造花の傀儡
名前変換
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チヨの心配をよそに、サソリと名前は急速に仲良くなっていた。
いつのまにかサソリは一人で病院に見舞いに行き、退院の日取りまで決めてきてしまった。
名前をこの家に迎え入れてからは、それはそれはサソリは楽しそうであった。
自身が造った傀儡のコレクションを見せたり、操っているところを見せたりしていた。
チヨはそんな孫の姿を見て心底名前を引き取ってよかったと思った。
初めて会わせたときの二人の反応からは、もしかしたら一緒に住むことまでは難しいだろうかと思った。
それが今はどうだろう、物知りで博識、だがその反面日常的な事が全くできなかったり知らない名前を姉のように、時には妹にように可愛がっているようだった。
今日もそんな2人を家に残してチヨは家を出た。
「名前、今日は街に出てみない?」
「サソリが行くならどこへでも」
名前は砂隠れの里を歩くのは退院の時以来だろう。その際も寄り道せずにまっすぐ家に向かったのでたいして街の様子もわからなかった。
「初めて見るものばかりです。あれは何ですか?」
「あれは本屋さん」
名前は本当に何も知らなかった。物心ついた時から彼女の世界はあの白い建物の中だけだった。知識はあるがあくまで本の文章で身につけただけの知識で、実生活と結びついていなかった。
サソリはこうして素直に何でも聞いてくる名前が面白かった。
「あちらは?」
「花屋さんだよ。砂隠れは砂漠ばっかりだから花は貴重で高いんだ」
ちょっと待っててというとサソリは走っていってしまった。
名前は素直にそこで直立して待っていた。
しばらくすると一輪だけ花を持ってサソリが戻ってきた。
「これが花だよ。あげる」
「?よろしいんですか?先程高価なものだと」
「一輪くらい大したことないよ!ほら」
名前は花を受け取った。
それをしばらく見つめて、キレイ。と呟いた。
そしてサソリを見てこう言った。
「それでこれはどう使えばよろしいんですか?」
「え?使う?うーん。それは薬草にも毒薬にもならないから、飾って、見るだけだよ」
サソリはこんな頓珍漢なやり取りでも楽しんでいた。
まるで毎日観察日記をつけている子供のような気分だった。
名前は花を見つめたまま何も言わなかった。
ただ両手で、時折舞う砂埃から守るように大切そうに持っていた。
「暑いからアイス食べよう名前!」
サソリは名前の左手に花を持たせて、反対の手を握って走り出した。
サソリ達の住むここ中心街では、最近ブームになっていた。
「名前、好きなの選んでいいよ」
店のショーケースには色とりどりのアイスクリームが陳列されてきた。
「わかりません…。どれを選んだらいいんです?」
名前は自分で何かを選べと言われたのは初めてだった。
「そっか、名前アイスも食べたことないもんね。じゃあ今日は僕が選んであげるね」
そういうとサソリは店員にお金を払い、アイスを2つ受け取った。
「はい」
「ありがとうございます」
サソリはチョコを、名前は渡されたバニラを受け取った。
「わっ!冷たい!」
名前はサソリが食べているようにスプーンでアイスを掬って口に運んだが、想像以上に冷たかったので驚いた。
「はは!アイスだもん当然だよ」
「でも、とても美味しいです。ここに来てたくさん初めて食べる美味しいものを知りましたが、これは美味しい上に面白いです」
「僕のも食べてごらんよ」
サソリはスプーンを名前に向けた。名前は口を開けてそれを素直に食べた。
「!これも美味しいです。色が違うと味も違うのですね」
こうやって些細なことだが自分が与える知識をどんどん吸収していく名前がサソリには見ていて飽きなかった。
「今日も初めてのことがいっぱいでした。明日も色々教えてくださいね、サソリ」
「うん。明日は僕の父様と母様に会わせてあげるね」
あれから2人は街の散策を続け、いつの間にか夕暮れになり、2人は帰路を歩いていた。
名前は花を胸元でしっかりと持ち、右手はサソリと手を繋いで帰った。
砂の大地に沈む夕焼けがやけに赤く見えた。
いつのまにかサソリは一人で病院に見舞いに行き、退院の日取りまで決めてきてしまった。
名前をこの家に迎え入れてからは、それはそれはサソリは楽しそうであった。
自身が造った傀儡のコレクションを見せたり、操っているところを見せたりしていた。
チヨはそんな孫の姿を見て心底名前を引き取ってよかったと思った。
初めて会わせたときの二人の反応からは、もしかしたら一緒に住むことまでは難しいだろうかと思った。
それが今はどうだろう、物知りで博識、だがその反面日常的な事が全くできなかったり知らない名前を姉のように、時には妹にように可愛がっているようだった。
今日もそんな2人を家に残してチヨは家を出た。
「名前、今日は街に出てみない?」
「サソリが行くならどこへでも」
名前は砂隠れの里を歩くのは退院の時以来だろう。その際も寄り道せずにまっすぐ家に向かったのでたいして街の様子もわからなかった。
「初めて見るものばかりです。あれは何ですか?」
「あれは本屋さん」
名前は本当に何も知らなかった。物心ついた時から彼女の世界はあの白い建物の中だけだった。知識はあるがあくまで本の文章で身につけただけの知識で、実生活と結びついていなかった。
サソリはこうして素直に何でも聞いてくる名前が面白かった。
「あちらは?」
「花屋さんだよ。砂隠れは砂漠ばっかりだから花は貴重で高いんだ」
ちょっと待っててというとサソリは走っていってしまった。
名前は素直にそこで直立して待っていた。
しばらくすると一輪だけ花を持ってサソリが戻ってきた。
「これが花だよ。あげる」
「?よろしいんですか?先程高価なものだと」
「一輪くらい大したことないよ!ほら」
名前は花を受け取った。
それをしばらく見つめて、キレイ。と呟いた。
そしてサソリを見てこう言った。
「それでこれはどう使えばよろしいんですか?」
「え?使う?うーん。それは薬草にも毒薬にもならないから、飾って、見るだけだよ」
サソリはこんな頓珍漢なやり取りでも楽しんでいた。
まるで毎日観察日記をつけている子供のような気分だった。
名前は花を見つめたまま何も言わなかった。
ただ両手で、時折舞う砂埃から守るように大切そうに持っていた。
「暑いからアイス食べよう名前!」
サソリは名前の左手に花を持たせて、反対の手を握って走り出した。
サソリ達の住むここ中心街では、最近ブームになっていた。
「名前、好きなの選んでいいよ」
店のショーケースには色とりどりのアイスクリームが陳列されてきた。
「わかりません…。どれを選んだらいいんです?」
名前は自分で何かを選べと言われたのは初めてだった。
「そっか、名前アイスも食べたことないもんね。じゃあ今日は僕が選んであげるね」
そういうとサソリは店員にお金を払い、アイスを2つ受け取った。
「はい」
「ありがとうございます」
サソリはチョコを、名前は渡されたバニラを受け取った。
「わっ!冷たい!」
名前はサソリが食べているようにスプーンでアイスを掬って口に運んだが、想像以上に冷たかったので驚いた。
「はは!アイスだもん当然だよ」
「でも、とても美味しいです。ここに来てたくさん初めて食べる美味しいものを知りましたが、これは美味しい上に面白いです」
「僕のも食べてごらんよ」
サソリはスプーンを名前に向けた。名前は口を開けてそれを素直に食べた。
「!これも美味しいです。色が違うと味も違うのですね」
こうやって些細なことだが自分が与える知識をどんどん吸収していく名前がサソリには見ていて飽きなかった。
「今日も初めてのことがいっぱいでした。明日も色々教えてくださいね、サソリ」
「うん。明日は僕の父様と母様に会わせてあげるね」
あれから2人は街の散策を続け、いつの間にか夕暮れになり、2人は帰路を歩いていた。
名前は花を胸元でしっかりと持ち、右手はサソリと手を繋いで帰った。
砂の大地に沈む夕焼けがやけに赤く見えた。