両親が帰ってこなくなって半年経った頃、2人は死んでしまったのだと悟った。
死というものがその時はよくわからなかった。
でもーー
2人は僕が何か新しいことを学んだり、できたりするようになると喜んでくれた。
だからたくさん勉強して待ってたんだ。2人みたいな強い忍びになって、喜んでもらおうと思った。
ーーそれは叶わなくなったのだということは、わかった。
1人眠る夜はあまりに孤独だった。


僕はチヨばあ様に教えてもらった傀儡で2人を作った。
これで2人は死なない、ずっと一緒だ。
昔のようにこうやって抱きしめてくれる。
それなのに何故だろう、孤独は消えなかった。
床に倒れる2人を見て思った。
僕も傀儡になったらこの寂しさも消えてくれるのだろうと。

僕は完璧な傀儡を求めた。
永久に朽ちることのない、感情のない“僕”を求めた。


「名前、紹介するね。僕の父様と母様だよ」
僕は特別に2人を名前に見せてあげた。
「サソリのご両親は…」
名前は目を丸くしていた。
そうだよね、だってこれは傀儡だもの。
名前はどう反応して良いのかわからないみたいだった。
「2人は木の葉隠れの里と戦争した時に死んじゃったんだって。寂しかったから、もう死んじゃったりしない、怪我しても治せるように傀儡で2人を作ったんだよ」
「…そうだったのですね。私サソリのご両親が亡くなっているのを知りませんでした。寂しかったですね」
名前にもそういう感情は理解できるのだろうか？
表情はいつもと変わらないからよくわからないや。
すると名前は僕の目の前までやってきて両腕を開いたかと思ったらギュッと抱きしめられた。
「サソリ、私がいます」
「…」
傀儡にはない温度を感じた。
2人の笑顔を久しぶりに思い出した。
「うん…うん…っ、名前ならずっと変わらず一緒にいてくれるでしょ？いなくなったりしないでしょ？」
「はい。あなたがそう望むなら」

人間には感情がある。
捨てようとしても捨てきれない。
でも、君がいてくれたら、それもいつかできるんじゃないかと希望が持てる。
そしていつか僕を完璧な傀儡にしてね。

窓際の花瓶の花、名前に買ってあげた花がもう枯れていた。