夜の淵に咲く
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
名前が不死川に弟子入りしてから二月が経った。
当初の予想はやはり大きく外れ、名前は逃げ出しもせず、鬼殺以外の道も探さず、最終選別の日を迎えた。
型もまだまだ完成度は低いが、一通りは習得した。
あとは今後の鍛錬と実践で己のものにしていくしかない。
「では師範。行ってまいります」
「おぉ、かすり傷一つにつき屋敷の外周100周だァ」
要は油断するなと言いたかったようだ。
その意図を汲んだように名前は静かに頷き、風柱邸を後にした。
不死川は藤襲山の鬼に名前が負けるとは心配していない。
ただ、何が起こるかはわからない。
もう姿の見えなくなった名前を見送った。
△
名前が出発してからの7日後の早朝、担当地区の巡回を終えて帰宅した不死川に、鎹鴉が縁側に降り立った。
「…来たかァ」
不死川は縁側へと足を向けた。
「オラー!風柱ー!鬼トッテコイー!弟子ノ尻拭イセンカー!」
「は?」
てっきり選別の合否を知らせに来たのかと思っていた不死川は拍子抜けした。
「何だよ尻拭いって、あいつ何かやらかしたのかァ」
「アノバカヤロー!藤襲山ノ鬼切リスギダー!カアアアー!」
「あァ?」
怒りで捲し立てる鴉の言葉を考察するに、どうやら藤襲山に捕らえていた鬼の数を俺の弟子が減らしすぎて、このままでは次の選別が選別にならないということだった。
「…あー、そうだなぁ」
それは困ったと口にはするが、内心では俺の弟子ならそんぐらいでなくちゃなァ、と満更でもないと言った気分であった。思わず口角が上がってしまった。
そんな楽しそうにしている不死川にさらに鴉が喚き散らしたのは言うまでもない。
「師範。只今戻りました」
そこに話の渦中である名前が泥だらけで、しかし怪我もなくしっかりとした足取りで帰宅を告げに来た。
すかさず不死川の腕に止まっていた鴉は名前目掛けて飛び立った。
「わっ」
「オマエー!なぁに呑気ニ帰ッテキテンダー!コラぁ!鬼トッテコイヨー!」
飛来してきた不死川の鴉に名前は頭頂部を突かれた。
それを宥めながら名前は不死川に頭を下げた。
「そういうこともありましたが、無事選別を通過いたしました。これからは鬼殺隊士として鬼を狩ります。師範。これからもよろしくお願いいたします」
傍らには名前に宛てがわられた鎹鴉が大人しくそこにいた。
「おう。…かすり傷一つもしてねぇだろうなァ?」
「はい、外周100周は無しですね」
顔を上げた名前は両腕を広げて怪我がないことをアピールした。
「…イヤ、100周だ。さっきそいつに突かれたからなァ」
「!」
そう言って不死川は名前の頭頂部を人差し指で突いた。
しばしポカンとしている名前の表情が不死川には年相応の少女らしくて何だかおかしかった。ここでも思わず口角が上がった。
「…よくやったァ」
当初の予想はやはり大きく外れ、名前は逃げ出しもせず、鬼殺以外の道も探さず、最終選別の日を迎えた。
型もまだまだ完成度は低いが、一通りは習得した。
あとは今後の鍛錬と実践で己のものにしていくしかない。
「では師範。行ってまいります」
「おぉ、かすり傷一つにつき屋敷の外周100周だァ」
要は油断するなと言いたかったようだ。
その意図を汲んだように名前は静かに頷き、風柱邸を後にした。
不死川は藤襲山の鬼に名前が負けるとは心配していない。
ただ、何が起こるかはわからない。
もう姿の見えなくなった名前を見送った。
△
名前が出発してからの7日後の早朝、担当地区の巡回を終えて帰宅した不死川に、鎹鴉が縁側に降り立った。
「…来たかァ」
不死川は縁側へと足を向けた。
「オラー!風柱ー!鬼トッテコイー!弟子ノ尻拭イセンカー!」
「は?」
てっきり選別の合否を知らせに来たのかと思っていた不死川は拍子抜けした。
「何だよ尻拭いって、あいつ何かやらかしたのかァ」
「アノバカヤロー!藤襲山ノ鬼切リスギダー!カアアアー!」
「あァ?」
怒りで捲し立てる鴉の言葉を考察するに、どうやら藤襲山に捕らえていた鬼の数を俺の弟子が減らしすぎて、このままでは次の選別が選別にならないということだった。
「…あー、そうだなぁ」
それは困ったと口にはするが、内心では俺の弟子ならそんぐらいでなくちゃなァ、と満更でもないと言った気分であった。思わず口角が上がってしまった。
そんな楽しそうにしている不死川にさらに鴉が喚き散らしたのは言うまでもない。
「師範。只今戻りました」
そこに話の渦中である名前が泥だらけで、しかし怪我もなくしっかりとした足取りで帰宅を告げに来た。
すかさず不死川の腕に止まっていた鴉は名前目掛けて飛び立った。
「わっ」
「オマエー!なぁに呑気ニ帰ッテキテンダー!コラぁ!鬼トッテコイヨー!」
飛来してきた不死川の鴉に名前は頭頂部を突かれた。
それを宥めながら名前は不死川に頭を下げた。
「そういうこともありましたが、無事選別を通過いたしました。これからは鬼殺隊士として鬼を狩ります。師範。これからもよろしくお願いいたします」
傍らには名前に宛てがわられた鎹鴉が大人しくそこにいた。
「おう。…かすり傷一つもしてねぇだろうなァ?」
「はい、外周100周は無しですね」
顔を上げた名前は両腕を広げて怪我がないことをアピールした。
「…イヤ、100周だ。さっきそいつに突かれたからなァ」
「!」
そう言って不死川は名前の頭頂部を人差し指で突いた。
しばしポカンとしている名前の表情が不死川には年相応の少女らしくて何だかおかしかった。ここでも思わず口角が上がった。
「…よくやったァ」