夜の淵に咲く
名前変換
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名前が遊郭に向かうため着替えを済ませ、念のため隠して持っていけそうな忍具を自室で準備していた時だった。
「入るぞ」
不死川が一拍置いてから襖を開けた。
「師範、支度ができました。期間は分かりませんが、必ず音柱様の奥方様達を無事に連れて戻って参ります」
不死川はそれを聞いてふと笑った。
鬼を倒して…ではなく。無事に仲間を連れて帰ってくると言うのは名前らしい、と思った。
彼女がこの任務を引き受けた一番の理由だから当然か。
そして真剣な表情になり言った。
「何かあれば必ず鴉を飛ばせェ。いいな」
名前はそれを聞いて微笑んだ。
「はい。ご心配はおかけしません」
不死川はその名前の表情を見て思った。
いつからだろうか。
名前が自分にもこうして自然と笑うようになったのはと。
「誰も心配なんざしねェよ」
ふふっと今度は声を出して名前が笑った。
「わかっております。お土産…何が良いですかねぇ」
そんな風に呑気に笑う名前を見て、不死川は何故だろうか…
「…さっさと片付けてこいよ」
もっと言いたいことがあるような気がしたが、それが精一杯だった。
「はい」
柔らかく、しかし力強く、名前は返事をした。
△
「俺も今の任務が片付き次第様子を見に行く。それまでヘマすんじゃねェぞ」
「はい。師範もお怪我に気をつけてください」
「正直に名前の遊女姿が見てぇって言えよ」
「宇髄てめェ!!ここで刻まれてェか!とっとっと失せやがれェ!!」
憤怒の不死川に見送られ、宇髓率いる一行は花街へと足を向かわせた。
道中、名前は訓練で教わった通り、遊郭での作法やしきたりを簡単に炭治郎たちに伝えようとした。
しかし真面目に聞いているのは炭治郎だけで、善逸は何故か結婚しろと言っているし、伊之助に限っては俺と戦えと言って話を聞かない。
名前も宇髓も埒があかないと早々と諦めた。
「じゃあまず鬼殺隊の協力者がいる遊郭に先に行くぜ!そこに名前は新造として待機な。何かあれば俺の鴉か鼠を寄越すからな」
そう言った宇髓の肩には不自然に筋骨隆々とした鼠がちょこりと乗っていた。
名前は鼠達に挨拶をすると頷いた。
一行は花街に足を踏み入れる。
煌びやかな灯篭の灯り。
欲を求めて行き交う客も、格子の中手招く遊女も、宇髄達一行をチラチラと盗み見ていた。
その視線の中を居心地悪そうに5人は進んでいった。
「宇髄様、お話は伺っております」
たどり着いた廓ではここの主の妻である女将が出迎えた。
丁寧に三つ指を立てて、恭しく頭を下げていた。
「悪いな女将さん。コイツなら廓の作法は問題ねぇから安心してくれ」
そして顔を上げた女将はギョッとした。
「ーーえっ…あ、う、宇髄様?この子ら3人ともですか?」
「あ?」
女将が顔を青白くして見ていたのは炭治郎3人だった。
「だぁーーーー‼︎邪魔‼︎お前らはすっこんでろ!名前‼︎前こい‼︎」
「あ、はいっ」
そして3人を避けて控え目に現れた少女に、女将は目をパチクリとさせた。
「まぁー、随分と…。見目良い女子さんやねぇ。へー…。お前さんも鬼殺隊なのかい?」
溜息まじりに話し、そして思わず思ったことをそのまま質問した。
「おうよ!こう見えて柱の弟子だからな。女将、よろしく頼むぜ」
女将は先ほどとは打って変わって満足したように何度も頷いた。
「はいよ!はいよ!こんな別嬪さん預からせてもらえるなんてうちは儲けもんねー!任せておくれよ!ここいらで一番の花魁にしたるわ!」
「いや、そこまではいいからよ。俺殺されるからちゃんと返してくれよ?」
嬉々とした様子で話す女将に、宇髄は慌てて制止に入る。
名前は鬼殺隊でも信頼できる花魁の元で、振袖新造としてこの遊郭で情報収集をする手筈となった。
「じゃ!あとこの3人売っぱらってくるから、頑張れよ!"羽月"!」
「皆さまお気をつけて」
「嫌だぁぁあ!!お姉さんー!俺お姉さんと一緒にいたいよぉおぉぉ!!」
泣き叫ぶ善逸の首根っこを猫のように掴み上げた宇髄は、片手で名前に手を振り他の2名とともに颯爽と姿を消した。
騒々しい者がいなくなり、女将はふぅとため息をついた。
そして名前を振り返って言った。
「じゃあ早速準備しないとね!奥の御座敷においでな。あ、さっきも言ったけどここでは羽月って名前でやってってもらうわね」
張り切った様子の女将が名前の背中を押して奥へと誘って行った。
名前は初めての遊郭に僅かながら緊張した様子で、その足を進めた。
「入るぞ」
不死川が一拍置いてから襖を開けた。
「師範、支度ができました。期間は分かりませんが、必ず音柱様の奥方様達を無事に連れて戻って参ります」
不死川はそれを聞いてふと笑った。
鬼を倒して…ではなく。無事に仲間を連れて帰ってくると言うのは名前らしい、と思った。
彼女がこの任務を引き受けた一番の理由だから当然か。
そして真剣な表情になり言った。
「何かあれば必ず鴉を飛ばせェ。いいな」
名前はそれを聞いて微笑んだ。
「はい。ご心配はおかけしません」
不死川はその名前の表情を見て思った。
いつからだろうか。
名前が自分にもこうして自然と笑うようになったのはと。
「誰も心配なんざしねェよ」
ふふっと今度は声を出して名前が笑った。
「わかっております。お土産…何が良いですかねぇ」
そんな風に呑気に笑う名前を見て、不死川は何故だろうか…
「…さっさと片付けてこいよ」
もっと言いたいことがあるような気がしたが、それが精一杯だった。
「はい」
柔らかく、しかし力強く、名前は返事をした。
△
「俺も今の任務が片付き次第様子を見に行く。それまでヘマすんじゃねェぞ」
「はい。師範もお怪我に気をつけてください」
「正直に名前の遊女姿が見てぇって言えよ」
「宇髄てめェ!!ここで刻まれてェか!とっとっと失せやがれェ!!」
憤怒の不死川に見送られ、宇髓率いる一行は花街へと足を向かわせた。
道中、名前は訓練で教わった通り、遊郭での作法やしきたりを簡単に炭治郎たちに伝えようとした。
しかし真面目に聞いているのは炭治郎だけで、善逸は何故か結婚しろと言っているし、伊之助に限っては俺と戦えと言って話を聞かない。
名前も宇髓も埒があかないと早々と諦めた。
「じゃあまず鬼殺隊の協力者がいる遊郭に先に行くぜ!そこに名前は新造として待機な。何かあれば俺の鴉か鼠を寄越すからな」
そう言った宇髓の肩には不自然に筋骨隆々とした鼠がちょこりと乗っていた。
名前は鼠達に挨拶をすると頷いた。
一行は花街に足を踏み入れる。
煌びやかな灯篭の灯り。
欲を求めて行き交う客も、格子の中手招く遊女も、宇髄達一行をチラチラと盗み見ていた。
その視線の中を居心地悪そうに5人は進んでいった。
「宇髄様、お話は伺っております」
たどり着いた廓ではここの主の妻である女将が出迎えた。
丁寧に三つ指を立てて、恭しく頭を下げていた。
「悪いな女将さん。コイツなら廓の作法は問題ねぇから安心してくれ」
そして顔を上げた女将はギョッとした。
「ーーえっ…あ、う、宇髄様?この子ら3人ともですか?」
「あ?」
女将が顔を青白くして見ていたのは炭治郎3人だった。
「だぁーーーー‼︎邪魔‼︎お前らはすっこんでろ!名前‼︎前こい‼︎」
「あ、はいっ」
そして3人を避けて控え目に現れた少女に、女将は目をパチクリとさせた。
「まぁー、随分と…。見目良い女子さんやねぇ。へー…。お前さんも鬼殺隊なのかい?」
溜息まじりに話し、そして思わず思ったことをそのまま質問した。
「おうよ!こう見えて柱の弟子だからな。女将、よろしく頼むぜ」
女将は先ほどとは打って変わって満足したように何度も頷いた。
「はいよ!はいよ!こんな別嬪さん預からせてもらえるなんてうちは儲けもんねー!任せておくれよ!ここいらで一番の花魁にしたるわ!」
「いや、そこまではいいからよ。俺殺されるからちゃんと返してくれよ?」
嬉々とした様子で話す女将に、宇髄は慌てて制止に入る。
名前は鬼殺隊でも信頼できる花魁の元で、振袖新造としてこの遊郭で情報収集をする手筈となった。
「じゃ!あとこの3人売っぱらってくるから、頑張れよ!"羽月"!」
「皆さまお気をつけて」
「嫌だぁぁあ!!お姉さんー!俺お姉さんと一緒にいたいよぉおぉぉ!!」
泣き叫ぶ善逸の首根っこを猫のように掴み上げた宇髄は、片手で名前に手を振り他の2名とともに颯爽と姿を消した。
騒々しい者がいなくなり、女将はふぅとため息をついた。
そして名前を振り返って言った。
「じゃあ早速準備しないとね!奥の御座敷においでな。あ、さっきも言ったけどここでは羽月って名前でやってってもらうわね」
張り切った様子の女将が名前の背中を押して奥へと誘って行った。
名前は初めての遊郭に僅かながら緊張した様子で、その足を進めた。