん。まぁいい。
「小さい頃はサソリ優しかったのにー」
「お前に言われたくねぇよ!…そっちこそ昔は可愛かったのによ…」
「え?何ー?」
「なんでもねぇよ!…ほら!さっさとこれ持って出てけ!」
俺は薬棚の引き出しをやや乱暴に開けると、中に入っていた薬を一包掴むと名前に投げた。
「わー!万能薬?!ありがとう!サソリ大好きー!」
「毒だ」
「えー?!解毒剤が欲しいんだけどー」
「万能薬なんて都合のいいものねぇ。もし毒盛られてどうにもならなかったらそれ飲め。全身の毒の巡りを遅くさせる」
「え!そんないいものあるなら言ってよー!」
「同時にあらゆる臓器の機能が低下するからどっちにしろ早く医療班に診てもらうんだな」
「えー?!何それ毒じゃん!」
「だからそう言ってんだろ馬鹿が」
名前は「口悪いなぁ」とか文句を言っていたがその薬をポーチに入れるとやっと扉の方へ向かっていった。
俺もやれやれと一息つくと作業中だったメンテナンスに戻ろうとした。
「サソリ」
「あ?」
呼ばれて再び振り向く。
視線の先には扉を閉める前に顔だけこちらに覗かせている名前がいた。
「昔は優しかったのに、って言ったけど今も優しいのわかってるよ!ありがと!」
扉の閉まる音がして、俺はその場にしばらく突っ立っていた。
大人しくて、控えめで可愛らしかったアイツは今じゃやかましくて馬鹿で、図々しくて。
だが俺だって、お前が努力家なのは変わってないってわかってる。
そう、いつか言ってやってもいいかもしれないと柄にもなく思ってしまった。
「ねぇ!名前が重症ってホント?!」
「さっき治療室まで運ばれたけど、心肺停止してたって」
アカデミーで同期だった連中が騒いでいたのを偶々任務帰りに見つけた。
俺の脚は勝手に走りだしていた。
名前は努力家で、真面目で…忍にはずっと向いていないと思っていた。
情に脆くて、人をすぐに信じる。
お前は忍に向いていないと、言えばよかった。
夢に向かおうとするお前を見るのが好きだった。
人を利用し、消費するしかないこの荒んだ里でも、守るべきものがあると…お前を見てるとそう思えたから。
でも、お前がいなくなったら…もう何の意味も無くなってしまうな…。
いっそ2人で、誰もいない場所に逃げてしまえばよかった。もっと早くそうしていればよかったんだ。
「あれ?サソリー!もうお見舞い来てくれたのー?!うれしいー!へへー」
「…」
目の前には治療室でいつも通りニカニカ笑っている名前がベッドから体を起こして、こちらに手を振っていた。
「…お前、死んだんじゃなかったのか?」
「へぇー?!私が死んだと思って慌てて来てくれたのー?!感激なんだけど?!」
「…っはぁー」
俺は額に手を当てて大げさにため息をついた。
遠くで治療に当たっていたであろう誰かが毒の回りが遅くてよかった、と話しているのがぼんやりと聞こえた。今更状況がわかった自分にも溜息が出る。
「いっそそのまま死ね」
「ひどっっ!もぉー!サソリのくれた薬のせいで死ぬかと思った!あれ本当に解毒剤なの?!」
だからあれは毒だっつってんだろうが!
…っていつもなら怒鳴ってるところだが、もう俺は呆れて声も出ないのか、全身の力が抜けてしまって立ってることしかできなかった。
「え、ねぇ、どうしたの?…サソリ?」
いつもは言い返してくる俺が何も言わないからか、不安そうに名前が俺を呼ぶ。
その声で我に帰る。
「ごめん…心配してくれてたんだよね?私大丈夫だよ!こんなに元気!」
心配?そうだな…俺は今コイツが生きていたことに、安心したのだ。
名前の死が、恐ろしいと感じた。
笑うアイツの顔を見る。
よく見ればまだ顔色が悪い。
おもわずその頬に手を伸ばした。
「えぇ?!な、何?!どうし…」
「なぁ。お前、忍やめろよ」
「…え」
想像していた通り彼女は絶望した表情をした。
そんな顔させたくなくて、ずっと…言えなかった。だけどお前には、ただ生きていてほしい。2人でこんな里から、時代から逃げてしまえばいいと思ったことを思い出した。
お前がいてくれたらいいんだって、お前がいなきゃ意味ないんだって…どうしたら伝わる?
みるみるうちに泣きそうになる名前に俺は言った。
「お前がいてくれるなら俺は生きて帰ってくるから」
そう言った途端名前が俺に飛びついてきた。
咄嗟に受け止めた体は想像以上に軽くてまたゾッとする。
名前が泣きながら小さな声で、聞き取りにくい声で俺に言った言葉を聞いて、俺は…。