夜の淵に咲く
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客が大声で話す声。
遊女がケラケラと甲高い声で笑う声。
三味線の音がどこからか聞こえてくる。
今日もまたお香がそこら中で焚かれている。
やっと気付いた。
この遊郭では藤の香が焚かれている。
「羽月さん」
絢藤花魁に呼ばれる。
「今夜はわっちのご贔屓さんが来るんでありんすが…あんさんわっちが別の馴染みさん相手にしていんす間に、話し相手になっておくんなんし?」
どうやら花魁には先客があるようでその間の時間稼ぎのようだ。相手は最近贔屓にしてくれている上流貴族の方のようで、色々と融通も通る上に羽振りも気前も良い客だとか。
「わかりました花魁」
「お願いしんす。紳士な若旦那様でありんすから安心しなんし」
そんな方なら私でも話し相手くらいは務まるだろうか。
私は少し安心して絢藤花魁に挨拶をし、支度のために部屋へと向かった。
「ん?」
部屋の襖を開けて、鏡台の方へと目をくれると、小さい物が化粧箱の影で動いたのが見えた。
「鼠様」
そこには音柱様の筋肉隆々の鼠様がいらっしゃった。
その前脚には(もはや上腕というべきか…)音柱様からであろう。小さな伝令のための和紙が巻かれていた。
鼠様はそれを取れと言わんばかりに肩をこちらに差し出してきた。その姿は逞しい。
私は一言断りを入れるとその紙を取り外した。
手紙は暗号で書かれていて解読するとこんな感じであった。
音柱様は鬼が潜んでいる遊郭をほぼ確定できたようだ。どうやら位の高い、美しい遊女ばかりを攫っているようだった。
しかしそれほど位も高くない遊女や、他にも近隣の町で行方不明者が数名だが出ているとの事だ。それに関して音柱様は鬼は複数いると考えているようだ。
「もう一体の鬼は何処に…」
こちらでも情報収集はしている。
その間に怪しいものは探りを入れたが…正体は獣による被害であったり、駆け落ちなど意図的に行方不明になったものだった。
「…いけない。そろそろ行かなくては」
楼主が遠くで呼ぶ声にハッとした。
おそらく絢藤花魁の馴染み客が来たのだ。
鼠様も気付いたようで小さく頷くと部屋の柱を伝って、屋根裏へとすぐに消えてしまった。
私もすぐに身支度をして楼主が呼ぶ方へと向かった。
名代が終わったら少し外に情報収集に行こう。今夜は行方不明になったと言われてる人が住んでいた町まで行ってみよう。
この後の行動を思い起こしながら私は客の待つ座敷の前まで来た。
両脇から若い衆が襖を開けようと屈んだ。中にいる客に断りを入れるとその襖は静かに開かれた。
私は愛想良く、目の前の客に形だけの笑顔を作る。
しかし中にいる人物を見て、息が止まった。
遊女がケラケラと甲高い声で笑う声。
三味線の音がどこからか聞こえてくる。
今日もまたお香がそこら中で焚かれている。
やっと気付いた。
この遊郭では藤の香が焚かれている。
「羽月さん」
絢藤花魁に呼ばれる。
「今夜はわっちのご贔屓さんが来るんでありんすが…あんさんわっちが別の馴染みさん相手にしていんす間に、話し相手になっておくんなんし?」
どうやら花魁には先客があるようでその間の時間稼ぎのようだ。相手は最近贔屓にしてくれている上流貴族の方のようで、色々と融通も通る上に羽振りも気前も良い客だとか。
「わかりました花魁」
「お願いしんす。紳士な若旦那様でありんすから安心しなんし」
そんな方なら私でも話し相手くらいは務まるだろうか。
私は少し安心して絢藤花魁に挨拶をし、支度のために部屋へと向かった。
「ん?」
部屋の襖を開けて、鏡台の方へと目をくれると、小さい物が化粧箱の影で動いたのが見えた。
「鼠様」
そこには音柱様の筋肉隆々の鼠様がいらっしゃった。
その前脚には(もはや上腕というべきか…)音柱様からであろう。小さな伝令のための和紙が巻かれていた。
鼠様はそれを取れと言わんばかりに肩をこちらに差し出してきた。その姿は逞しい。
私は一言断りを入れるとその紙を取り外した。
手紙は暗号で書かれていて解読するとこんな感じであった。
音柱様は鬼が潜んでいる遊郭をほぼ確定できたようだ。どうやら位の高い、美しい遊女ばかりを攫っているようだった。
しかしそれほど位も高くない遊女や、他にも近隣の町で行方不明者が数名だが出ているとの事だ。それに関して音柱様は鬼は複数いると考えているようだ。
「もう一体の鬼は何処に…」
こちらでも情報収集はしている。
その間に怪しいものは探りを入れたが…正体は獣による被害であったり、駆け落ちなど意図的に行方不明になったものだった。
「…いけない。そろそろ行かなくては」
楼主が遠くで呼ぶ声にハッとした。
おそらく絢藤花魁の馴染み客が来たのだ。
鼠様も気付いたようで小さく頷くと部屋の柱を伝って、屋根裏へとすぐに消えてしまった。
私もすぐに身支度をして楼主が呼ぶ方へと向かった。
名代が終わったら少し外に情報収集に行こう。今夜は行方不明になったと言われてる人が住んでいた町まで行ってみよう。
この後の行動を思い起こしながら私は客の待つ座敷の前まで来た。
両脇から若い衆が襖を開けようと屈んだ。中にいる客に断りを入れるとその襖は静かに開かれた。
私は愛想良く、目の前の客に形だけの笑顔を作る。
しかし中にいる人物を見て、息が止まった。